【2ch名作SS】扇風機「そろそろ秋ですねぇ」(1)









1:2008/08/27(水) 15:07:55.71 ID:

(ぶ~~~~ん)

男「だねぇ」

セン「そろそろお別れですね」

男「だねぇ」

セン「寂しいですか?」

男「いや別に」

セン「そうですか」

 

7:2008/08/27(水) 15:13:28.45 ID:

(ぶ~~~~ん)

セン「ご主人様」

男「ん?」

セン「私がこの家にきて」

男「うん」

セン「どれくらいになるのでしょうか」

男「7年くらいかな」

セン「そうですか」

男「早いものですね」

セン「ですね」

9:2008/08/27(水) 15:19:31.45 ID:

(ぶ~~~ん)

セン「今日はわりと涼しいですよね」

男「うん」

セン「私、休んだほうがいいですか」

男「いや」

セン「?」

男「もう少しだけ、お願い」

セン「・・・」

セン「わかりました」

10:2008/08/27(水) 15:21:03.96 ID:

12:2008/08/27(水) 15:25:32.35 ID:

(ぶ~~~~ん)

セン「ご主人様」

男「ん?」

セン「最近、肩というか首というか」

男「うん」

セン「少し違和感があるのです」

男「それは困りましたね」
セン「はい困りました」

男「週末に電気屋さんで見てもらいましょう」

セン「ありがとうございます」

13:2008/08/27(水) 15:28:26.48 ID:

きさま俺を泣かせる気か
15: :2008/08/27(水) 15:33:04.44 ID:

(ぶ~~~ん)

男「そういえばさ」

セン「はい」

男「性別ってどっちなの」

セン「男性か、女性かということですか」

男「うん」

セン「・・・う~ん、すみません」

男「わかんない?」

セン「すみません・・」

男「そうですか」

16:2008/08/27(水) 15:38:44.16 ID:

(ぶ~~~ん)

男「それならさ」

セン「?」

男「自分の好きなほうに決めなよ」

セン「好きなほうですか・・・」

男「うん」

セン「う~~ん、悩みます」

男「気楽に気楽に」

18:2008/08/27(水) 15:50:56.59 ID:

(ぶ~~ん)

男「今晩はやけに蒸し暑いですね」

セン「そうですね」

男「申し訳ないんだけど」

セン「はい」

男「『強』にしてくれる?」

セン「いえ、今は『強』ですよ」

男「そうですか」

セン「そうですよ」

男「ではおやすみさい」

セン「・・・・おやすみなさい」

21:2008/08/27(水) 15:58:32.50 ID:

(ぶ~~ん)

セン「ご主人様」

男「ん?」

セン「ご主人様は昔と違って、」

男「うん」

セン「働いてお金を稼いでますし、」

男「うん」

セン「クーラーなどを買われた方が、」

男「うん」

セン「涼しくてよいと・・思うのですが・・・」

男「・・・」

22:2008/08/27(水) 16:06:44.67 ID:

(ぶ~~ん)

男「確かにね」

セン「・・・!」

男「クーラーだって買えるし、」

セン「・・・はい」

男「そっちの方が涼しいな」

セン「そ、そうですよ。家電製品の私が保証します」

23:2008/08/27(水) 16:14:14.48 ID:

(ぶ~~ん)

男「・・でも、」

セン「?」

男「人間には『好み』っていうのがある」

セン「・・・?」

男「『俺はこっちのほうが好き』」

セン「・・・」

男「・・それじゃだめかな?」

セン「い、いえ・・・」

25:2008/08/27(水) 16:20:25.28 ID:

(ぶ~~ん)

男「じゃ、会社行ってくるよ」

セン「はい、行ってらっしゃいませ」

男「うん」

(がちゃ)

(ばたん・・・)

セン「ご主人様・・・」 

セン「ありがとうございます・・・」

セン「でも、もうすぐ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・もうすぐ・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

