50歳“踊ってみた”
こんにちは、NHKアナウンサーの武田真一です。ことし4月からクローズアップ現代+のキャスターを務めて、はや半年。それまでのニュースの現場では経験しなかった新しいことに次々とチャレンジさせていただいています。が、今回、さらに未知の世界に足を踏み入れることになりました。私、つい先日、50歳になったのですが、ふだん運動をしているわけでもないのに、人生で初めてヒップホップダンスに挑戦します!
実は私、青春時代がバブル世代、学生の時にはディスコに通いつめていた過去があり、踊るのは嫌いじゃないんです。今、そんなダンスが″オトナ世代″に流行し始めているといいます。
特に若者カルチャーの印象が強いヒップホップダンスを踊る人が増えてきているということで、11月放送予定のクロ現+では、この流行のヒミツを徹底分析します。調べてみると、皆さん、意外にも50代から始めた、あるいは還暦を迎えてから始めたという人たちが多いようです。
実際、私のような世代から始めても、ヒップホップダンスをかっこよく踊ることは可能か?、ということで、紅白歌合戦の出場曲ともなったEXILEの代表曲「Choo Choo TRAIN」に挑戦!、なんと、EXILEのお二人からじきじきに指導をしてもらうことができました。私は放送日までに「Choo Choo TRAIN」をかっこよく踊れるようになるでしょうか?
20代の敏しょう性が!
今回の番組の企画は、ある研究成果がきっかけでした。ことし6月、岐阜大学の春日晃章教授がスポーツ科学の学術誌に「ヒップホップダンスを続けている高齢者が、20代レベルの敏しょう性を示した」と発表したのです。
高齢期になると、自分の意思と体の反応にズレが生じるといい、それが車の運転などに支障をもたらすとされています。ヒップホップという速いテンポの音楽に身体の動きを合わせることで、神経の働きに良い影響を及ぼしてる可能性があり、事故防止にも有効ではないかというのです。
この「ヒップホップダンスの力」について、春日教授が本格的に検証を進めるきっかけとなった出来事があります。
2014年10月、岐阜県多治見市の住民の一部を対象に、体力測定をした催しで、春日教授は成績が異常に高い女性高齢者がいることに気付きました。
合図があってから跳躍するまでの時間を測定する「全身反応時間」が、若者に相当する0・3秒台。実は彼女たち、平均年齢は69歳のヒップホップのダンスユニット『TGK48』(多治見・元気・高齢者48)のメンバーだったのです。
「あまりのレベルの高さに驚き、科学のメスを入れてみようと思った」という春日教授。調査を続けるうちに、メンバーの身体能力の高さに驚かされただけでなく、ダンスの練習風景でみせるシニアの皆さんの笑顔に、健康維持だけでは収まらないダンスの力を思い知らされたと言います。
シニアダンサーってかっこいい!
取材を続ける中で、私が最も驚いたのは、シニアダンサーの方々の「かっこよさ」です。
福井県に暮らす天野義廣さん(68歳)は、現在7人の孫を持つ正真正銘のお爺ちゃん、今はご夫婦で2人暮らしです。現役時代は高校の教師をしていた天野さん。60歳になってから始めたのが、ヒップホップの音楽に乗せてアクロバティックに踊る「ブレイクダンス」です。 実は、若い頃から、プロレスでのタイガーマスクの空中殺法や、映画でのジャッキー・チェンの機敏な動きなど、ヒーローたちの軽やかな身のこなしに長い間憧れを抱いていました。しかし、教師という仕事柄、「生徒の手本とならないといけない」という思いが強く、ヒーローに憧れるなんて″年がいもない″と思い続けていました。
そして還暦を迎え、仕事も一段落したところで、周りの目を気にせずに思いっきり好きなことをやってみたいと思うようになった天野さんは、勇気を出してダンス教室の扉を叩き、自分の憧れの動きに一番近いと感じた「ブレイクダンス」を習い始めました。
「ほかの人のダンスの格好良さなんて気にならない。自分が格好良くないと意味がない!」
ダンサー天野さんの信念です。
オトナのダンスフェスを!
一方、東京在住のROCCOさん(62歳・女性)は50代のときにヒップホップダンスと出会いました。その場所はスポーツクラブ。エアロビクスなどのエクササイズに打ち込んでいたROCCOさんにとって、型を覚えるだけでなく、自由に自己表現できるヒップホップダンスは快感だったと言います。
ROCCOさんはファッションもヒップホップ一色! 大きめのサイズの洋服を若者顔負けのセンスで着こなします。「普通なら周りから″イタい″と思われるかもしれないけど、ヒップホップでは″自分スタイル″が格好良ければ認められる」
そう話すROCCOさんは今、同年代のダンス仲間をインターネット上で募集中です。
「踊りたいけど踊れる場がない…」「興味があるけど一歩踏み出せない」そんな同年代を集めて、オトナ世代のダンスフェスを催すのが現在の夢です。
「何歳になっても新しいことは始められるし、格好良くいられる」
それを身をもって実践しようと、ROCCOさんはダンスに打ち込んでいます。
勇気をもらった
私も50歳になって最近考えるのは、今後の生き方です。ご紹介した人以外にも、子育てを終えてからダンスを始め、60代の今、海外アーティストから称賛される人まで現れています。それを知り、私も勇気が出ました。かっこいいシニアになりたいですよね。
「人生100年」と言われる時代。自分を支えてくれるキーワードは、″未知なるものへの挑戦″そして、ヒップホップの精神である、まさに″自分スタイル″のようです。
クローズアップ現代+では、シニアの皆さんのすてきなダンス映像を募集しています!
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