すべてが裏目の“ブーメラン解散” 「安室ロス」にかき消された安倍首相の思惑
臨時国会の冒頭解散という安倍政権の“禁じ手”が完全に裏目になりつつある。小池新党や野党の態勢が整わぬ隙を突き、森友・加計疑惑もなかったことにと思いきや、北朝鮮問題の急展開などで想定外の状況に……。
「北朝鮮に対し、必要なのは対話ではない。圧力だ」
安倍首相は日本時間9月21日未明、米ニューヨークでの国連総会の演説でこう語気を強め、対北朝鮮の圧力強化を世界に訴えた。
「安倍さんは28日に開催される臨時国会の冒頭で解散するので、国会の所信表明はやらない予定。だから、国連演説はその代わりと思い、熱弁した。テレビのニュースでは当然、トップで扱われると思っていたんだけど……」(官邸関係者)
安倍官邸の想定外は、日本中に衝撃が走った歌手の安室奈美恵引退のニュースのインパクトだ。ワイドショーだけではなく、報道番組のトップニュースとして扱われた。そのすさまじい報道ぶりを見た細田派国会議員はこう皮肉った。
「安室さんの引退と安倍さんの総裁任期切れは奇しくも全く同時期です。安室さんにはかなわないですよ」
安倍官邸が描いていた臨時国会の冒頭解散のシナリオは、安室引退報道から少しずつ狂っていく。
「トランプ米大統領と電話会談を繰り返していた安倍首相は国連総会前に『開戦準備に入りたいが、まだ数カ月かかる』と伝えられていました。逆算すると、年末ぐらいまでは米朝有事は起こらないと官邸はタカをくくっていた。ところが、国連演説でトランプ大統領が『北朝鮮が非核化に応じない場合、完全に破壊する』と言い放てば、金正恩も『必ず火で罰する』と応酬。北朝鮮外相がさらに『水爆の実験を太平洋上でやるかも』と挑発し、緊迫が高まってしまった。こんな状態で解散総選挙をやって大丈夫かと空気が変わりつつある」(自民党幹部)
政治ジャーナリストの角谷浩一氏も厳しい見方だ。
「安倍さんの国連演説はトランプさんと歩調を合わせた内容で『戦争をしたくてしょうがない』ようにも聞こえた。アメリカの情報のみを鵜呑みにし、解散を決めたのでしょうが、北朝鮮の動きは把握できていない。本当に数カ月、有事はないという担保ができているのか大いに疑問。国会で北朝鮮有事の対応をしっかりと議論することが、解散よりも先でしょう」
自民党内も冒頭解散断行にザワつき始めている。