30: :2008/08/27(水) 16:35:48.46 ID:

(ぶ~~ん)

(がちゃ)

男「ただいま」

セン「お帰りなさいませ」

男「・・・」

セン「どうされました?」
男「ごめん」

セン「?」

男「もう一回いってもいい?」

セン「もちろんですとも」

男「うん、ただいま」

セン「・・・」

セン「お帰りなさいませ」

33:2008/08/27(水) 16:44:04.93 ID:

(ぶ~~ん)

男「あ゙~~~~~」

セン「・・・」

男「あ゙~~~~~」

セン「くすくす」

男「ん?」

セン「いえ、懐かしいなぁと思いまして」

男「懐かしい?」

セン「はい、覚えてませんか?」

男「うん」

セン「昔はよくそれをされたものです」

男「そうだっけ」

セン「そうですよ」

34:2008/08/27(水) 16:44:14.97 ID:

これは期待
37:2008/08/27(水) 16:50:33.45 ID:

(ぶ~~ん)

(ふきふき)

(ふきふき)

男「よし、きれいになった」

セン「すみません」

男「いえいえ」

セン「ご主人様に掃除をしていだけるなんて、」

男「ん?」

セン「明日はきっと雪ですね」

男「降らないでほしいなぁ」

セン「どうしてですか?」

男「それは内緒」

セン「そうですか」

38:2008/08/27(水) 16:55:20.80 ID:

(ぶ~~ん)

セン「今晩は涼しいですね」

男「ですね」

セン「止まりましょうか?」

男「・・・」

セン「お腹が冷えてしまいます」

男「・・・」

男「もう少し・・」

セン「?」

男「もう少しだけ・・・」

セン「・・・・はい」

39:2008/08/27(水) 16:55:33.66 ID:

しばらく扇風機使おう・・
40:2008/08/27(水) 17:06:11.93 ID:

(ぶ~~ん)

セン「ご主人様」

男「・・・」

セン「親愛なるご主人様」

男「・・・」

セン「眠られましたか・・・」

セン「たぶんきっと・・」

セン「ご主人様も気付いてるんだろうなぁ・・」

セン「もう少しだけ・・」

セン「もう少しだけ長く・・」

セン「ご主人様のお役にたちたいな・・・・」

セン「・・・・・・」

41:2008/08/27(水) 17:06:45.58 ID:

クーラー使うの拒否って良かった・・・
42:2008/08/27(水) 17:11:19.54 ID:

(ぶ~~ん)

セン「・・・・・」

セン「夜が長いです・・・」

セン「本当に・・・・・・」

男「お前がさ・・」

セン「!」

男「むにゃむにゃ・・」 
セン「寝言でしたか・・・驚きました」

男「むにゃむにゃ・・」

43:2008/08/27(水) 17:20:51.59 ID:

(ぶ~~ん)

男「・・・お前が初めて家に来た日のこと」

セン「・・・?」

男「・・・今でも覚えてるよ」

セン「・・・」

男「・・・親にさ、『クーラーじゃなきゃ嫌だ』ってだたこねて泣いたっけ」

セン「・・・」

セン「・・・ご主人様。その『寝言』は長くなりそうですか?」

男「ぎくっ・・・」

セン「くすくす」

セン「続けてくださいませ。私はご主人様の『寝言』が大好きですから」

男「む、むにゃむにゃ・・」

男「・・・ありがとう」

セン「いえいえ」

45:2008/08/27(水) 17:28:05.29 ID:

(ぶ~~ん)

男「む、むにゃむにゃ・・やっぱり・・」

セン「・・・」

男「『寝言』で言うのも失礼だから・・・」

セン「・・・」

男「今度話すよ・・・むにゃむにゃ・・」

セン「・・・」

セン「はい、お待ちしております」

男「・・おやすみ、『セン』・・・」

セン「!!」

セン「お、おやすみなさいませ・・・」

48:2008/08/27(水) 17:42:28.63 ID:

扇風機好きになった
保守
53:2008/08/27(水) 17:59:06.15 ID:

(ぶ~~ん)

男「おはよう」

セン「おはようございます」

男「今日は会社が休みです」

セン「それでしたら・・」

男「うん、この前話してた電気屋さんに行きましょう」

セン「はい」

男「では出発」

57:2008/08/27(水) 18:11:30.82 ID:

~電気屋~

(ぶ~~ん)

店員「見さして頂いた扇風機の方なんですが」

男「はい」

店員「動力部分に少し不備がありますね」
男「そうですか」
セン「・・・」

店員「問題の部品を取り換えれば、今までのようにご使用できますよ」

男「そうですか」

店員「ただ、」

男「?」

店員「その部品はもう造られてないんですよ」

男「・・・・・そうですか」

セン「・・・・・・」

59:2008/08/27(水) 18:18:07.97 ID:

(ぶ~~ん)

セン「私は旧型ですから」

男「・・・」

セン「仕方ないことですよね」

男「『仕方ない』なんて言い方・・」

セン「・・・?」

男「しないでよ・・・」

セン「・・・・・」

セン「・・・・すみません」

男「・・・・・・」

60:2008/08/27(水) 18:22:58.45 ID:

(ぶ~~ん)

セン「少し前のことなのですが・・」

男「?」

セン「性別なんてあるはずもない私に、」

男「・・・」

セン「男性と女性、好きなほうを選べっていったこと・・覚えてますか?」

男「・・・うん」

セン「私、決めました」

男「・・・」

61:2008/08/27(水) 18:25:06.51 ID:

ドキドキ
62:2008/08/27(水) 18:27:33.66 ID:

(ぶ~~ん)

男「どちらに決めたんですか?」

セン「それは・・」

男「それは?」

セン「それは内緒です」

男「ここに来てまさかの内緒ですか」

セン「まさかの内緒です」

男「それは残念」

セン「元気を出してください」

男「頑張ります」

65:2008/08/27(水) 18:39:04.32 ID:

(ぶ~ん)

セン「雨ですね」

男「雨ですね」

セン「大雨ですね」

男「大雨ですね」

セン「寒くはないですか?」

男「大丈夫です」

セン「毛布を被りながら言われても説得力がないですよ?」

男「大丈夫ったら大丈夫なのです」

セン「・・・・」

セン「では、頑張ります」

66:2008/08/27(水) 18:44:42.95 ID:

(ぶ~ん)

男「おやすみ」

セン「おやすみなさいませ」

男「・・・・」

セン「・・・・・」

セン「・・・ご主人様」

男「・・・ん?」

セン「少しだけ・・『寝言』を話してもよろしいでしょうか・・・?」

男「・・ああ、何時でも聞くさ」

セン「ありがとうございます」

67:2008/08/27(水) 18:48:25.64 ID:

この雰囲気は好きです
68:2008/08/27(水) 18:49:26.87 ID:

甘酸っぱい
69:2008/08/27(水) 18:50:58.59 ID:

(ぶ~ん)

セン「これは『もしも』の話です・・・」

男「・・・」

セン「もし私が壊れて動かなくなってしまったら・・・」

男「・・・」

セン「無理をせすに私を捨ててほしいのです・・」 
セン「私は・・・」

男「セン・・・」

セン「はい」

男「やっぱり今日は寝かせてくれ・・・」

セン「・・・・・」

セン「・・・・はい、おやすみなさいませ」

74:2008/08/27(水) 19:06:02.62 ID:

(ぶ~ん・・・)

セン「最近寒い日が続きますね」

男「そうですね」

セン「そろそろ夜は冷えますので・・、
暖房の用意をしなくてはいけませんね」

男「・・・そうですね」

セン「ご主人様。少し顔色がすぐれないようなのですが・・」

男「そうですか?」

セン「はい、今日は会社を休まれたほうがよさそうです」

男「・・・・・」

(ばたん・・・)

