3月22日、ベルギーの首都ブリュッセルでテロが発生し、32人が死亡、340人が負傷。その後、IS(イスラム国)は犯行声明を出した。また、その翌日には、ISに参加しようとしたとされる日本人男性がトルコで拘束されるという事件が起こった。
そんな緊迫した情勢のなか、評論家の真鍋厚著『テロリスト・ワールド』(現代書館)の発刊を記念し、『「テロ」は私たちの何を変えたか? ~デモとヘイトとソーシャルメディアと~』と題したトークイベントが3月25日に高円寺パンディットで開かれた。
ゲストとして招かれたのは、メディア・アクティビストでジャーナリストの津田大介氏。
津田大介氏(左)と眞鍋厚氏
2月上旬に発売されたばかりの本書は、巷にあふれる様々な映画・小説・マンガを例として取り上げながら、「テロリストとは誰のことか」「テロという言葉にはどういう意味が込められているのか」等々について分かりやすく解説した画期的なもの。ISなどの現代のテロリズムだけではなく、シーシェパードに代表される「エコ(環境保護)テロリズム」の歴史や、「アノニマス集団」の背景、日本の歴史に特有の暗殺テロなども取り上げている。
真鍋氏は、もともと映画批評、映像研究が専門分野。’14年夏以降に話題になった欧米人ジャーナリストなどの斬首動画に衝撃を受け、ISに関する海外研究者の訳書などを読むうちに「そもそもテロとは何か」という問いに引き寄せられていったという。
津田氏は、同書で「一番面白かった」のは、日本と「テロ」との関係に迫っているところだとし、「この本が成功しているのは、忠臣蔵などに代表的な日本のカルチャーを、評論としてしっかりまとめている点。フィクションと現実に起きていることを結びつけるのは大変な作業なのに、強引と思われないようにちゃんと工夫されている」などと述べた。
さらに、「この本でもっとも重要な指摘だなと思ったのは、『われわれ日本人は、傾向として「社会の不条理」より「社会の悪」を信じたがるのだ』という部分」と発言。「確かにわれわれ日本人は、社会の不条理よりもそこに絶対的な悪があって、その悪を取り除けばよくなる、がんなんて切除すればいいというふうに信じたがる。しかし、これを妄想にすぎないと真鍋さんは本の中でバッサリ切っている」と評した。
それを受けて真鍋氏は、「日本には『楽観主義的な暴力主義』ともいえる傾向があって、昭和初期の血盟団事件や五・一五事件でも○○をやっつければすべて良くなると信じていたふしがある」などと付け加えた。