安倍首相:衆院解散を表明、消費税使途変更・北朝鮮対応で信を問う

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Japanese Prime Minister Shinzo Abe speaks to journalists upon his arrival at the prime minister's official residence in Tokyo, Japan, 15 September 2017.

FRANCK ROBICHON/EPA-EFE
  • 人づくり革命に2兆円投入、与党過半数が勝敗ライン
  • 冒頭解散に野党反発、新党結成宣言の小池都知事も疑問符

安倍晋三首相は25日午後の記者会見で、臨時国会召集日の28日に衆院を解散する意向を表明した。総選挙は10月10日公示、22日投開票となる見通し。

  安倍首相は社会保障制度を全世代型へと大きく転換し、幼児教育や所得の低い世帯の子どもを対象にした高等教育の無償化など「人づくり革命」を進める決意を表明。2019年10月に予定されている消費税率10%への引き上げの増収分の使途を財源に2兆円を投入する方針を示した。これに伴い、20年度の基礎的財政収支(PB)黒字化目標の達成は困難との見方を示した。

  安倍首相は消費税の使途変更は「約束を変更し、国民生活に関わる重い決断だ」と述べ、「速やかに国民の信を問わねばならない、そう決心をした」と解散を判断した理由を説明した。緊迫化する北朝鮮情勢への政府の対応についても国民に判断を仰ぐ考えも示した。今回の解散を「国難突破解散」と命名した。

  国会召集日の冒頭解散は1996年9月以来、21年ぶり。選挙では消費増税分の使途見直しなどを含めた安倍政権の経済政策、憲法改正、核・ミサイル開発を進める北朝鮮への対応などが争点になる。

  衆院は9月20日現在、定数475議席のうち288を自民党の会派が占め、連立を組む公明党の35と合わせて323となり、憲法改正発議に必要な3分の2以上の勢力を確保している。次の衆院選では定数が10減り465議席となる。安倍首相は勝敗ラインとして自民、公明の与党で過半数の233と述べた。

  共同通信が24日報道した全国電話世論調査によると、比例代表の現時点での投票先は自民党が27.0%で、民進党8.0%、小池都知事の側近らが結成する新党は6.2%だった。ただ、「まだ決めていない」との回答が42.2%あったという。

希望の党

  民進党などは森友学園や加計学園の問題について審議するため6月から臨時国会の召集を求めていた。首相の所信表明演説と質疑なしの冒頭解散に野党側は反発している。

  民進党の前原誠司代表は21日の記者会見で、「ようやく国会を開くと思えば議論もせずに冒頭解散だ」と不快感を示し、改造を含む新内閣発足後に国会質疑のないまま行う解散は「戦後初の暴挙」と批判。共産党の小池晃書記局長は24日、NHKの番組で「疑惑隠しの冒頭解散」と述べた。

  森友、加計問題について安倍首相は会見で、国会の閉会中審査に出席するなど「丁寧な説明を積み重ねてきた」との認識を示した。衆院選は自身の信任を問うことにもなるとも語り、「大変厳しい選挙になると予想される」とした。

  東京都の小池百合子知事は25日午後、緊急に記者会見し、新党「希望の党」を結成し、自ら代表に就任することを明らかにした。全国で候補者を擁立する方針。今回の解散は大義がなく、北朝鮮情勢が緊迫化する中だけにタイミングとして「かなりクエスチョンマークだ」と語った。

  7月の都議選で「都民ファーストの会」を率いて自民党を惨敗に追い込んだ小池氏は衆院選の台風の目となる可能性がある。

  都議選で小池氏側と協力関係にあった公明党の山口那津男代表は同日、記者団に「国政は自公でしっかり連携をする」と強調。小池氏については「都知事として職務を残す以上はしっかりそれに専念してほしい」と注文を付けた。安倍首相は記者会見で、小池都知事とは20年東京五輪成功という共通目標を持っており、衆院選は「フェアに戦いたい」と語った。

  

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日本株は年初来高値、北朝鮮警戒の反動と2兆円対策期待-内外需上げ

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  • 安倍首相、経済対策策定を諮問会議で指示と読売新聞
  • 為替は1ドル=112円台前半、独選挙結果もユーロ動き通じ影響

