昭和考古学とブログエッセイの旅へ

昭和の遺物を訪ねて考察する、『昭和考古学』の世界へようこそ

読めたらあなたも立派な大阪人!-大阪の難読地名10選

まけもけさんのブログのコメントを、この場をお借りして、敢えて泉州弁でコメントします。

 

だんじりでうぉーの地域で生まれ育った泉州人やけど、ワシ吹田も交野も読めるで~。

 

泉州人の第一人称は、男も女もワシです。かわいらしい小学生の女の子が『ワシもぅえらいわ』などと言っている地域です。いちおうお上品に翻訳すると

「わたくし、もう疲れましたわ」

ですが、リアルで聞くと大阪市内の人もビビります。

 

www.gw2.biz

 

まけもけさんは難読地名の説明が面倒くさいとのことなので、ほなそのネタありがたく頂戴しますと代わりに私がコテコテに説明します。

 

大阪府の北部に、「吹田」という場所があります。

 

吹田は「すいた」と読みます。

大阪大学関西大学などの有名大学のキャンパスもあり、大阪万博が行われた会場でもあります。

大阪なのに大阪らしいコテコテさがさほどなく、ニュータウンと学園都市が合体したようなオシャンティーな地域でもあります。つまり、大阪といえば大阪なんだけどちょっと大阪っぽくないよねオーラをまとう大阪。

あれこれ事情があって外来者の割合も多く、吹田駅も各駅しか止まらないせいか、空いています。吹田で電車が空いた・・・いや、ちょっと言ってみたかっただけです。

大阪に引っ越すことになったけど、大阪弁でまくしたてられるのは抵抗がある、あの大阪のコテコテな空気にいきなり染まる自信がない・・・という人は、とりあえず吹田に住んでおくアルね。

 

まけもけさんは、吹田を大阪に住んでいる人の78%は読めると考察しておりますが、私は87%だと思います。

まあどっちでもいいのですが、「すいた」なんて大阪人からすると難読でも何でもない。小学生の漢字テストにすら出てこない。しかし、大阪を一歩離れると案外読めない人が多いようです。

試しに「吹田 難読地名」とググってみたら、出るは出るは吹田の閉店セール。

 

吹田並に、んなアホな的に正解率が低いのが、京都府と県境を接する枚方です。

大阪人にとっては、枚方もお馴染みすぎてどこがどない難読地名やねんと反発が予想されますが、これが実は案外読めないのです。

テレビであるクイズ番組を見ていた時のこと。

漢字の読み方クイズで「枚方」が出てきたのですが、

「なんやねんこれ、幼稚園児でもわかるやんけ!」

鼻くそをほじくりながら呆れていると、次に信じられない光景が。

回答者5人中、3人の答えが自信満々で、

 

「まいかた」

「まいほう」

 

マジかよ!?と唖然としている私を察知したのか、残り一人の某有名俳優が、

 

『ひらかた』だよ・・・」

 

と、呆れて答えていました。当然、「ひらかた」で正解です。

 

私も某俳優と同じく呆れ返っていたのですが、よーーーーく考えると、

 

「あ、『まいかた』って読み方もできるよな!」

 

『まいかた』で何か大切なものを勉強させていただいた気がしました。

 

 

大阪は、難読地名の宝庫です。

「すいた」「まいかた」・・・やなかった、「ひらかた」くらいなら、ジモピーにとっては難読地名の風下にも置けない。ほな風上には置けるんか?知らんわい。

我が故郷の泉州地区は、民度が低いだの大阪人の評判落としてるだの、車の運転が荒すぎだの、何かとボロカスに言われています。まあ、地元民としてまことに遺憾ながら、客観的に見るとたいがい当たってます。

しかし、泉州は難読地名の宝庫でもあります。その理由は、古代からの地名が今もかなりの数が残っているから。そこらへんの、なんかよーわからんけど読みにくい地名やな~というところが、サラッと『万葉集』などの奈良時代の文献に出てきたりします。

淡路島も古代からの地名、つまり難読地名があちらこちらにあるのですが、郷土愛が強く変化を嫌う淡路島の住民の保守的な姿勢が、逆に古代からの地名を残すことになった結果となりました。土着大阪人も、故郷愛が強いが故に保守的なところがあるっちゃありますからね。

 

今回は、そんな石を投げたら難読地名に当たる大阪から、読んでビックリ難読地名のランキングを。なお、このランキングは私の500%主観につき、クレームは一切受け付けません。

 

