ドイツ連邦議会選挙 右派政党躍進 議会運営など影響か

ドイツ連邦議会選挙 右派政党躍進 議会運営など影響か
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ドイツの連邦議会選挙では、メルケル首相が率いる与党が第1党の座を確保したものの、議席を大きく減らしてメルケル首相の求心力の低下が顕著となる一方、難民の受け入れに反対する新興の右派政党が一気に第3党に躍進し、今後の議会運営や政策決定にも影響を及ぼすものと見られます。
24日投票が行われたドイツの連邦議会選挙は、開票の結果、全709議席のうち、メルケル首相率いる中道右派のキリスト教民主・社会同盟が246議席を獲得して第1党の座を確保し、中道左派の社会民主党が153議席で第2党になりましたが、これまで大連立を組んできたこれらの2大政党はいずれも大幅に議席を減らしました。

メルケル首相は4期目の政権の発足に向けて各党との連立交渉に臨む考えを示していますが、求心力の低下は免れず、意見の異なる複数の少数政党との交渉が難航することも予想されます。

これに対して、難民の受け入れに反対する新興の右派政党「ドイツのための選択肢」は94議席を獲得し、連邦議会に初めて議席を確保しただけでなく一気に第3党に躍進しました。「ドイツのための選択肢」について、メルケル首相や社会民主党のシュルツ党首はドイツの価値観と相いれない排他的な政党だとして有権者に支持しないよう訴えてきましたが、政府の難民政策や2大政党への国民の不満を背景に逆に躍進を許す形になりました。

「ドイツのための選択肢」が議会で大きな発言力を得たことで、今後のメルケル首相の議会運営や政策決定に一定の影響が及ぶのは、避けられないものと見られます。

ヨーロッパではことし、フランスやオランダでも相次いで国政選挙が行われ、いずれも難民や移民に厳しい対応を求める右派政党が国民の不満の受け皿となり、大きく支持を伸ばす結果となっています。
24日投票が行われたドイツの連邦議会選挙は、開票の結果、全709議席のうち、メルケル首相率いる中道右派のキリスト教民主・社会同盟が246議席を獲得して第1党の座を確保し、中道左派の社会民主党が153議席で第2党になりましたが、これまで大連立を組んできたこれらの2大政党はいずれも大幅に議席を減らしました。

メルケル首相は4期目の政権の発足に向けて各党との連立交渉に臨む考えを示していますが、求心力の低下は免れず、意見の異なる複数の少数政党との交渉が難航することも予想されます。

これに対して、難民の受け入れに反対する新興の右派政党「ドイツのための選択肢」は94議席を獲得し、連邦議会に初めて議席を確保しただけでなく一気に第3党に躍進しました。「ドイツのための選択肢」について、メルケル首相や社会民主党のシュルツ党首はドイツの価値観と相いれない排他的な政党だとして有権者に支持しないよう訴えてきましたが、政府の難民政策や2大政党への国民の不満を背景に逆に躍進を許す形になりました。

「ドイツのための選択肢」が議会で大きな発言力を得たことで、今後のメルケル首相の議会運営や政策決定に一定の影響が及ぶのは、避けられないものと見られます。

ヨーロッパではことし、フランスやオランダでも相次いで国政選挙が行われ、いずれも難民や移民に厳しい対応を求める右派政党が国民の不満の受け皿となり、大きく支持を伸ばす結果となっています。

ドイツのための選択肢 足並みの乱れも

「ドイツのための選択肢」の幹部が記者会見を開き、モイテン共同党首は「メルケル首相は難民の受け入れに関する規制を設けないという過ちを犯した」と述べ、難民の受け入れ政策を自らの判断で推し進めたメルケル首相を厳しく批判し、連邦議会での論戦を徹底していく考えを示しました。

その一方で、これまで党の顔として活躍してきたペトリ共同党首は「かつては党として明確な目的があったが、今は無秩序な政党で、有権者が信頼できる政策を提示できない」と述べ、連邦議会の「ドイツのための選択肢」の会派には所属しない考えを表明しました。ペトリ共同党首は記者会見の途中で退席し、「ドイツのための選択肢」は、選挙で躍進した一方で、早くも党内での足並みの乱れが鮮明になっています。

右派政党台頭の背景

ドイツでは過去にナチスが政権を取ったことへの反省からほかのヨーロッパ諸国に比べて国民の間で右派政党が台頭することへの警戒心が強いと指摘されてきました。

しかし、ドイツでおととし以降に短期間に100万人以上の難民や移民が到着する中で、難民の受け入れ反対を全面に打ち出した「ドイツのための選択肢」が政府の難民政策に対する国民の不満の受け皿になる形で支持を伸ばしました。支持者の間では「難民ではなくもっとドイツ人のためにお金を使うべきだ」との不満があるほか治安の悪化の懸念もあります。支持者の中には一部に排外主義的な思考の人がいるものの、既存政党から支持を変えた人も多く、今回の選挙では、メルケル首相のキリスト教民主・社会同盟から100万人以上の支持者が流れたとの調査もあります。