76:2008/08/27(水) 19:13:07.59 ID:

(ぶ~ん…)

男「ごほごほっ・・」

セン「私のせいです・・・私の・・・・」

男「・・・風邪とお前は関係ないよ」

セン「・・・・」

男「ごほごほっ・・」

セン「・・・すみません・・すみません・・・・・・・・・・」

男「・・それ以上謝ったら怒りますよ」

セン「・・・・はい」

80:2008/08/27(水) 19:26:37.33 ID:

(ぶ~ん…)

男「・・今から話すのは『もしも』話。」

セン「・・・」

男「もしもこの風邪がお前が・・センが原因だったとしよう」

セン「・・・はい」

男「それでも俺はまったくかまわない」

セン「・・・?」

男「そのおかげで今日、センと一緒にいられる」(にこっ)

セン「・・・!はい、すみませんでし・・・」

男「じ~~っ」

セン「い、いえ、ありがとう・・ございます」

男「うんうん」

81:2008/08/27(水) 19:28:55.07 ID:

季節の終わりを告げるまったりスレですね

82:2008/08/27(水) 19:31:15.31 ID:

(ぶ~ん…)

セン「風邪・・長引きますね」

男「だね」

セン「病院に行かれたほうがよろしいのでは・・」

男「だね。もう3日も熱下がらないし、昼になったら行こうかな」

セン「はい・・・」

83:2008/08/27(水) 19:37:44.66 ID:

(ぶ~ん…)

男「ただいま」

セン「おかえりなさいませ。夕飯とお風呂の方、
ご用意してありますよ」

男「うんありがとう」

セン「冗談ですよ?」

男「わかってます」

セン「・・ですよね」

85:2008/08/27(水) 19:43:15.56 ID:

(ぶ~ん…)

セン「お医者様からはなんて言われたのですか?」

男「ただな風邪だそうです」

セン「それはよかったですね」

男「よかったです」

男「あ、ちょっとお風呂入ってくるね」

セン「はい、ごゆっくり」
男「うん」

男「『手術』・・か・・・」

87:2008/08/27(水) 19:47:39.46 ID:

なんという展開
89:2008/08/27(水) 19:53:59.11 ID:

(ぶ~ん…)

男「ただいま」

セン「おかえりなさいませ」

男「うん。今日はセンにプレゼントを買ってきましたよ」

セン「私にですか?」

男「私にです」

セン「気になります」

男「では開けてみましょう」

91:2008/08/27(水) 20:01:10.80 ID:

(ぶ~ん…)

セン「きれいな・・風鈴ですね」

(チリンチリーン…)

セン「それに、すごくいい音・・・」

男「お気に召されましたか?」

セン「もちろんです」

男「それはよかった。
でも少し時期はずれになってしまいましたね」

セン「かまいませんよ、そんなことは」

男「ありがとうございます」

セン「いえいえ、こちらこそ」

92:2008/08/27(水) 20:07:24.00 ID:

(ぶ~ん…)

男「ごくごく」

セン「何を飲まれているのですか?」

男「サプリメントというものです」

セン「ご主人様が健康を気にされている姿を初めて見ました」

男「若いうちからのお肌のケアが重要なのです」

セン「勉強になります」

男「・・・いえいえ」

93:2008/08/27(水) 20:09:06.45 ID:

(´;ω;`)
94:2008/08/27(水) 20:14:00.21 ID:

(ぶ~ん…)

(チリンチリーン……)

セン「ご主人様」

男「ん?」

セン「こういったモノはやはり・・・」

男「自然の風じゃないと風情がないと?」

セン「はい」

男「型にはまった風情より、こちらのほうが好きです」

セン「ご主人様のおおせの通りに」

男「うむ、くるしゅうない」

(チリンチリーン………)

