独総選挙、メルケル首相4期目へ 国家主義政党が議席獲得
ドイツで24日、総選挙が実施され、アンゲラ・メルケル首相率いるキリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)が第1党となるのが確実な情勢となった。これによりメルケル首相は政権4期目に入る見通し。一方、右翼国家主義政党「ドイツのための選択肢」(AfD)が、第2次世界大戦後の連邦議会で初めて議席を獲得した。
保守派のCDU・CSUは第1党となったものの、ほぼ70年来で最悪の結果だった。歴史的な惨敗となった社会民主党(SPD)は、CDU・CSUとの連立を離脱し、野党に転じると表明した。
AfDが第3党になる見通しを受け、ベルリンにある党本部前では、右翼でイスラム教徒への差別的な政策を主張する同党への抗議デモが行われた。デモ参加者の一部は、「難民は歓迎だ」と書かれたプラカードを掲げていた。フランクフルトやケルンでも、AfDへの抗議デモが開かれた。
メルケル首相にとって選挙結果が意味するもの
メルケル首相の連立与党、キリスト教民主同盟(CDU)とバイエルン・キリスト教社会同盟(CSU)にとって今回の選挙は、第2次世界大戦後にドイツで初めて選挙が行われた1949年以来、最悪の結果となった。
2005年から政権の座にあるメルケル首相は支持者集会で、「より良い結果」を期待していたと述べ、AfDに投票した人々の「懸念や悩み、不安」に耳を傾け、支持を取り戻せるようにすると語った。
メルケル首相は経済や安全保障問題への対応に加えて、AfDが支持を伸ばした背景にある移民流入の根本的な原因にも取り組むと表明した。
「きょう我々は政権の負託を受けたと言える。もちろん協力政党と話し合いながら、この責任を粛々と担っていく」
BBCのジェニー・ヒル・ベルリン特派員は、選挙結果はメルケル氏にとって散々なものだったと語った。正式な入国資格のない90万人近くの移民を受け入れたメルケル氏は、その罰を受けた形だと記者は指摘した。
連立の選択肢
SPDを率いるマルティン・シュルツ氏は、連立相手のCDU・CSUと同様に1949年以来最悪だった選挙結果について、メルケル氏との「大連立」の終わりを意味すると語った。シュルツ氏は支持者集会で「我々は目標に達しなかった」と認め、「ドイツの社会民主主義勢力にとって、苦々しく困難な日になった」と述べた。
SPDの連立離脱を受け、メルケル氏に残された選択肢は限られており、新たな連立合意がまとまるまで何カ月もかかる可能性もある。
連邦議会には、1950年代以降で初めて6政党がひしめきあう状態になる見通しとなっている。
最も可能性が高い連立は、政党のイメージカラーがジャマイカの国旗と同じなため「ジャマイカ連立」と呼ばれる。イメージカラーが黒のCDU・CSUと、イメージカラーが黄色でビジネス寄りの自由民主党(FDP)と、緑の党の組み合わせだ。FDPは今回4年ぶりに議席を回復した。
しかし連立の先行きは困難が予想される。緑の党は、石炭火力発電所20カ所を段階的に廃止することを目指しているが、FDPは反対している。ドイツの公共放送ZDFは、これらの政党による連立が政権維持に必要な議席を確保する唯一の組み合わせだと報じた。
連邦議会に議席を得た全ての政党がAfDとの協力を否定している。
AfDの今後
AfDは、メルケル氏が推し進めてきた移民・難民政策に対する有権者の反発を追い風にしてきた。移民・難民の多くは戦争を逃れて来た人々で、シリアなどイスラム教徒が多数を占める国からやって来た。
AfDは強硬な反移民政策を掲げており、特に反イスラム色が濃い。ミナレット(モスクの尖塔)の禁止を呼びかけ、イスラム教はドイツ文化と相容れないと主張する。さらに、数名の候補は極右的な発言をしたとされている。
知名度の高いAfDの政治家フラウケ・ペトリー氏は選挙結果を受けて、これまで例を見ないような「政治的激震」をドイツは経験したと、ツイッターでコメントした。AfDへの支持は事前の世論調査が示していたよりも高かった。
一方、AfD指導部の一人、ベアトリクス・フォン・シュトルヒ氏は、選挙結果はドイツの政治制度を変革し、選挙前の連邦議会で意見が反映されていなかった人々が「声を得る」と述べた。「我々は移民について議論を始める。イスラムについて議論を始める。連邦のより強い団結について議論を始める」。
(英語記事 Germany election: Merkel wins fourth term, nationalists rise)