また、経済格差への不満も背景にあると見られます。ヨーロッパ最大の経済国ドイツは、経済が堅調で失業率も低水準である一方、雇用制度改革によって低賃金の仕事が増えたことから、社会の格差が拡大したと指摘されています。

公共放送の調査では、今回の選挙で「ドイツのための選択肢」に投票した人の40%余りが「自分がほかの人たちに比べて社会的経済的に恵まれていない」と答えているということです。

メルケル首相の難民政策

2015年9月、メルケル首相は、ハンガリーで足止めされていたシリアなどからの難民を入国させる方針を発表しました。

メルケル首相は、「助けを求める人たちを保護するのは、当然のことだ」と述べています。人道主義に基づいたこの方針は当初、国内外から高く評価されましたが、メルケル首相にとって思わぬ事態を招きます。ドイツが入国を認めてくれると知った移民や難民が大挙してヨーロッパを目指すようになり、ドイツに到着した難民や移民の数は去年までの2年間で117万人に上ったのです。

メルケル首相が難民の受け入れを打ち出した背景には、ナチス・ドイツ時代にユダヤ人などを迫害し、大勢の難民を出した教訓から、憲法にあたる「基本法」で難民の保護を規定していることがあります。

ただ、これほど多くの難民を短期間に受け入れることは全くの想定外でドイツ各地で難民と住民の間のトラブルや難民の滞在施設への放火事件などが相次ぐなかでメルケル首相への批判が一気に高まります。メルケル首相はインタビューなどで「われわれはできる」とたびたび発言し、受け入れた難民のドイツ社会への統合を国民に訴えて事態の沈静化を図りました。

そのメルケル首相に大きな打撃となったのが2015年12月にドイツ西部のケルンで起きた事件です。大みそかに年越しを祝うためにケルン中心部に集まっていた複数の女性が難民らに乱暴される事件が発生したのです。それまで多くの人々がボランティアなどで難民の支援を行っていましたがこの事件をきっかけに難民に対する世論が厳しいものに変わります。

これをうけて去年行われた地方選挙では、メルケル首相のキリスト教民主同盟が相次いで敗北する一方、難民の受け入れ反対を掲げる新興政党の「ドイツのための選択肢」がいずれも躍進する結果となりました。

こうした中、メルケル首相は難民を保護する姿勢は維持しながらも、去年3月、トルコからギリシャに到着した難民や移民を送還する措置でトルコと合意したほか、難民認定されなかった人の強制送還を強化するなど難民の流入を抑制する政策に乗り出しています。その結果、ドイツに入国する難民などの数は減少し、ことし6月までの半年間で9万人にとどまっています。

メルケル首相は難民の受け入れ表明から1年余りが経った去年9月、「もし時間を戻せるなら政府としてもっと対応できるよう準備をしていただろう」と述べて、拙速な受け入れ表明が混乱を招いたことを率直に認める発言をしています。

ドイツ連邦議会選挙 右派政党躍進 議会運営など影響か

ドイツの連邦議会選挙では、メルケル首相が率いる与党が第1党の座を確保したものの、議席を大きく減らしてメルケル首相の求心力の低下が顕著となる一方、難民の受け入れに反対する新興の右派政党が一気に第3党に躍進し、今後の議会運営や政策決定にも影響を及ぼすものと見られます。

24日投票が行われたドイツの連邦議会選挙は、開票の結果、全709議席のうち、メルケル首相率いる中道右派のキリスト教民主・社会同盟が246議席を獲得して第1党の座を確保し、中道左派の社会民主党が153議席で第2党になりましたが、これまで大連立を組んできたこれらの2大政党はいずれも大幅に議席を減らしました。

メルケル首相は4期目の政権の発足に向けて各党との連立交渉に臨む考えを示していますが、求心力の低下は免れず、意見の異なる複数の少数政党との交渉が難航することも予想されます。

これに対して、難民の受け入れに反対する新興の右派政党「ドイツのための選択肢」は94議席を獲得し、連邦議会に初めて議席を確保しただけでなく一気に第3党に躍進しました。「ドイツのための選択肢」について、メルケル首相や社会民主党のシュルツ党首はドイツの価値観と相いれない排他的な政党だとして有権者に支持しないよう訴えてきましたが、政府の難民政策や2大政党への国民の不満を背景に逆に躍進を許す形になりました。

