いい子でしたね。
うん。
とてもいい子でした。
どうもありがとうございました。
ありがとうございました。
山本耕史さんでした。
(拍手)
(菊村栄)
久方ぶりに東京に出た
姫の死
そして加納英吉の死
心の混乱が頂点に達していた
東京いわき磐梯熱海と4〜5日環境を変えようと思い私はやすらぎの郷を離れた
お彼岸に息子たちがお参りに来たらしい
花立てで花が枯れていた
それ以外人の来た気配はなかった
律子
放ったらかしにしたままですまない
俺はあれからやすらぎの郷にいる
なんとか病気もせず暮らしているがお前と会うのも遠い日じゃあるまい
さっき善福寺を車で通ってきた
俺たちの家がもうなかった…
あそこの土地は更地になってたよ
あの土地へ俺はもう行く事はないだろう
俺たちのふるさと善福寺は消滅した
時代は変わり東京も変わる
残酷なもんだな
ちょっと見ない間に俺たちの生きて暮らした場所が…
(侘助)はいいらっしゃい!やあ。
(侘助)おお先生!しばらく!生きてたかい。
ハハッ生きてたよ。
何よりだ。
前より健康そうじゃないか。
え?だって田舎でのんびりしてたから。
結構なご身分だ。
俺なんかこのとおりま〜だ働かせやがってよ。
(玉子)あら先生しばらく!おお〜元気か?元気。
この野郎また子供作りやがって今7カ月だよ。
何人目だ?まだ4人目。
「まだ」って言ってやんの!まったく年寄りに働かせやがって本当にもう!
(侘助)はいいらっしゃい!
(玉子)いらっしゃい!
(玉子)あっ。
(侘助)お…おい!中山さんどうしたの?おいどうした?
(中山保久)いや…駄目だもう。
えっ…?ロケ先でぎっくり腰を起こしてなそいつこじらせたら脊柱管狭窄だって…。
もう引退だ。
ああ…。
えっ…で飲めるの?飲めるよ。
ああ!先生もいくね?ああ。
はいお二人にお酒!
(玉子)はい!
(侘助)酒?焼酎?
(2人)酒!はい!これならまだ大丈夫だねえ。
はいよ〜!そんじゃあ今日はいいカレイが入ってるからな今作る!待っててね〜。
頼むよ。
(侘助)「待っててちょうだい…」大丈夫か?本当に。
え…?いやいや…目は白内障の手術するしさ耳は遠くなってるだろう。
うん。
便秘は例のごとくだ。
そこにさ前立腺悪くしちゃったんだ。
今…紙オムツはいてるよ。
あららら…大変だ。
そっちはどうなんだよ?元気そうだな。
まあな。
やすらぎの郷快適か?うん…まあまあだよ。
積もる話がさ山のようにあるね。
おっ聞かせてくれ。
(玉子)はいお待ち〜!ああありがとう。
(玉子)ごめんなさいね。
(侘助)はいお待ち〜!
(玉子)ありがとうございます。
あっ悪いね。
よいしょ。
(侘助)はい頂きますよ!はいはいどうも。
(玉子)ありがとうございます。
じゃ乾杯だ。
(侘助)おお…。
久しぶりだな。
(侘助)待った待った待った…。
なんだやってたな。
(侘助)お〜っとっとっと。
ああ…!はあ…。
いや…ここのところね立て続けに何人か送ったよ。
送ったって?ん?あああっちさ。
亡くなったんだ…死んだよ。
誰が?ん…?そう…なんといっても姫だな。
あっ!九条さん…九条摂子な。
(中山)テレビで見たんだ。
驚いたよ。
葬式には行かなかったのか?花は出しておいたんだけどねちょうどこのぎっくり腰と脊柱管狭窄ってやつで病院でうなってる最中だったんだ。
そうか。
あ〜あ…昔の花形がどんどん消えていくね…。
ああ。
あっこの間さ…。
ん?スズチノとマシケンが…。
ス…スズチノって誰だよ?スズチノ知らないのか?知らない。
鈴岡チノ。
今最も売れてるタレントだよ。
へえ〜。
ほらテレビ小説で売れて…。
うん。
で…今度の大河の準主役をやる子だって。
へえ〜知らないな。
マシケンは知ってんだろ?いいや。
増崎健二。
増崎大二郎の息子!まあいわゆる二世タレントだよ。
ふ〜ん。
初めて聞いた。
増崎のあの息子がねえ。
ふ〜ん。
先生も時代に取り残されましたな。
(笑い声)若手で今一二を争う成長株だ。
知らないな…フフフッ。
いや…その2人がさ俺が入院してるところへ見舞いに来てな。
いきなり同時に言うんだぜ「九条摂子って誰ですか」って…。
いやあ…。
2人とも姫の名前をご存じなかったって事さ。
驚いたねもう…。