第10位 放出(大阪市鶴見区

大阪の難読地名のご挨拶代わりに必ず出てくるのが、この「放出」。

ふつうに読んだら「ほうしゅつ」です。何を放出するねん。

読み方自体の難易度はかなり高め、大阪弁で言えば「けったい」な読みですが、これはクイズなどで出される定番なので、知名度はけっこう高いと思います。

答えは「はなてん」

 

 

関西人で知らない者はいないだろう、こんなCMがあります。

www.youtube.com

中古車のハナテンのCMで、「はなてん」こと放出の関西での知名度バツグン。放出を「はなてん」と読めなくても、ハナテンのCMを見たことがない奴は関西人にあらずというほど有名です。

しかしこのCM、昔から何気にエロかったけど、今見てもちょっと興奮してしもたくらいエロいな。

 

第9位 遠里小野大阪市住吉区 堺市堺区)

「小野」はそのままなのですが、「遠里」は「とおさと」ではありません。

正解は「おりおの」。この程度なら、大阪の難読地名の中ではウォーミングアップにもならないほど楽勝の部類です。

ところで、「遠里小野」という地名は2つ存在します。

 

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実は大阪市堺市で全く同じ「遠里小野」が存在し、Google Mapで検索しようとすると、Google様もどっちやねんと問うてきます。

私は試したことも試す勇気もないですが、JR阪和線杉本町駅あたりでタクシーを拾い、

「『遠里小野』まで」

と言うと、運ちゃんは

「どっちの『遠里小野』???」

とテンパってしまうかもしれません。

それにしても、何故遠里小野が2つあるのか。

この答えは簡単。遠里小野はかつて陸続きの一つの集落だったのですが、大和川の付け替えで分断されてしまったのです。大阪市堺市を分ける大和川は、江戸時代中期に掘られた人口の川だったりします。

 

第8位 十三 (大阪市淀川区

「じゅうさん」ちゃいまっせ~。じゃあ「じゅうぞう?」それは映画監督や!

答えは「じゅうそう」です。十三はうんこ色のお上品な電車でおなじみ、「お阪急」こと阪急電車の3路線が合流する交通の要衝であり、男には顔が緩んでしまうちょっとムフフな所でもあります。

ちなみに、JRと南海が乗り入れる関空アクセスの新線、「なにわ筋線」に、阪急も殴り込むことになりそうで、梅田から十三まで線路の幅を合わせた新線を作る計画になっています(JR&南海と阪急は、線路の幅が違うのでそのままでは乗り入れられない)。もし本当に開通すれば、十三は新しい空港アクセス地として注目を浴びそうです。その時には、もう「じゅうさん」なんて言わせない!?

 

第7位 交野(交野市)

「まいかた」こと「ひらかた(枚方)」の隣にある地名です。

これもまけもけさんの言葉を借りれば、大阪人の56.2%は読めますが、吹田に比べると回答率はガクンと落ちるはず。頭真っ白にして読めと言われると、何て読むんやったっけ?とフリーズしちゃいますね。「こうの?」「まじや?」ちゃいます。

答えは「かたの」。これは7位ながらなかなか難しかったかな。

 

 

第6位 喜連瓜破大阪市平野区

すんません、これ地名というより駅の名前です。

もうすぐ民営化される大阪市営地下鉄谷町線に、喜連瓜破という名の駅があります。

この奇妙な駅の名前は、「喜連」と「瓜破」という2つの地域が由来です。その中間に駅が作られたので、いわゆる「ええとこ取り駅名」になってしまったわけです。谷町線はそんな由来の駅名が多く、野江内代(野江+内代)」関目高殿(関目+高殿)」という駅もあります。ちなみに、「野江内代」もしれっと難読です。

喜連瓜破自体は典型的な大阪のベッドタウンなので、大阪に住まない限りまあ行く用事などご縁はありません。が、注意すべきことがあります。

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平日の朝と夕方~夜間だけですが、厄介なことに(?)喜連瓜破行きの電車があるのです。

10年以上昔の話ですが、谷町線の電車を待っていると喜連瓜破行きの電車が到着しました。別に至って普通の喜連瓜破行きなのですが、私の隣にいた標準語を話す女子二人組が、

「えぇぇ?こ、これ何て読むの???」

「きれ・・・ん・・・うり・・・は?」

「きれんうりは」ってそのままやんけ!と、隣で聞いて心の中でツッコミを入れてあげたのですが、駅の案内放送で何度も『きれうりわり』行きが到着します」と言ってるのに、相当テンパってたか聞こえていなかった様子。

