- はじめに
- そもそもライドシェアサービスとは何か?
- ライドシェア利用の流れ
- 完全自動運転が実現するということは何を意味するのか?
- スタンフォード大学の講師と投資家とが共同でおこなった研究内容について
- 日本ではどうか?
- 駐車スペース確保の必要が無くなると、都市景観が激変する
- 個人で馬を所有している人はほとんど存在しない
- 電気自動車(EV)事業は電機メーカーにとって親和性が高い
- テスラの新型電気自動車Model3は世界的なEV普及の足掛かりになる
- まとめ
はじめに
最初に、800年前の我々の諸先輩方の警句を掲載します。
~平家物語冒頭~
祇園精舎の鐘の声 諸行無常の響きあり
沙羅双樹の花の色 盛者必衰の理をあらわす
おごれる人も久しからず ただ春の夜の夢のごとし
たけき者もついには滅びぬ 偏に風の前の塵に同じ
ピラミッドの頂点に君臨し、細かな部品まで系列化し、乾いたタオルを絞るように下請け企業から利益を吸い上げ、若手従業員や非正規雇用労働者を低賃金でこき使い、一大産業を作り上げてきた企業の衰退を目の当たりにしたら、800年前の我々の諸先輩方は何と言われるでしょうか?
その点について述べる前に、現代の都市交通や自動車産業おいていったい何が起こっているかについて概観します。
そもそもライドシェアサービスとは何か?
ライドシェアサービスとはいわゆるシェアリングエコノミーの一種です。
シェアリングエコノミーとは、IT技術を駆使し、人々の間で物の共有を仲介するビジネスです。
このうち、自動車を用いて移動手段を共有するサービスが、ライドシェアサービスです。
ライドシェアサービスを始めたのが、米国のウーバー・テクノロジーズ社(Uber Technologies Inc.)です。
Uberは、2009年にサンフランシスコ(米国)で設立され、2010年に事業を開始し、現在世界の632都市で事業を展開しています。
タクシーに比べ圧倒的な低価格を実現し、2014年には、同方向に向かう者同士が相乗りすることでさらに安価な移動を可能にしました。
例えば、テスラ本社からグーグルプレックス(グーグル本社)までの距離は約16.6マイル(約26.6km)ですが、Uberの料金見積もりによると、料金は18USドル(現在の為替レートで約2000円)~でした。
タクシーに26kmも乗ったら、2000円~で済まされないことは明らかでしょう。
Uberの競合他社としては、2012年に同じくサンフランシスコ(米国)でライドシェアサービスを開始した、リフト社(Lyft Inc.)があります。
このような流れに対し、最初のあおりを受けたのがタクシー業界です。
2016年1月には、サンフランシスコ最大のタクシー会社であるイエローキャブ社(Yellow Cab Cooperative Inc.)が、連邦破産法(Title 11 of the U.S. Code - Bankruptcy)第11章に基づく会社更生手続の適用を申請しました。
ライドシェア利用の流れ
以上のように、ライドシェアは、従来のタクシーとは全く異なるサービスです。
では、顧客がライドシェアを利用する際、どのようなプロセスを経るのか見ていきましょう。
ライドシェアサービスの流れは次の通りです。
- スマホにアプリをインストールする
- アプリに利用者登録する
- 配車希望時にアプリからシステムにアクセスする
- アプリの地図上に示された車の中から利用する車を選ぶ
- 乗車場所の指定、行き先の入力を行い、配車を依頼する
- 目安となる配車時間が示され、車が迎えに来る
- 目的地に着いたら運賃をクレジットカード決済
現在は、完全自動運転が実現していないため、運転手付きで迎えに来ます。
しかし、近い将来、完全自動運転が実現すれば、無人の車が乗車場所まで迎えに来るでしょう。
完全自動運転のライドシェアが実現すれば、人件費を必要としないため、さらなる低価格化が期待できます。
完全自動運転が実現するということは何を意味するのか?