「ドイツのための選択肢」が議会で大きな発言力を得たことで、今後のメルケル首相の議会運営や政策決定に一定の影響が及ぶのは、避けられないものと見られます。

ヨーロッパではことし、フランスやオランダでも相次いで国政選挙が行われ、いずれも難民や移民に厳しい対応を求める右派政党が国民の不満の受け皿となり、大きく支持を伸ばす結果となっています。

ドイツのための選択肢 足並みの乱れも

「ドイツのための選択肢」の幹部が記者会見を開き、モイテン共同党首は「メルケル首相は難民の受け入れに関する規制を設けないという過ちを犯した」と述べ、難民の受け入れ政策を自らの判断で推し進めたメルケル首相を厳しく批判し、連邦議会での論戦を徹底していく考えを示しました。

その一方で、これまで党の顔として活躍してきたペトリ共同党首は「かつては党として明確な目的があったが、今は無秩序な政党で、有権者が信頼できる政策を提示できない」と述べ、連邦議会の「ドイツのための選択肢」の会派には所属しない考えを表明しました。ペトリ共同党首は記者会見の途中で退席し、「ドイツのための選択肢」は、選挙で躍進した一方で、早くも党内での足並みの乱れが鮮明になっています。

右派政党台頭の背景

ドイツでは過去にナチスが政権を取ったことへの反省からほかのヨーロッパ諸国に比べて国民の間で右派政党が台頭することへの警戒心が強いと指摘されてきました。

しかし、ドイツでおととし以降に短期間に100万人以上の難民や移民が到着する中で、難民の受け入れ反対を全面に打ち出した「ドイツのための選択肢」が政府の難民政策に対する国民の不満の受け皿になる形で支持を伸ばしました。支持者の間では「難民ではなくもっとドイツ人のためにお金を使うべきだ」との不満があるほか治安の悪化の懸念もあります。支持者の中には一部に排外主義的な思考の人がいるものの、既存政党から支持を変えた人も多く、今回の選挙では、メルケル首相のキリスト教民主・社会同盟から100万人以上の支持者が流れたとの調査もあります。

また、経済格差への不満も背景にあると見られます。ヨーロッパ最大の経済国ドイツは、経済が堅調で失業率も低水準である一方、雇用制度改革によって低賃金の仕事が増えたことから、社会の格差が拡大したと指摘されています。

公共放送の調査では、今回の選挙で「ドイツのための選択肢」に投票した人の40%余りが「自分がほかの人たちに比べて社会的経済的に恵まれていない」と答えているということです。

メルケル首相の難民政策

2015年9月、メルケル首相は、ハンガリーで足止めされていたシリアなどからの難民を入国させる方針を発表しました。

メルケル首相は、「助けを求める人たちを保護するのは、当然のことだ」と述べています。人道主義に基づいたこの方針は当初、国内外から高く評価されましたが、メルケル首相にとって思わぬ事態を招きます。ドイツが入国を認めてくれると知った移民や難民が大挙してヨーロッパを目指すようになり、ドイツに到着した難民や移民の数は去年までの2年間で117万人に上ったのです。

メルケル首相が難民の受け入れを打ち出した背景には、ナチス・ドイツ時代にユダヤ人などを迫害し、大勢の難民を出した教訓から、憲法にあたる「基本法」で難民の保護を規定していることがあります。

ただ、これほど多くの難民を短期間に受け入れることは全くの想定外でドイツ各地で難民と住民の間のトラブルや難民の滞在施設への放火事件などが相次ぐなかでメルケル首相への批判が一気に高まります。メルケル首相はインタビューなどで「われわれはできる」とたびたび発言し、受け入れた難民のドイツ社会への統合を国民に訴えて事態の沈静化を図りました。

そのメルケル首相に大きな打撃となったのが2015年12月にドイツ西部のケルンで起きた事件です。大みそかに年越しを祝うためにケルン中心部に集まっていた複数の女性が難民らに乱暴される事件が発生したのです。それまで多くの人々がボランティアなどで難民の支援を行っていましたがこの事件をきっかけに難民に対する世論が厳しいものに変わります。

これをうけて去年行われた地方選挙では、メルケル首相のキリスト教民主同盟が相次いで敗北する一方、難民の受け入れ反対を掲げる新興政党の「ドイツのための選択肢」がいずれも躍進する結果となりました。

こうした中、メルケル首相は難民を保護する姿勢は維持しながらも、去年3月、トルコからギリシャに到着した難民や移民を送還する措置でトルコと合意したほか、難民認定されなかった人の強制送還を強化するなど難民の流入を抑制する政策に乗り出しています。その結果、ドイツに入国する難民などの数は減少し、ことし6月までの半年間で9万人にとどまっています。

メルケル首相は難民の受け入れ表明から1年余りが経った去年9月、「もし時間を戻せるなら政府としてもっと対応できるよう準備をしていただろう」と述べて、拙速な受け入れ表明が混乱を招いたことを率直に認める発言をしています。