当時の喜連瓜破行きは鉄オタ垂涎のレア行き先だったので仕方ない面もありますが、今は平日朝夕なら2~3本に1本が喜連瓜破行き。ローカル向けに書くと、文の里行きがことごとく喜連瓜破まで延びちゃったわけ。谷町線に乗る時は、「きれんうりは」改メ喜連瓜破行きが来てもテンパらないように気をつけましょう。

 

なお、ここまではほんのウォーミングアップ。大阪では、これくらいはノーミスで読めないと小学生にバカにされても文句は言えません。

 

5位からは難易度が上がる中級編です。

 

第5位 茨田大宮(大阪市鶴見区

答えは「まったおおみや」なのですが、そもそも「茨」を「まつ」と読むなんて、漢和辞典にすら載っていないウルトラC的難読地名です。おまけにマイナーな地名かと思いきや、茨田小学校から茨田高校、JA茨田支店から茨田郵便局まである。「まった」で変換されないため、キーボード変換より手書きの方が早いという、レアな地名です。ちなみに、1~10位までの難読地名の中でも、IMEなどで全く変換できない唯一の地名であります。

「茨田」とは日本書紀の記述にも見られる超古い地名の一つで、湿地帯という意味だそうです。少し離れたところに、同じ「茨」を使う茨木(いばらき)市がありますが、茨田との関連はないとのこと。

ちなみに、「茨田(ばらた)」という名字が東京都多摩地区・神奈川県土着で見られるそうですが、元々はここあたりにいた「茨田氏」の末裔だと言われています。

 

 

 

第4位 水走(東大阪市

関西のラジオの交通情報を聞いている人は、よく・・・いや必ず「みずはい」って出てくるなと気づくはずです。
「みずはい」は、阪神高速の渋滞スポットとして朝の交通情報の常連となっているのですが、これを漢字で書くと「水走」です。

この変わった名前は、元々この地域を治めていた平安時代の豪族、水走氏が由来です。
今でこそ内陸で水もへったくれもない地域ですが、かつては旧大和川の支流などが流れており、小さい港もありました。
水走氏はその漁業利権を手に入れ、大きくのし上がった武装集団とのことです。
大阪に限らず、そこを治めていた豪族の名前=地名になった例は数多くあり、大阪に限っても日根野「岸和田」があります。
だんじりで有名な岸和田には、元々和田氏という豪族が治めていました。そこが2つに分かれ、海側に住んでいた方が「海の方(=岸)」を名乗り、「岸の方の和田氏→岸和田氏」になりました。ウソやないですよ、ホンマです。


これも大阪人向けのトリビアですが、方向が真逆の門真市にも「岸和田」という地名があります
ここの岸和田とだんじりの岸和田は、現在のところなぁ~~んの因果関係もないただの偶然。むしろ門真の方が平安時代の荘園が由来なので(もう一つの方は南北朝時代)、門真の方がむしろ「元祖岸和田」だったりします。

 

ここからはベスト3。大阪人を除けば、漢字検定1級保持者のような豪傑以外は読めません。

 

第3位 深日(岬町)

私は地元と言えば地元なので、ああそうですか程度で難なく読めるものの、他の人がこれを一発で読めるとは、到底思えない。私ももし吹田に住んでいれば、いや、時刻表大好きじゃなかったらおそらく読めない。答えは「ふけ」

Wikipedia先生によると、深日は元々「ふけひ」と呼ばれ、「吹井(ふけひ)の浦(浜)」として風光明媚な景勝地でした。その証拠に、『万葉集』『古今和歌集』などの詩歌の常連として登場します。しかし、「ふけひ」がなぜ「ふけ」に、漢字も「深日」になったかはわかっていないそうです。

この深日、言語的にちょっとミステリアスな地域です。それは「逆さ言葉」の存在。逆さ言葉とは、「大きい」なら「小さい」、「高い」なら「安い」と、言葉とは逆の意味で使われることで、深日の漁師の間だけで使われる隠語のようなことばです。

聞いた話によると、深日などの岬町で

「ここで写真撮るな!」

と怒鳴られたら、

「どんどん写真撮ったってや!」

という事になる・・・らしい。

しかしこう書いてみると、私が小さい頃、周りの爺さん婆さん連中はけっこう逆さ言葉を使っていた記憶があります。かわいい赤ちゃんを平気で「ブッサイクやな!」と言い放ち、えらい失礼やなと子供でも思ったほどのど直球。しかし、言われた方は「ブサイクですやろ?」と怒るどころか笑顔。

何せ四捨五入したらそろそろ40年前のことなので記憶はあいまいですが、合っていれば昔の大阪南部全体に「逆さ言葉」があったということになりますね!?