皆さんは、完全自動運転が実現するというと、眠っていても目的地まで車が連れて行ってくれるので、随分と楽になるなあと思っていないでしょうか。
確かに、その一面もあります。
特に、人手不足が叫ばれる、運送業界においては、完全自動運転は革命となるでしょう。
しかし、完全自動運転にはもう一つの側面があります。
それは、自家用車を必要とする理由が消滅するということです。
自動車の愛好家とか、運転を趣味とするごく一部の人は別ですが、車を単なる移動手段の一つと考えている人にとっては、完全自動運転が実現すれば、わざわざ車を所有する意味がありません。
どこかに行きたいときに、スマホをちょこちょこっといじれば、現在地に無人の車がやってきて、所要の目的地に向かい、後は、その車を乗り捨てて終わりです。
また、大都市圏においては、駐車場の問題から解放されることにも繋がります。
何もこれは夢物語でもありません。
近い将来そういう社会が実現することが予測されているのです。
スタンフォード大学の講師と投資家とが共同でおこなった研究内容について
2017年5月、スタンフォード大学のトニー・セバ(Tony Seba)氏と、投資家のジェームズ・アービブ(James Arbib)氏は、個人の車の所有に関するある研究報告書をまとめました。
この報告書には、驚くべき予測結果が記載されていました。
その概要とは次の通りです。
- 2030年までに、アメリカのマイカー所有者は80%減少する。
- 全米を走る乗用車の台数は、2億4700万台(2020年)から、4400万台(2030年)に減る。
- 2021年までに、電気自動車のライドシェアサービスを利用した場合の1マイル(約1.6km)あたりの費用は、新車を購入した場合の4分の1~10分の1になる。
- 各世帯の年間コストも、マイカーを購入・維持するのに比べ約5600ドル(約63万円)安くなる。
参照元:Business Insider Japan 2017年5月17日記事
アメリカというと言わずと知れた自動車大国です。
中国に次ぎ世界第2位の、自動車市場を誇っています。
そのアメリカで、現在マイカーを所有する人の80%が、2030年までに、マイカーを所有しなくなるというのは、実に衝撃的な数字です。
2030年というと、今からたった13年後。
しかも、この流れは2020年から急速に広がり、2020年からの10年間で、米国だけでも、実に2億台以上の乗用車が必要なくなると予測しています。
また、今から4年後の2021年までに、新車を購入するより、EVライドシェアサービスを利用する方が、日本円にして年間約63万円すなわち月5万円以上家計が助かると報告しています。
この流れは、いずれ欧州や中国にも波及するでしょう。
日本ではどうか?
しかし、日本においては、官僚が何だかんだいちゃもんを付け、必死に抵抗してくるでしょう。
筆者は、今後急速に進む高齢化の流れを鑑みれば、完全自動運転を基本とするライドシェアサービスは日本でも有効に機能すると思います。
特に、交通弱者である地方のお年寄りにとっては、このサービスは非常に便利です。アプリの操作方法を簡単にすれば、お年寄りだってスマホぐらいいじれると思います。
さらに、アクセルとブレーキを踏み間違えたことになっている高齢ドライバーの問題も一気に解消に向かいますね。
日経新聞は、土地の高騰や原材料高を背景に、駐車場代金など自動車維持コストが上昇しており、これがカーシェアなど車の保有を前提としないサービスの普及が促進されそうだと報じています。
また、ソフトバンクの孫正義会長は、ウーバー・テクノロジーズ社への出資を検討していると明らかにしています。
駐車スペース確保の必要が無くなると、都市景観が激変する
ところで、アメリカで販売された自動車は、95%以上の時間が駐車に割かれています。
ライドシェアは、駐車の必要が無いため、都市の景観を激変させる可能性を秘めています。
駐車スペースに割かれていた土地を、公園や商業施設に充てることができ、土地の有効な利用にもつながります。