いやぼうぜんとしたな。
その2人が姫の名前を知らなかったという事にも驚いたが彼らの名前を私が全く初めて聞いた事にも驚いていた
私が時代に取り残されたのも事実だが時の移り変わるスピードというもののあまりの速さにぼうぜんとしていた
現役のつもりでいた俺さえがびっくりしたんだから…。
時代はどんどん流れていくね。
ところでやすらぎの創始者が死んだよ。
加納英吉?うん。
加納プロの総帥。
ドンと言われた芸能界のボスだ。
ふ〜ん…。
まだどこかで生きてたのか。
そう。
怖い奴だったよなあ。
近寄るなって言われた。
近づくとやばいからってみんなから言われた。
芸能界の悪の元締めだってな。
彼のために弁護しようかと思ったがやめた
加納英吉は加納英吉
テレビの時代の悪役として伝説の中に刻まれればいいのだ
翌朝私は東北へ向かった
いわきの海は鈍色に凪いでいた
6年前ここを津波が襲い直美の体を沖へ運んだ
そんな情景は想像も出来なかった
昔喪服には鈍色を用いた
そんな事をぼんやり考えていた
かつて一時期私の愛した少女がひっそり年をとりこの海を沖へ孫娘としっかり手を握り合ったまま大洋のかなたへ流されようとした
孫娘は何かに懸命にしがみつき祖母の手を離すまいと必死に頑張ったが力尽きその手を離してしまった
祖母はそのまま海の中へ消えた
少女はその事を自分の罪だとした
手を離したのは私
もう6年だね。
ええ…。
早いもんだ。
ええ…。
あんたも誰か持ってかれたかね。
ええ知り合いを…。
俺も娘持ってかれてねえ…。
娘この先のコンビニで働いてたんだ。
こちらの方ですか?原発だよ…原発。
第一原発で廃炉作業よ。
放射能ももうだいぶ食っちまったからいい加減もう逃げてえんだけどね…。
東京オリンピックに人手とられちまってなんでもいいからいてくれって社長に泣きつかれてさ。
金もいいから抜け出せねえのさ。
中で働けるのはせいぜい15分でそれ以外はプラプラしてるだけだからさ。
普通はプクプク太っちまうのさ。
「イチエフ」の防護服は2Lまでだからな着られなくなったら仕事もクビよ。
だから太っちゃえばそれでさよならだって毎日食ってんだけど…。
なぜか太らねえ…。
この辺の浜はもう捜しても無駄だぜ。
(主人)先生ーっ!久しぶりだね。
本当に何年ぶり?え…?安西直美さん?部屋…一緒にするか?何!?2017/09/26(火) 12:30〜12:50
ABCテレビ1
やすらぎの郷 #126[解][字]
半年に渡り放送された倉本聰脚本『やすらぎの郷』も、今週いよいよ完結!!豪華ゲストも多数出演する最終週、お見逃しなく!
「さいごは笑って、いきましょう。」
詳細情報
◇番組内容
『やすらぎの郷』を出立した菊村栄(石坂浩二)は東京に立ち寄り、律子(風吹ジュン)の墓参りをした後、馴染みの居酒屋「侘助」で、かつてのテレビ仲間・中山保久(近藤正臣)との旧交を温める。翌日、いわきの海岸に一人立った栄の脳裏には、さまざまな思いが去来する。そんな栄に、一人の作業服姿の男(上川隆也)が声をかけてくる。
◇出演者
石坂浩二
清野菜名
【ゲスト】小松政夫、近藤正臣、上川隆也
◇作
倉本聰
◇音楽
島健
◇演出
藤田明二(テレビ朝日)
◇主題歌
中島みゆき『慕情』(ヤマハミュージックコミュニケーションズ)
◇スタッフ
【チーフプロデューサー】五十嵐文郎(テレビ朝日)
【プロデューサー】中込卓也(テレビ朝日)、服部宣之(テレビ朝日)、河角直樹(国際放映)
◇おしらせ
☆番組HP
http://www.tv-asahi.co.jp/yasuraginosato/
ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ
福祉 – 文字(字幕)
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
映像
音声 : 2/0モード(ステレオ)
日本語
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日本語(解説)
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