 

 

第2位 杭全(大阪市東住吉区

この際恥を忍んで告白致します。私も20代の頃は真顔で「くいぜん」と読んでいました。本気で「くいぜん」と読むと思っていました。

そんな私が三十路に入り車を買い、ルンルン気分でドライブしていた時、前方に大阪市内の行き先表示が目に入りました。

そこに「杭全」と書いてあったのですが、なんやただの「くいぜん」やんと。

しかし、下のローマ字を見ると!

 

 

 

KUMATA

 

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マジっすかぁ~~~!! 

 今までふつうに「くいぜん」と読んでいた私は一体なんだったのか・・・orz

 

大阪の難読地名と言えば、大阪以外では「放出」がかなり有名ですが、大阪人の間での難読地名の代表格は杭全。
難読地名には慣れっこの大阪人でも、地図にすらルビが振られているほど難しいのです。。

こんなけったいな名前の由来は、
1.「百済」が訛った
2.川が多いという意味の「曲多」(くまた)の当て字が変化した
3.ヤマトタケルノミコトの孫にあたる「クイマタナガヒコ」由来
などなど多数あり、はっきりしたことはわかっていません。

 

さて、栄えある一位は!

・・・とちょっとその前に。

 

番外編 依羅(大阪市住吉区

「よさみ」と読みます。
実はこの地名、1944年に行政区画としては消滅してしまいました。漢字と読み方の反則レベルの隔離ぶりと、行政区画としては現存しない地名なので、「番外」としました。
今の地下鉄御堂筋線あびこ駅からJR阪和線杉本町駅までの、大阪市立大学を含めた地域が「よさみ」村でしたが、地元の人は由緒ある名前を絶やすなと今でも「よさみ」と言い続けており、小学校も依羅なら公園も依羅、公民館も依羅です。
なんだか渡来人のにおいが漂う「依羅」の字ですが、やはり渡来人系の豪族、依羅氏の地だったことから名付けられたと言われています。
かつてはここに、文字での記録が始まった飛鳥時代には確実にあったと記録に残っているという依羅池(よさみいけ)があり、1980年代までため池として現役で使われていました。

じゃあ、何故こんな由緒正しい地名を消してしまったのか。
ぶっちゃけ役人の、
「この地名読みにくいから、変更しちゃわない?」
という、机上だけの役人仕事が大部分です。中には、自分が読めなかったから腹いせに、屁理屈をつけて難読地名を失くしてしまったこともあり得ないこともない。いや、日本全国探したら絶対あると思う。
依羅も、地元民以外到底読めない地名より、「皆さんに親しみやすい(by役人)」我孫子に変わったのですが、その我孫子も時を経て読めなくなったか、地下鉄の駅は「あびこ」ってひらがなになってるし。地名変えた意味あらへんやん。

 

第一位 彼方(富田林市)

全国レベルで有名になった「PLの花火」と野球の「PL学園」のお膝元、「とんだら林」こと富田林市にあるけったいな地名です。富田林も実は難読地名で、「とんだらばやし」と読みます・・・ウソです。でも地元の人はジョークでそう言ってます。

彼方は「かなた」と読みたくなるでしょうが、正解は「おちかた」。これは読めん・・・マジで読めん。参りました。

こちらも万葉集に出てくるのですが、意味は「人里離れた地」となるそうで、それがここの地名になったのかは不明です。

富田林市は、一山越えたら飛鳥の地だけあって、難読地名が案外多いところでもあります。それだけ古代とのつながりが強い地域ということでしょうね。

 

大阪はネタになるような難読地名が非常に多いです。他にも住道矢田」やら「河堀口」、「出灰」やら「柴島」、「蔀屋」などなどネタにできる地名が掃いて捨てるほどありますが、挙げだすとカオスになるので今日はこれまで。

 

さて、これで終わろうかと手を休めようとした時、Webニュースでこんな記事を見つけました。

www.sankei.com

JRに新駅ができるという記事ですが・・・なんということでしょう!

駅名が横綱級の難読です!「衣摺」と書いて「きずり」。

こんなん読めるかい!

「彼方」をⅠ位にしてしまったのでもう遅いですが、衣摺よ、お前には負けたよ。

 

 

 

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