国連での演説も悪目立ちしたが、いよいよ、米国のドナルド・トランプ大統領の無能さが際立ってきている。
ミサイル発射実験や核実験など、北朝鮮が米国に向けて挑発行為を続ける中、トランプは相変わらず「遠吠え」を繰り返している。対抗措置として米韓軍事演習は行なったし、経済制裁も強化したが、こうした動きは前政権から実施してきたことであり、目新しさはまったくない。
そんなトランプが国際問題でまたひとつ、振り上げた拳をひっそりと下ろす可能性が出てきた。トランプは2017年6月、気候変動対策の国際的取り決めである「パリ協定」からの離脱を発表して世界的に大きな話題となったが、レックス・ティラーソン米国務長官が9月17日に米CBSの報道番組に出演、「公平だと思える条件ならば、パリ協定に残留する」と言及したのである。
当選当初の威勢はどこへやら、トランプの姿が霞んで見える。
大統領選当時から「アメリカを偉大な国にする」と言い続けたトランプは、外交政策についてはこう述べていた。
「アメリカの基本的な国益を推し進めることに焦点を置いた新たな外交政策を提案する」
蓋を開けて見ると、どうだろうか。就任から8カ月が過ぎた今、トランプは結局、アメリカをこれまで以上に偉大にするどころか、ほとんど何も変えられないでいる。もう十分にお手並みは拝見した。もうそろそろ、アメリカをひっくり返すかのような勢いだったトランプは「無能な大統領だった」と結論付けてもいいのではないだろうか。
事実、特にこれまでトランプが「変える」と宣言してきた外交政策を振り返ると、ほとんど実行できていないことが浮き彫りになっている。
まずアジアを見てみよう。トランプはライバル国である中国について、大統領就任1日目に「中国は通貨を不正に操作している国だ」と宣言して、この問題で攻め立てるつもりだと息巻いていた。だが実際には、4月のウォールストリート・ジャーナル紙とのインタビューで、中国を通貨の不正操作国であると名指しはしないと発言、メディアは驚きをもってそのコメントを報じた。
それだけではない。トランプ大統領就任を目前に控えた2016年12月、アメリカは台湾について「必ずしも中国は一つだとする『一つの中国』政策にこだわらない」と明言。長くアメリカが取ってきたスタンスをトランプがひっくり返すつもりだとして、中国当局だけでなく、米国内もザワついた。
ところが2月になると、習近平国家主席との電話会談であっさりと「一つの中国」を尊重すると伝えている。
北朝鮮問題でも同じような調子だ。例えば、北朝鮮が米領グアムに向けてミサイルを発射する計画を発表した後、トランプはオバマ前政権の「戦略的忍耐路線」とは違い、「炎と激怒」と自らの気持ちを表明、「軍事行動の準備はできている」などとコメントした。
自らの支持基盤を満足させるべく行なった過激発言との見方もあるが、だが結局、今のところ、米政府関係者の間では対北朝鮮の軍事行動は基本的に考慮されていない。
(ちなみに、高官らがこぞって言う「すべての選択肢がある」という言葉で、明日にでも戦争が起きるかのように騒ぐ人たちもいるが、有事だろうが平時だろうが米政府や米軍には常に「すべての選択肢がある」のであって、当たり前のことを言っているに過ぎない。)