昨日たつき監督からこの発言が出て、ネット上は震撼しております。
で、一夜明けてもこの件について訂正等は出ておらず、本気でたつき監督のアカウントハックがあったのではないか、という疑念については残念ながら払拭された気配が濃厚となっています。
わたしも昨日こんな記事を書きました。
「カドカワさん方面よりのお達し」で、たつき監督が『けものフレンズ』のアニメから外された件。
https://www.noahpeah.com/blog/irodori7/
カドカワの株価が若干下落
それで、昨日にかけてはPTSという夜間でも株式取引ができる時間外取引の仕組みで、株価が比較的大きく下落していました。
そこで、「たつき監督ショックか!?」という流れもあり、実際に朝方から株価は下落。
一時1326円と、前日の終値1,371円から3.3%ほど下落するという動きがありました。
<東証>カドカワが軟調 人気アニメの監督降板、悪影響を懸念
https://www.nikkei.com/article/DGXLASFL26HTI_W7A920C1000000/
上記の記事を受けてネットの反応としては、「それ見たことか」という反応も一部では見受けられたのですが、実際のところ「そんなに下がってないかなあ」というのが株式市場に参加している投資家の一般的な反応だったかなと思います。
前日のダウ平均株価が下落していた影響で、日経平均株価も若干下落していたことを考えると、元々比較的値動きの大きい株としては「まあ、全体の下落に少し色がついたぐらいかな」ということで収まってしまいました。
こちらは実際の株価の推移です。ちょうど上記の日経の記事が出たあたりで下落のピークは終わっていて、その後は若干切り返し、終わってみれば19円安、1.39%安の1,352円という程度で、繰り返しになりますがこれだけネットで話題になっている割には、あまり下落しなかったよね、という話になっています。
では、ここまでネット民のヘイトを集めていながら、なぜカドカワの株が下げなかったのか。
そもそもカドカワの収益構造ってどうなってるんだっけ
この問題を考えるために、カドカワの決算をもう一度見てみましょう。
2014年5月に発表、10月に経営統合されて発足した持ち株会社カドカワですが、経営統合後の売上高の動きがこちら。
(単位:百万円)
2015年3月期は経営統合直後のため、計算期間が6ヶ月となっているため低いのですが、直近で見ても売上高はかろうじて増収を保っている、というぐらいの水準にあり、有り体に言ってしまえばあまり成長が見られていません。
じゃあ一方で本業のもうけを表す営業利益はどうか、と申しますとこんな感じです。
(単位:百万円)
繰り返しになりますが2015年3月期は経営統合後6ヶ月間かつ合併にかかるあれやこれやがあったということで低いです。
見ていただきたいのはそれ以降で、営業利益は2017年3月期に減益となっています。
理由については、決算資料によれば、以下のような理由で説明されています。
・有料の「プレミアム会員」が2016年9月末の256万人をピークに、2017年3月末には243万人に13万人減少
・「ニコニコ超会議2016」のコンテンツ制作費が前年を上回った
・ニコニコリニューアル費用がかさんだ
約半年でプレミアム会員が13万人減少しており、これを「ニコニコチャンネル」の有料会員が下支えしているという状況にあります。また、そういった状況にも関わらずニコニコ超会議の費用は膨れ上がっている状況にある、という形になっています。なお、2017年3月末には243万人だったニコニコのプレミアム会員は、6月末には236万人までさらに7万人減少しており、概ね「3ヶ月で6~7万人の減少」というペースに歯止めがかかっていない状況です。
さらに問題なのは、足元の決算で、2017年4~6月期の決算は営業利益7.9億円(前年同期は27.3億円)と減益。
最終損益に関しては既に2,300万円の赤字に転落しています(前期は10億円の黒字)。
四半期ベースで営業利益を見てもだいぶ落ち込んできています。
(単位:百万円)
足元の決算の最終赤字転落の要因については、10月に予定されているニコニコのリニューアルとされています。画質の粗さなどの問題点が解消されるとのことで、これでなんとかプレミアム会員の減少を防ごうということのようですが、そもそも、だいぶプレミアム会員が減少してきてYoutubeに取られている今、なかなかその流れを変えるのは容易ではないと思われますし、そうしたサーバーコスト等の増加は、結局利益を圧迫することになるので、上記でみたような減益の流れ自体を大きく変えることではないでしょう。
『けものフレンズ』からたつき監督が外れた影響
そうした中で起こった今回のたつき監督外し事件ですが、『けものフレンズ』からたつき監督が外れることで起こりうるかもしれないカドカワへの業績への影響は以下の2点かと思います。
1.『けものフレンズ』2期がまったく売れない
2.今後、怒ったネットユーザーがプレミアム会員を解約、不買運動へとつながる
このうち、1に関してですが、仮に『けものフレンズ』2期が売れなかったとしても、そもそもカドカワの業績を左右するドライバーとして『けものフレンズ』は大きくない、言い換えればそもそもドワンゴの業績に『けものフレンズ』が与えている影響が小さいがゆえに、けものフレンズが売れなかったところでそこまで業績に影響を与えず、これだけではカドカワの株価を下げるのに十分ではありません。
先ほどまで見てきたように、ニコニコの会員数減少が食い止められるかどうか、というところが市場の見ている大きなポイントの一つですから、この『けものフレンズ』問題はあまりまだ大きなうねりになる、と捉えられていない感じです。
おそらく今回の事件でややプレミアム会員が減少したことは間違いないと思いますが、『けものフレンズ』のファンでニコニコプレミアムも登録しており、今回の騒動で解約を決めたという人が数万人単位で出るかと言われると少し怪しいところがあります。
そもそもニコニコプレミアムに登録していても、『けものフレンズ』は1話以外有料だったわけですし、今プレミアム会員になっている層は別に『けものフレンズ』を見るためにプレミアム会員になっているわけではないでしょう。
かつ、ネット上で今のところ(多少は出ているとはいっても)カドカワ不買運動が大きなうねりとはなっていないことから、影響は「今のところ」限定的というのが正直なところかなと思います。
ただし、今後のカドカワの対応や、たつき監督の発言次第ではさらに影響が拡大し、実際の不買運動につながっていく可能性はあります。
とはいえ、カドカワのコンテンツは『君の名は。』『禁書目録』を始め今期も収益になりそうなコンテンツが結構色々あり、それらを全部観ない・買わない、というのは結構起こり得ないことで、不買運動まではいかないという風に市場は読んでいるのかなあと思います。
すでにカドカワの株価は下落しきっている、というのも株価が下落しきらなかった原因の一つでしょう。
ここ3ヶ月の株価の動きを見ると、ここ最近こそ持ち直してきてはいるものの、あまり活発にイケイケという感じの値動きではないというのが正直な動きです。それは先ほど見た業績推移に起因するものだと思われます。
いずれにしても、今後『けものフレンズ』はどのようになってしまうのか、また、カドカワが仮に経営判断を覆し、たつき監督を監督に復帰させた場合株価はどうなるのか、ということはまた注目したいポイントです。
(9/27 0:30追記)
そんなタイミングで、このニュースが出てきました。
現在ページがおもすぎてみられません……