エクソンモービル【XOM】と石油業界の動き
エクソンモービルは独占禁止法で解体されたスタンダードオイルにルーツを持つ、現在、世界最大の民間石油会社です。国営石油会社も含むと、石油会社は次のようなランキングになります。
世界石油生産量ランキング
1位 サウジアラムコ(サウジアラビア:国営)
2位 ガスプロム(ロシア:半国営)
3位 イラン国営石油(イラン:国営)
4位 エクソンモービル(アメリカ:民営)
5位 ロスネフチ(ロシア:国営)
6位 ロイヤルダッチシェル(英蘭:民営)
7位 ペトロチャイナ(中国:国営)
8位 ぺメックス(メキシコ:国営)
9位 シェブロン(アメリカ:民営)
サウジアラムコが生産量において桁違いなのが分かります。民間石油会社でトップのエクソンの倍以上の生産量があります。
このうち、エクソンモービルとシェブロン、BP、コノコフィリップスはジョン・ロックフェラー氏らが創業したスタンダードオイルがルーツです。スタンダードオイルは、今からおよそ150年前、1870年に設立されました。
その後、独占禁止法により1911年34社に解体されます。
そのロックフェラー家は2016年に入ってエクソンモービル株を手放しました。100年以上保有していたことになります。石油で財を成したロックフェラー氏は現在も含めて史上最大の富豪と表現されます。また、その一族は今に至るまで政財界で活躍しています。
そのロックフェラー家がエクソンを手放したということで、ちょっとした話題になりました。
その後、世界の石油業界は二度の世界大戦を経て、セブンシスターズと呼ばれる大手7社に集約されます。セブンシスターズは石油市場において大きな価格決定力を持ちました。
セブンシスターズの変遷
- スタンダードオイルニュージャージー(のちにエッソ)
- ロイヤルダッチシェル
- アングロペルシャ石油(のちにBP)
- スタンダードオイルニューヨーク(のちにモービル)
- スタンダードオイルカリフォルニア(のちにシェブロン)
- ガルフオイル(のちにシェブロン、一部BP)
- テキサコ(のちにシェブロン)
このうち、エッソとモービルが1999年に合併してエクソンモービルになりました。
資源ナショナリズムの台頭とともに、1960年に現在も世界最大のカルテルであるOPECが結成されます。中東諸国は石油の各種権益の国有化を進め、価格決定権が事実上セブンシスターズからOPECへ移ることになりました。
OPECの力が示されたのがイスラエルとの紛争である中東危機です。1バレル=3ドルから段階的に12ドルまで上がることになりました。また、これによって引き起こされたのがオイルショックです。
OPEC外の国のシェアが増えその力に陰りが見えるものの、中東諸国の石油による経済的繁栄は今に続いています。一方、独占的な権益を奪われた形となったセブンシスターズは合併を繰り返し、エクソン、ロイヤルダッチシェル、シェブロン、BPの四社になりました。
※画像はエクソンモービルのサイトから
最も大きい規模を誇るエクソンモービルの石油業界での影響力はかつてほどではありません。しかし、確かな技術力と世界200か国を超える国々で事業展開をする多国籍企業として、今も米国株式市場において中心プレーヤーのうちの一社であることに変わりはありません。
エクソンモービル【XOM】の配当とチャート
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2006年 5月 株価 71ドル 配当0.32ドル
2016年 5月 株価 91ドル 配当0.75ドル
2017年 5月 株価 80ドル 配当0.77ドル
連続増配33年は伊達ではありません。この10年のチャートを見るとパッとしませんが、長期で見ると素晴らしい右肩上がりをしています。しかし、このところの原油安で業績は低迷しています。
川上から川下まで業務展開するエクソンモービルは川下分野で原油安のショックを多少和らげています。つまり安い原油をもとに、付加価値ある商品を作るという構図です。このスキームは原油安の時にはプラスに作用します。
また10年以上に及ぶ自社株買いでおよそ4割も発行株数を減らしてきています。つまり、一株当たりの価値が向上し続けてきたということです。株主重視の姿勢が有言実行されています。
エクソンモービル【XOM】の基本データ
ティッカー:XOM
本社:アメリカ
予想PER:34倍
PBR:2.2
ROE:9.3%
ROA:4.8
EPS:3.1
配当:3ドル
上場:ニューヨーク証券取引所(NYSE)に上場
エクソンモービル【XOM】の配当と配当性向
エクソンモービルの配当と配当性向です。配当は堅持しており、増配も維持です。
原油安のころは50%を超えない理想的な配当性向でした。それがたちまち140%まで上がっています。
エクソンモービル【XOM】のBPSとEPS
エクソンモービルの1株当たり資産と1株あたり利益です。
BPSはこの10年で2倍になっており、順調に増加してきました。EPSはさすがに下がっています。特に2015年で前年度より半減、2016年でさらに半減となっています。これだけの急激な落ち込みはエクソンだけではありません。
石油関連各社はどこも似たような苦しい業績を強いられています。ちなみに、この10年間の自社株買いはおよそ25%に達しており、非常に自社株買いに熱心な企業と言えます。
エクソンモービル【XOM】の売り上げと利益
エクソンモービル【XOM】の売り上げと利益です。見事にすべての数字が縮小しています。この業績ではいくら連続増配でも買い増しを躊躇するレベルです。ただ、逆張り投資家というのはこういう時に本領を発揮するのかもしれませんね。
売り上げはピーク時の半額以下、営業利益・純利益いずれも激減しています。営業利益に至っては9割減を記録しています。当然営業利益率も下がっており、かつての優良企業イメージはこの3年でいうならば非常に低下していると言ってよいでしょう。
それでもこの業績ほどに株価が下がらないのは今までの実績、信頼、そして配当が堅持されているからです。
エクソンモービル【XOM】のキャッシュフロー
エクソンモービル【XOM】のキャッシュフローです。好調時には投資CFを増やして積極的に石油の権利を取りに行っていました。その路線に急激にストップがかかったのが2014年です。
大急ぎで投資CFを縮小させています。辛うじてフリーCFがマイナスに転じないようにしていますが、この原油安傾向が続くようならば、厳しい決算は逃れられないでしょう。ただ、原油安も2017年に入ってからは比較的落ち着いてきています。
80ドル割れの水準に割高感はありませんが、予想される原油市況のゆるやかな上昇が事実かどうかを見極めたいところです。
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世界的な需要が何らかの要因によってひっ迫しない限り、なかなか以前のような原油高水準は期待できないかもしれません。
国別の石油生産量ランキングです。
ロイヤルダッチシェルはエクソン以上に高配当です。ただし、自社株買いにはさほど熱心ではありません。