95:2008/08/27(水) 20:20:21.51 ID:

(ぶ~ん……)

男「ごくごく」

セン「また、サプリメントですか?」

男「そうです」

セン「・・・」

セン「ご主人様」

男「なんでしょうか」

セン「私が気付かないと思いますか・・?」

男「・・・なんのことでしょうか」

 
99:2008/08/27(水) 20:28:55.44 ID:

(ぶ~ん……)

(チリンチリーン……)

セン「・・・・」

男「・・・・」

セン「ご主人様」

男「・・・・」

セン「風鈴の音、寝づらくないですか・・」

男「大丈夫」

セン「・・・」

男「・・・・」

男「今日言えなかったこと・・・」

セン「・・・」

男「いつか・・話すから・・・」

セン「・・・・はい、お待ちしております」

103:2008/08/27(水) 20:40:39.77 ID:

(ぶ~ん………)

男「おはよう」

セン「おはようございます」

男「今日は久しぶりに暑いですね」

セン「ですね」

男「頼りにしていますよ」

セン「おまかせ下さい」

セン「・・・と、言いたいところなのですが・・・」

男「・・えっ・・・・・?」

129:2008/08/27(水) 23:00:59.25 ID:

(ぶ~ん…………)

セン「もう首が動かないのです・・」

男「・・・」

セン「羽も・・いつ止まるかわかりません・・」

男「・・・」

セン「・・・」

セン「ご主人様の病気のこと・・・」

セン「聞かせていただけませんか・・・?」

男「・・・・・」

133:2008/08/27(水) 23:10:14.47 ID:

(ぶ~ん…………)

男「・・・今度話します」

セン「『今度』とはいつですか」

男「・・・今度話します」

セン「・・・・」

セン「『今度』まで私が持つ保証など・・・」

セン「無いの・・ですよ・・・・?」

男「・・・お願いします」

セン「・・・・」

セン「・・・・わかりました・・」

134:2008/08/27(水) 23:17:08.87 ID:

(´;ω;)
135:2008/08/27(水) 23:23:24.78 ID:

(ぶ~ん…………)

男「最近、同じ夢をみるのです」

セン「そうですか」

男「とても楽しい夢なのです」

セン「それはよいことです」

男「いえ、『それ』がとても辛いのです」

セン「楽しい夢なのに辛いのですか?」

男「はい」

男「それがもう・・叶わぬ夢だからです」

セン「・・・・・」

136:2008/08/27(水) 23:29:01.58 ID:

(ぶ~ん…………)

男「おはよう」

セン「おはようございます。今日は早起きですね」

男「ええ、ちょっとお出かけをしてきます」

セン「遠い所ですか?」

男「いえ・・まだ行ったことが無い場所ですのでわかりません」

セン「そうですか」

男「そうです。では行ってきます」

セン「いってらっしゃいませ」

143:2008/08/27(水) 23:40:34.95 ID:

(ぶ~ん…………)

セン「私の体が悪くなるにつれて・・・」

セン「ご主人様の体調も悪くなってる気がする・・・・」

セン「・・・・・・」

セン「もし私が・・」

セン「ここで止まってしまったら・・・・・」

セン「・・・・・・」

セン「頑張ろう・・・もっと・・・・もっと・・・・・」

148:2008/08/27(水) 23:46:25.60 ID:

切ないなぁ
155:2008/08/27(水) 23:52:11.95 ID:

こうやって物の気持ちを考えて生きていけたらすごく豊かなひとになれそう
156:2008/08/27(水) 23:54:23.65 ID:

~ゴミ集積所~

職員「どちら様ですか?」

男「初めてまして、男と申します」

職員「できれば事前にご連絡を入れて欲しかったですね」

男「すみません、急に押し掛けてしまい」

職員「いえ、それでご用件の方は」

男「はい、それが・・・」

159:2008/08/28(木) 00:02:56.16 ID:

職員「・・それで、こちらの写真と同じ扇風機を探しておられると」

男「はい」

職員「初めてですよ、そんな用事でこられた方は」

男「すみません」

職員「いえ、皮肉などではないですよ。」

男「はい」

職員「見たところかなり古い型のようですが、」

職員「どうしてまたこんな物を?」

男「・・・・・」

160:2008/08/28(木) 00:10:30.63 ID:

男「家にこの型と同じ一台の扇風機があります」

職員「ほうほう」

男「ただ、最近とても調子が悪いのです」

男「それで、代わりの部品を探しているのです」

職員「ほうほう。そういうわけでしたか」

男「そういうわけです」

 
163:2008/08/28(木) 00:18:45.52 ID:

職員「ただ残念ながら、今ウチにはないですね」

男「そうですか・・・」

職員「大切にされてる・・扇風機なんですね」

男「長い・・付き合いですから・・・」

職員「・・わかりました。では電話番号を聞かせてもらえますか」

男「えっ・・・?」

職員「今日はなくとも明日は有るかもしれません、」

職員「もし見かけたら・・すぐに連絡を入れますよ」

男「ありがとう・・ございます・・・」

職員「いえいえ」

164:2008/08/28(木) 00:23:53.66 ID:

男「今日は本当にお世話になりました」

職員「いいですいいです」

男「では、失礼します」

職員「ええ・・・・、」

職員「あっ、ちょっと待ってください」

男「?」

職員「最後にお話したいことがあります」

男「・・・・?」

166:2008/08/28(木) 00:33:06.62 ID:

職員「『今在るもの』には、必ず終わりがくるのです」

男「・・・・」

職員「あなたにも私にも」

男「・・・・」

職員「あなたの扇風機にも・・・」

男「・・・・」

職員「その『終わり』を笑顔でむかえられるのは、」

職員「とても・・・とても幸せなことだと思うのです」

職員「これからも大切に扱ってあげて下さい・・・」

男「・・・もちろんです」

168:2008/08/28(木) 00:43:23.72 ID:

(ぶ~ん……………)

男「ただいま」

セン「おかえりなさいませ」

男「うむ」

(どん・・・)

(どん・・・)

セン「・・・?」

男「・・・・・・」

169:2008/08/28(木) 00:45:12.91 ID:

(ぶ~ん……………)

セン「今晩は花火のようですね」

男「・・・うん」

セン「きれい・・ですね・・・」

男「・・・・・うん」

セン「どうして・・・泣いておられるのですか?」

男「泣いてなどいません・・気のせいです・・・」

セン「・・・確かに、気のせいでした」

男「ありがとう・・・ございます・・・・」

セン「・・・・」

セン「・・・・いえいえ」

172:2008/08/28(木) 00:58:09.70 ID:

(ぶ~ん……………)

男「おやすみ」

セン「おやすみなさいませ」

男「うっ・・・・!!」

セン「どうされました?」

男「い、いえ。トイレに行くのを忘れていました」

セン「そうですか」

男「・・・・・・」

男「こんなに血が・・・・」

男「病気のこと・・・センに話そう・・・・」

173:2008/08/28(木) 01:01:46.50 ID:

なんかまじで泣きそう
174:2008/08/28(木) 01:04:24.45 ID:

(ぶ~ん………………)

男「おはよう」

セン「おはようございます。では朝食を作ります」

男「・・・・」

セン「ご主人様?」

男「セン・・・・」

セン「はい」

男「大事な・・話があるんだ・・・」

セン「・・・・・はい」

175:2008/08/28(木) 01:05:18.99 ID:

弱ってても冗談を…
178:2008/08/28(木) 01:11:01.98 ID:

(ぶ~ん………………)

セン「お身体のことですか?」

男「そう、病気のことです」

セン「治らない・・病気なのですか?」

男「・・・・いや、」

男「治す方法が無いわけではないんだ・・・」

セン「・・・・・」

男「・・・・でもな・・セン・・・」

181:2008/08/28(木) 01:17:27.94 ID:

