体力を温存しながら山を歩こう
山登りをするときの体力のペース配分は、登りで3分の1、下りで3分の1、残りを余力として確保しておくべきだと言われています。
登山を開始してすぐは、慣れない重い荷物に苦しみ、まだ体も温まっていないのでなかなか思うように動かず、何かと辛く感じるものです。
季節が夏だと暑さが追い打ちをかけ、流れる汗をぬぐうのも億劫に感じるほど。
自分は一体何が楽しくてわざわざこんな苦しい思いをしているのだろう?と疑問に思ってしまうこともありますが、でも、だからと言って途中で投げ出したりはしないものです。
一歩一歩ゆっくりと、でも確実に前に進み、美しい景色や清々しい風に出会えることに期待して、登山を続けていきます。
ここからは、登山をする際に気を付けておくべき項目をご紹介していきます。
ゆっくりと歩く方がより長く歩くことができる
登山はとにかく最初が肝心です。
登山口に到着したら、登山者カードを提出したり、準備体操をしたり、水分補給の用意をしたりなどやることはもりだくさんです。
その際、現地の方から正確かつ最新の山の情報を得ておくことも大切です。
服装は、徐々に暑く感じてくることに備え、初めは少し肌寒く感じる程度にしておきましょう。
そして最初の30分ほどは、特に意識してゆっくりと歩みを進めましょう。
この間に、装備や服装などの不具合を見つけ、改善しておきます。
例えば、荷物の中でコッヘルがカタカタと音を立てているようであれば音が出ないようにする、暑すぎたり寒すぎたりするようであれば服装を調整する、靴紐のチェックをする、などです。
靴紐については、登りではゆるめに、下りではきつめに結ぶのが一般的。
こうすることで、靴擦れを防ぐことができます。
このような服装や装備の微調整を、登山開始30分以内に済ませておくことが大切です。
体調が優れないと感じたら、この時点で無理せず引き返しましょう。
ゆっくりと歩くためには、歩調を一定に保つこと!
意識してゆっくりと、そしてできるだけ疲れにくいように歩くためには、歩調を一定に保つことが最も大切です。
歩いている途中に岩があっても飛び越えたりせず、焦らず迂回して歩きましょう。
近道だからと登山道以外の道を歩くのもおすすめできません。
歩きにくく無駄に疲れてしまう可能性があるだけでなく、人があまり歩いていない道にはどんな危険があるかわからないからです。
そして最近では、山の中に階段や木の道が多く作られていることが問題になっています。
有名どころで言えば、榛名山の外輪山の階段です。
階段を歩くとそれまでの歩幅が狂ってしまい、無駄に体力を消耗してしまいますが、だからといって脇道を歩こうとすると道幅が広がってしまいます。
階段を歩くときは、できるだけ自分の歩調が狂わないように、歩幅を考えながら歩く必要があります。
登りですべての体力を使い果たしてしまわないように、ペース配分をよく考えながら登っていきましょう。
登りで消耗する体力は、全体の3分の1が目安です。
危険な場所では三点確保が基本
奥武蔵の伊豆ヶ岳には、初心者向きの岩場があります。
この岩場では、子供は臆することなく登っているのに対し、大人は怖がってなかなか登れないでいる光景をよく目にします。
登山に慣れれば慣れるほど、起こり得る事故や、隠れている危険が見えてくるようになり、緊張が増してくると言われます。
登山中、岩場などの危険な場所に遭遇したら、「三点確保」をすることで転落などを防ぎましょう。
三点確保とは岩登りの基本的な技術のことで、手足の4点がすべて岩に付いた状態から、どこか1点だけを動かすようにすることです。
つまり、3点で自分の体を支えている状態のことです。
一歩一歩ゆっくりと確実に、三点確保を保持したまま進んで行けば、転落する可能性は非常に低くなります。
岩場で、次の足場が浮き石でないかを確かめる際もこれなら安心です。
鎖場でも基本的には岩場と同じです。