25日の東京株式相場は反発し、主要株価指数は年初来高値を更新した。北朝鮮問題に対する過度な警戒感が和らいだほか、国内経済対策への期待感も後押しした。自動車やゴム製品など輸出株、情報・通信や医薬品株など内外需業種が幅広く高い。

  TOPIXの終値は前週末比8.21ポイント(0.5%)高の1672.82、日経平均株価は101円13銭(0.5%)高の2万0397円58銭。TOPIXは2015年8月17日、日経平均は同18日以来、2年1カ月ぶりの高値水準。

  ニッセイアセットマネジメントの久保功株式ストラテジストは、「きょうの日本株上昇は先週末のリスクオフの反動」とし、北朝鮮外相の発言をきっかけにした円高や株安は「行き過ぎだった」との認識を示した。日本の政治情勢については、「野党の状況を考えると衆院選は与党が勝利するとみている。選挙前には大型経済対策の話が出てきやすく、相場を支える」と予測した。

東証前
東証前
Photographer: Tomohiro Ohsumi/Bloomberg

  きょうのドル・円はおおむね1ドル=112円台前半と、22日の日本株終値時点111円96銭に比べややドル高・円安で取引された。北朝鮮の超強硬の対応は太平洋上の水爆実験を意味する可能性がある、との22日の北朝鮮外相発言をきっかけにしたリスク回避の動きは前週のうちに収束。また、24日に投開票されたドイツ連邦議会選挙で与党の得票率が想定より低く、ドルが対ユーロで強含んだことも円安の動きにつながった。

  このほか、安倍晋三首相が25日開催の経済財政諮問会議で、2兆円規模の新たな経済対策を年内に策定するよう関係閣僚に指示する方針と読売新聞が同日に報道。日本アジア証券の清水三津雄エクイティ・ストラテジストは、経済対策が実際に策定されるようなら「景気の足腰を強くする」とし、国内企業業績への好影響に期待感を示した。安倍首相は25日午後6時から会見し、28日召集の臨時国会で衆院を解散する意向を表明する。複数の与党関係者によると、総選挙は10月22日投開票となる見通し。

  週明けの日本株は為替の落ち着きや政策期待を背景に、日経平均は朝方に一時157円高の2万0454円まで上昇。三菱UFJモルガン・スタンレー証券の鮎貝正弘シニア投資ストラテジストは、「9月末を控えた特殊な需給要因がプラスに働いた」ともみていた。26日は3・9月決算銘柄の権利付き最終売買日で、配当取りの買いや国内機関投資家からは配当分の再投資に絡む先物買いが入りやすい状況にある。

  ただし、朝方の買い一巡後は上値の重い展開だった。東海東京調査センターの平川昇二チーフグローバルストラテジストは、「北朝鮮がいつどんな行動に出るか分からず、地政学的リスクが全くなくなるとは考えづらい」と言う。トランプ米大統領は24日、北朝鮮を新たに米国への入国禁止措置の対象とする大統領令に署名した。

  一方、小池百合子東京都知事は25日午後に会見し、新党「希望の党」を立ち上げる方針を表明。自身が代表に就く。TBSなどが小池氏の会見を中継した。証券ジャパンの大谷正之調査情報部長は、「為替はほとんど動いておらず、今の段階では消化難」と話していた。

  東証1部33業種はゴム製品や情報・通信、医薬品、ガラス・土石製品、金属製品、サービス、卸売など29業種が上昇。海運、保険、鉱業、銀行の4業種は下落。通信はソフトバンクグループの米子会社の早期統合観測が広がり、業界再編期待もプラスに寄与した。

  売買代金上位では東海東京調査センターが投資判断を上げた三菱自動車、みずほ証券が判断を上げた日本精工が高い。資生堂、コーセーなど化粧品銘柄は過度なインバウンド消費減退への懸念が和らぎ反発。中国国家旅遊局は中国から日本への団体旅行を制限する文書を出したことはないと一部日本メディアの報道内容を否定した、と中国国営ラジオの国際在線が報じた。半面、日本郵政やパナソニック、村田製作所、ミネベアミツミ、MonotaROは安い。

  • 東証1部の売買高は15億2992万株、売買代金は2兆1453億円
  • 値上がり銘柄数は1499、値下がりは413
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