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自分の葬儀を見る二人
ワイマール王国王都ではオルボア公国を警戒して国軍と騎士団が臨戦態勢の中、伯爵様とクリスティーナ様の国葬が始まっていた。
王都の人々が涙にくれる中、国王以下貴族達はそろって喪服にて参列している。
王妃と王太子は事情が判明するまでは、軟禁され取り調べが行われるらしい。
国王は臨時措置としてもし二人の容疑が晴れる前に、自分が亡くなった際には従兄弟に当たるミューラー公爵を、次の国王に指名するとすら宣言していた。
これには当のミューラー公爵も他の貴族も動揺しミューラー公爵ですら止めるように進言したが、王太子派の貴族にはオルボア公国との繋がりがある疑いが新たに浮上していて、後継者から国王自ら外した経緯がある。
第二王子の問題もあったがミューラー公爵は売国まではしてないことと、第二王子の件は国王が自ら事件の真相究明とオルボア公国との問題が片付いたら、責任を取り国王から退くと言った以上は反対意見は封殺された。
「なんで私まで、死んだことになってるんですの!」
「いや、空中艦で回収したらミューラー公爵が勘違いをしまして。意外に純情なんですね。ミューラー公爵って」
この日も建物の内装や引っ越しの続きをしていたんだけど、町の広場にて偵察機から送られてくる映像を、立体映像として流してみせてたんだ。
ただいつの間にか伯爵様だけでなくクリスティーナ様まで亡くなったことにされていて、王都の一番格式が高い教会にて伯爵様とクリスティーナ様の葬儀が行われてる様子を本人達と見てる。
流石にまだ子供のクリスティーナ様が自分の葬儀を、しかも国王以下みんなが涙にくれる様子で行われるのを、見るのはやはり複雑なんだろう。
「お嬢様は聖女だそうですよ」
「いやよ! 私は普通にお嫁さんになりたいの!」
厳粛な葬儀なんだけどオレ達からすると、真面目なコントでも見せられてるような気分だ。
伯爵様とクリスティーナ様と一緒に二人の葬儀を見るなんて。
しかも大司教とかいうお偉いさんが、クリスティーナ様を聖女認定しちゃうし。
「アレックス様が責任を取ってくださいますよ」
「えっ!? オレの責任なの!?」
「もちろんです。第一死んだことにされたお嬢様が、他に嫁に行くのは難しいです。アレックス様はお嬢様に生涯独身で居ろと?」
ただここでメイドのメアリーさんが、とんでもないことを言い出した。
責任はミューラー公爵でしょ?
オレは伯爵様を助けただけで。
「そう。アレックスは私に独身で居ろと……」
「分かりました。ちゃんとクリスティーナ様に釣り合う人を探してあげますから!」
「ではお嬢様が気に入った方を見つけられなかった場合は、責任を取って頂けるんですね?」
ちょっと! なんで急にそんな話になるの!
クリスティーナ様もそんなに悲しそうな顔をしなくても、まだ子供なんだからさ。
しかもメアリーさん。押しが強いよ?
「えーと、エル。大丈夫だよね?」
「大丈夫よ! ちゃんと正妻は立てるわ!」
「いや、その大丈夫じゃなくてさ」
「フフフ。なるようになりますよ」
困った時のエル頼みのはずなんだけど。
エルさんや、何故そんなにご機嫌な表情で曖昧な答えを?
「私は悪くない」
「大丈夫よ。一人や二人増えても生きていけるから」
そもそも昨日一緒だったのはケティだと思ったけど、ケティからは目を逸らされてしまうし、ジュリアからは身も蓋もないお言葉を頂くし。
いや中身はアラサーの大人なんだよ?
子供と結婚なんて考えられる訳ないじゃん。
確かにオレは生体強化の影響で年は取らないけどさ。
「陛下も初めからこのくらい、真剣に政治を見てくれていたらのう」
最後の頼みとして伯爵様を見たら、伯爵様は伯爵様で自分の葬儀を呆れたように見てた。
国王が悪い人ではないのがはっきりしたが故に、初めからこのくらい真剣に政治をしたら、こんな事態にはならなかったのは確かだろう。
伯爵様はまたもや大司教とかいうお偉いさんが、英霊に認定してる。
「ほとぼりが冷めたら、ワシとクリスティーナの墓参りでも行こうかの」
ただ周りで見ている着いて来た家臣や兵士達を気遣ってか、自分の墓参りに行こうかと言い出すと、周りは爆笑していたけど。
オルボア公国のことも気になるし、あの第二王子の変化も気になるし今後も油断は出来ないんだけどね。
今は無事に一件落着したことを喜ぶべきかもしれないな。
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