まさに、未来の都市計画はこのようなものになるでしょう。
個人で馬を所有している人はほとんど存在しない
かつては、武士が移動手段として馬を所有していました。
しかし、現代では、乗馬を趣味とする人ですら通常は個人で馬を所有しません。
せいぜい、個人で馬を所有しているのは、競走馬を所有している北島三郎など一部の人たちくらいでしょう。
自動車も馬と同じく、個人が所有するものとして無用の長物となる日が迫ってきているのです。
電気自動車(EV)事業は電機メーカーにとって親和性が高い
電気自動車は、内燃機関を搭載していないため、部品点数もガソリン車に比べ圧倒的に少なく、構造も単純です。
言わば、動く電機製品と言っても過言ではないでしょう。
したがって、電機メーカーとは親和性が高いのです。
パナソニックは、テレビ・携帯電話などコンシューマー向けB to C事業から、電気自動車用電池や、自動運転などのB to B事業へと大きな方針転換をしました。
加えて、自動車メーカーで米国最大の時価総額を誇る、テスラと協業を行っています。
パナソニックは、現在、太陽光発電事業についてもテスラと協業を行い、今年の初めには、自動運転に関しても同社と提携拡大を検討するとの報道がなされました。
テレビや携帯電話に関しては、薄利多売のため、韓国・台湾・中国といったアジア新興国に適うべくもありません。
しかし、EV用2次電池や太陽電池などについては、日本はまだアドバンテージがあります。
これらを、成長産業としてどんどん育成すべきでしょう。
水を電気分解して水素を製造している場合ではないのです。
テスラの新型電気自動車Model3は世界的なEV普及の足掛かりになる
テスラは、日本円にして約390万円の大衆向け電気自動車Model3の製造を急ピッチで行っています。
テスラでは、発売初日からModel3の予約が殺到し、すでに35万台以上もの予約を受け付けています。
同社CEOのイーロン・マスクは、Model3を購入した最初の顧客30人に対し、7月28日に顧客に車のキーを手渡しし納車を行うと自身の公式ツイッターで表明しています。
日本とシリコンバレーとの時差は16時間。
イーロン・マスクは、最初の顧客にModel3のキーを手渡ししたでしょうか?
参照元:イーロン・マスク 公式ツイッター
米国では、優遇税制控除を利用した場合、27,500ドル(現在の為替レートで約305万円)と、さらに安くModel3が購入できるそうです。
これを皮切りに、今後ますますEVシフトが加速するものと思われます。
まとめ
2016年3月31日、テスラのイーロン・マスクCEOは、新型電気自動車Model3の発表イベントで、これまでの電気自動車開発の歴史を振り返り次のように述べています。
私たちは非常に小さく、資金もない会社で、世界を変える方法を見出さなくてはなりませんでした。その唯一の方法が、まずは小規模で、少量生産のクルマから始めることでした。
参照元:Teslaホームページ
2017年4月10日、米テスラの時価総額が、米ゼネラル・モーターズ(GM)を超え、米自動車企業で首位に立ちました。
2003年に設立し、わずか14年で、ここまで企業価値を上げたことは本当に凄いことだと思います。
一方、テスラの販売台数はGMの100分の1以下です。
つまり、会社の規模としてはGMの100分の1程度かもしれないけれど、時価総額についてはGMと同じくらいかそれ以上。
これは、一体何を意味しているのでしょうか?
これは、投資家がその成長性に期待を寄せているということです。
逆に言うと、図体がでかいだけでは、投資家は期待を寄せないということです。
例年1月になると、マスコミ等で、前年の車の世界販売台数が報道されます。
毎年のように、〇〇の販売台数が首位だったとか、あるいは、首位から陥落したとか報道されますよね。
あれのことです。
しかし、いくら数で天下一になっても、無駄なものばかり造っていては全く意味がないと800年前の人も言うでしょう。