ノーベル賞学者「生産性向上は"昭和"に学べ」

スティグリッツの警告「規制緩和は逆効果」

資源を効率的に使い資本を蓄積することは重要ですが、ラーニングやイノベーションはもっと重要です(撮影:尾形文繁)
たった200年前まで、新鮮な食料が手に入り快適な住居で余暇を楽しむといった生活は、ごく限られた上級階級の特権だった。現代では、格差はあるにせよ先進国の多数の人がそうした高い生活水準を享受している。
ノーベル経済学賞を受賞した世界的権威であるジョセフ・E・スティグリッツ(コロンビア大学教授)によれば、生活水準の向上をもたらしたのは、「どのようにして生産性を向上させるかに関する学習(ラーニング)」の成果だという。また、日本の過去の成功もラーニングによるもので、現在直面している課題を解決するのもラーニング次第だという。
ラーニングは日本をどのように変えたのか? なぜラーニングが重要なのか? その疑問に答えるのが、『スティグリッツのラーニング・ソサイエティ』(ジョセフ・E・スティグリッツ、ブルース・C・グリーンウォルド著)だ。今回、本書の日本語版への序文を、一部編集のうえ掲載する。

戦後の日本の成長戦略は正しかった

『スティグリッツのラーニング・ソサイエティ』(書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします)

明治維新以来、特に第2次世界大戦以降の日本の歴史はまさにラーニングとイノベーションの歴史でした。長い間の鎖国の後、日本は学ぶべきことがたくさんあることに気づき、先進国との知識のギャップを意識的に縮める努力をしてきました。

第2次世界大戦後は、さらに熱心に取り組み、その成果は目を見張るものでした。日本は急速に産業化が進み、世界第2位の経済大国になりました。同時に重要な貢献は、この経験が東アジアの奇跡と呼ばれるような発展のモデルを作ったことです。アジアのほかの国々は、日本の成功を見て、日本の成長戦略を手本として、そのやり方を採用しました。

次ページワシントンコンセンサスの功罪
関連記事
トピックボードAD
人気連載
トレンドライブラリーAD
  • コメント
  • facebook
0/400

コメント投稿に関する規則(ガイドライン)を遵守し、内容に責任をもってご投稿ください。

  • NO NAME82b109254e65
    生産性、生産性といいながら
    割とこれの出し方をしらない人が多いし
    メディアによっては間違ったことを平気で書いている 謎
    up1
    down0
    2017/9/26 12:58
  • NO NAME988337f5ec13
    生協の共同購入方式とか今でいうシェアリングエコノミーみたいな先駆けで、すごく先進的だったと思うのですが(専業主婦の労働力が前提だけど)
    実際あれも県縛りとかでコープはガチガチに縛られてたから、通販&共同購入みたいな、生まれたと思うんですよね
    up0
    down0
    2017/9/26 12:45
  • NO NAME95e7864e458d
    私にはこんな広範な知識は無いけど、後半の…

    >規制のない市場は、情報、イノベーション、そして知識社会という、この新しい世界での成功には決してつながらないのです。

    これはよく分かる。
    自由主義とは、「消費者に不利益があれば叩き潰される」そうゆう重しが売る側(企業)にあるから機能する部分があると思う。

    しかし、なぜかネット企業にはこれは適用されてこなかった。「これ、ただの泥棒でしょ…」という問題が過去に何度あったか私は数えきれない。それに情熱的に抗議する消費者を見た事がない。

    なぜかといえば無料サービスという商売だからだ。

    彼らの扱う情報や個人情報とは血であり肉である。私はそう思っている。

    英字メディアなんか読んでいると脱中央集権、分散という言葉をよく見るけど情報や個人情報も中央集権的なサービスを離れれば、もっとイノベーションを起こす力は生まれてくると思うんだけど…
    up0
    down0
    2017/9/26 11:39
  • すべてのコメントを読む
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • いいね!
トレンドウォッチAD
50歳から考える<br>定年後の仕事選び

健康なら80歳まで働ける時代。60歳の定年からでも20年、50代で転身したら30年近くある。発想を変えれば、あなたの人生は変わる。生涯現役で働きたい人に役立つ情報が満載。