(ぶ~ん………………)

男「治すためには手術が必要で・・・」

セン「はい・・・」

男「でもそれが成功する確率は・・・とても低いんだ」

セン「どれくらい・・なのですか?」

男「良くて・・・、」

男「『1割』だそうだ・・・・・」

セン「・・・・・・」

183:2008/08/28(木) 01:22:46.40 ID:

(ぶ~ん………………)

男「今飲んでいる薬をもう少し重くすれば」

セン「・・・・」

男「あと半年は・・生きれるらしい・・・・」

セン「・・・・・」

男「・・・・・」

セン「ご主人様は・・」

男「ん?」

セン「どうされるおつもりなのですか・・・?」

男「・・・・・そうだなあ・・」

185:2008/08/28(木) 01:36:57.85 ID:

(ぶ~ん………………)

男「俺は・・・このまま薬を飲んで、」

セン「・・・・・」

男「半年だけ、生きようと思う」

セン「でも・・治る可能性があるなら・・・」

男「『手術を受けたほうがいい』?」

セン「はい・・・」

男「でも・・・・」

セン「確率は低いのですよね・・・」

男「・・・・・セン」

セン「はい」

男「センは・・お前はどうしてほしい・・・?」

188:2008/08/28(木) 01:43:58.29 ID:

(ぶ~ん………………)

セン「1割の手術に賭けるか・・・」

セン「半年だけの『生』をとるか・・・・」

セン「・・・・・」

男「・・・・・」

男「決められない・・・?」

セン「・・・すみません・・・・・・・・」

男「・・・いえいえ」

男「『仕方ない事』なのです・・・・」

189:2008/08/28(木) 01:46:48.17 ID:

うう…
191:2008/08/28(木) 01:51:00.62 ID:

(ぶ~ん………………)

男「・・・・・」

セン「・・・・・」

(プルルプルル)

セン「お電話ですよ」

男「・・・・・」

セン「お電話ですよご主人様」

男「おっと、今取ります」

セン「そうしてください」

(カチャ・・・)

男「はいもしもし男です」

193:2008/08/28(木) 01:57:31.98 ID:

(ぶ~ん………………)

??「もしもし男さん。お久しぶりです」

男「えっと・・・」

職員「ああすみません、職員です。ゴミ集積所でお会いした」

男「いえ、こちらこそ気付かずにすみませ・・・」

男「・・・・!」

男「もしかして、見つかったのですか」

職員「・・・・・・」

195:2008/08/28(木) 02:04:55.50 ID:

(ぶ~ん………………)

職員「いえ、残念ながらまだ・・・」

男「そう・・ですか・・・・」

職員「期待を持たせるようなことをしてしまい、
すみませんでした・・・」

男「いえいえ」

職員「今回お電話をした理由は、
男さんについてきてもらいたい場所があるからです」

男「遠い場所ですか?」

職員「少しだけ・・・」

196:2008/08/28(木) 02:09:23.94 ID:

親父が一人暮らししてたころから使ってたっていう年代物を、
さらに8年くらい使っていた。
一昨年壊れたが、古いモノは頑丈って本当だと思った
197:2008/08/28(木) 02:12:59.12 ID:

(ぶ~ん………………)

男「今から出掛けることになりました」

セン「そうですか」

男「帰りは少し遅くなりそうです」

セン「そうですか」

男「寂しいですか?」

セン「寂しいです」

男「素直でよろしい」

セン「ありがとうございます」

198:2008/08/28(木) 02:16:23.18 ID:

いまさらだけど、冒頭の(ぶーん)少しずつ弱くなってるのな……
202:2008/08/28(木) 02:23:23.43 ID:

>>198
素で気付いてなかったwww
なかなか切ないな

【2ch名作SS】扇風機「そろそろ秋ですねぇ」(2)

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