2017-09-23 上げたのは1日後
■[報道][笑えない]麻生暴言でわかった「ジコチュー」日本人のリアル

先日、『新感染 ファイナル・エクスプレス(原題:釜山行き)』に対する産経系メディアのレビュー記事を批判した。
中宮崇氏の『新感染 ファイナル・エクスプレス』評が、あまりにもデタラメすぎる - 法華狼の日記
映画で描かれた利己的な登場人物を、あたかも過去の日本では存在しなかったかのように主張していたからだ。
はてなブックマーク - ゾンビ映画『新感染』で分かった「ジコチュー」韓国人のリアル
もちろん日本映画も過去から利己的な登場人物を描きつづけたのはエントリで批判したとおり。
ちなみに件の映画はさまざまなモチーフのひとつとして、北朝鮮軍が南下した朝鮮戦争を組みこんでいる。
「新感染」監督が来日、今敏とジョージ・A・ロメロの影響語る - 映画ナタリー
ヨン・サンホは「現代の戦争はロケットがあるように北から南へという一方的な流れのものではないので、そういった批評に完全に同意することはできません。しかし撮影中、朝鮮戦争の際に存在した北から南へ逃げる“避難列車”が頭の片隅にモチーフとしてあったことは事実です」と答えた。
あくまで映画はゾンビの脅威でパニックが起きるというフィクションだが、それでも隣人が怪物化していく社会で分断にあらがおうとしていた。
一方で日本には、北朝鮮からの難民に対して、射殺することを主張した政治家がいる。それも無名な野党議員などではなく、麻生太郎副総理だ。
麻生副総理「警察か防衛出動か射殺か」 北朝鮮難民対策:朝日新聞デジタル
朝鮮半島から大量の難民が日本に押し寄せる可能性に触れたうえで、「武装難民かもしれない。警察で対応するのか。自衛隊、防衛出動か。射殺ですか。真剣に考えなければならない」と語った。
これでロヒンギャへの抑圧をつづけるミャンマーを批判できるのか*1。それとも内心では同調しているのか。
近年の日本政府は北朝鮮に対し、制裁する方針をつづけている。先日からは「異次元の圧力」を表明したり、諸外国へ断交を求めたりもした。
河野外相、北朝鮮との断交訴え 講演で制裁の抜け穴非難:朝日新聞デジタル
国連総会のため訪米中の河野太郎外相は21日夕(日本時間22日午前)、米コロンビア大で講演し、核・ミサイル開発を強行する北朝鮮の脅威を強調。北朝鮮と国交のある160以上の国々は断交すべきだと訴えた。
国際機関の事業計画にもとづいて人道支援をおこなおうとした韓国に対して、日本政府側からの批判も表明されたりした。
北朝鮮への人道支援を発表した韓国、国内外から疑問の声:朝日新聞デジタル
人道支援の内訳は、国連世界食糧計画(WFP)の栄養強化事業450万ドルと国連児童基金(ユニセフ)のワクチン・医療品支援事業350万ドル。いずれも妊婦や児童らが対象。
一方、菅義偉官房長官は21日の記者会見で、「国際社会全体として、北朝鮮に対する圧力を強化する必要がある中で、圧力を損ないかねない行動は避ける必要がある」と述べ、韓国政府の対応を問題視した。
しかし外国との関係が完全に断たれて、人道支援もおこなわれないとすれば、現体制下で抑圧された人々は難民にでもなるしかない。それで難民が大規模に発生すると武力をもって排除したいというなら、とりあえず現体制が維持される他ないはずだ。
今の日本政府は、外国への敵意を煽って国家間の分断を求めて、自国への忠誠心を集めさせている。同時に本音では外国が崩壊しないことを期待し、軟着陸の努力をしている外国を建前で非難しつつ実態として依存している。そのような甘えが見てとれる。
反人道的な国家体制と北朝鮮を批判するならば、そこから逃れてきた難民に同情して大規模に受けいれるという表明くらいできないのか。