鎖に頼りすぎるのではなく、三点確保で登って行きましょう。
そして万が一、その高さが怖くなって動けなくなってしまっても、鎖や岩場にしがみつくことのないように注意してください。
岩や鎖から体を離し、足に垂直に重力がかかるような体勢を維持します。
ソロ登山者の中にはなぜか、高い所は好きだけど怖いという人が多いように思います。
もしも登山中に怖くて動けなくなるような場面に遭遇したときは、まずは大きく息を吸って一休みし、落ち着くことです。
一般の登山者が登る山道は、きれいに整備されているので無茶をしなければ危ないことはありません。
ソロ登山とは、いわば自分との戦いです。
怖くても逃げず、何としてでも登ってやる!という心意気で臨めば意外と大丈夫なものです。
登山では、慎重さを失ってはいけませんが、自信や大胆さが必要な場合もあります。
ソロ登山の場合、特に休憩を多めに取る
ソロ登山初心者は、意外にも山で休憩を取るのが難しいと答える人が少なくありません。
ソロ登山の場合、緊張からあまり疲労を感じないこともあり、早く目的地に到着したいという思いでどうしてもペースが早くなり、休憩もなかなか取らない傾向があるからです。
例え息が上がってしまっても、少し立ち止まって呼吸が整えば、またすぐに歩き出してしまうケースは多いのですが、ろくに休憩も取らずに歩き続けると、何かのきっかけで緊張の糸が切れてしまうと、急激に疲労が襲ってくる場合があります。
登山中は何とか切り抜けられたとしても、山小屋やテントに到着してから緊張の糸が切れると、食事も着替えもしないままに眠ってしまうことがあります。
そうなってしまうと翌日の登山に大きく影響してくるので、無理をし過ぎず適度に休憩を取ることが大切になってきます。
目安は、50分ごとに5~10分の短い休憩を取りましょう。
しかしこれはあくまで目安に過ぎません。
登山を続ける上では、自分に合った休憩のペースを掴むことも大切なことです。
定期的に休憩を取ることで、蓄積された疲労を回復させ、リセットされた状態で次の行動を起こすことができます。
ソロ登山を長く、安全に行うためにも、定期的な休憩を取りましょう。
登山にある程度慣れてくると、今まではなかなか取らなかった休憩が登山の魅力の一つに感じるようになってきます。
一人静かに山で休憩をしている間、より自然を感じ、穏やかな気分でいられるのです。
休憩は登山のためにやむを得ずに取るものではなく、休憩そのものを楽しく感じられるようになれば、登山はより魅力的なものとなるでしょう。
それでは、休憩の際により効果的に体力を回復させる休憩の取り方をご紹介します。
休憩の際に、飴やチョコレートなどの甘いものを食べたり水分を摂るのはもちろんのこと、軽く体操をして足や首、肩などの筋肉をほぐしましょう。
愛煙家は休憩の際にタバコを吸う人もいるようですが、他の人の迷惑にならないよう、マナーをしっかり守りましょう。
毎回あまりに長い時間休んでしまうと、そのたびにエンジンが切れてしまうので、時間も考えながら休憩しましょう。
そして休憩中に、服装や装備に乱れはないか必ず確認してください。
状況はどんどん変わるので、体調や天候なども考慮しながら、進むのか戻るのかも毎回検討するべきです。
休憩する場所は、頂上が近くなって来ると混み合うようになりますが、少し場所を移すだけでゆっくりできたりします。
コーヒーを沸かしながらゆっくりするなど、自分の好きなように休憩できるのもソロ登山の魅力です。
天候が悪い中で休憩を取ることになったときは、山小屋や避難小屋で天気の回復を待ちたいところですが、近くにそのような建物がない場合は、風や雨の方向を見極めながら木陰や岩陰などで休みましょう。
そして意外に盲点なのは、下山するときの休憩です。
下りの方が膝に負担がかかりますし、早く下山したい一心で休憩もせずに下山してしまうと怪我の元です。
下山の際は登りよりも積極的に休憩を取って下さいね。