「まごチャンネル」のチカクさんに聞く、「最初のエンジニアどうするの?」問題は、どうやって克服したんですか?

飲食店向け予約/顧客台帳サービスを手がけるトレタのCTOの増井雄一郎さんが「今、気になる人」に直撃するこのシリーズ企画。今回は、スマホで撮影した動画と写真が、実家のテレビに映し出せるというコンセプトで、子育て世代に人気の「まごチャンネル」の開発・販売を手掛けるベンチャー企業のチカクにお邪魔しました。

左から、増井さん、梶原さん、佐藤さん

アップルの日本法人出身で開発経験がない同社代表の梶原健司さんは、どうやってエンジニアと出会い、プロダクトの量産を成功させることができたのでしょうか。テクノロジー・スタートアップの創業期に必ず俎上(そじょう)に上がる「最初のエンジニアどうするの?」問題について、梶原さんと共同創業者の佐藤未知(みち)さんに話を聞きました。

最初のエンジニアをゲットしたのは、お酒の席

増井 スタートアップのCTOをしていると、ビジネス畑の人から「すごくいいアイデアがあるので、ぜひアプリをリリースしたい」っていう相談をよく受けるんです。でも、うちの中村(トレタ代表・中村仁さん)のように、ビジネスのアイデアを思いついた当人が必ずしも開発できるとは限りません。

梶原 うちもそうでした。

増井 そこで難しいのは、1人目のエンジニアを見つけることだと思うんです。もちろん、外注するという手もありますが、外部のエンジニアがプロダクトや意義を完全に理解するのは難しいので、それも簡単ではありません。なので、今日は梶原さんが「まごチャンネル」をビジネスにしようと思った後、最初のエンジニアをどうやって見つけたのかを聞いてみたくて来ちゃいました。

株式会社チカク代表取締役社長 梶原健司さん

梶原 いまも苦労していますけど、最初は大変でしたね。

増井 僕が初めて梶原さんとお会いしたのは2014年の夏でしたよね。あの時はどんな状態だったんでしょうか?

梶原 クラウドファンディングで発表したのが2015年9月のことでしたから、その1年前ですよね……。確かその頃は、協力を申し出てくれたボランティアエンジニアの方々と、AndroidスマホやHDMI接続できるスティックPCを使って実験していた時期ですね。

増井 ぜひ、それまでの動きについて聞かせてください。

梶原 はい。そもそも「まごチャンネル」のアイデアは、実家に持ち込んだMacとテレビをつないで、Dropboxに保存した写真や動画を表示できるようにしたことがきっかけで生まれました。最初から製品化を考えていたわけではないのですが、喜んで使ってくれている親の姿を見て、ほかの家のおじいちゃん・おばあちゃんはどんな反応を示すのか気になったので、Facebookで話を聞かせてくれる方を募ってみたんですよ。そうしたら、東京と大阪で15組ほど反応があったので、さっそくMacを持ってインタビューしに行きました。

増井 なるほど。

梶原 インタビューでは「お孫さんの映像がリアルタイムにテレビで見られたらどうですか?」「もし簡単に見られる製品があったら使ってみたいですか?」と質問をしたら、みなさん「そりゃまぁ、見られたらいいけどねぇ」みたいな感じだったんですが、あらかじめ子ども側の家族から入手しておいたお孫さんの写真や動画をMac経由でテレビに表示させてみたら、それまでの感じとは一変。「うわー!」って反応で。

すぐに「いくらですか?」「いつ買えるんですか?」って、みなさん前のめりで来られた。それで、これはいけるんじゃないかと思ったのが、2013年の夏のことでした。プロトタイプづくりに協力してくれるエンジニアを探し始めたのは、その後ですね。

増井 どうやってエンジニアを探したのですか?

梶原 もっぱら人づての紹介です。僕自身はまったく使えないんですけど、当時はラズパイ(Raspberry Pi/マイコンボードの一種)やアルドゥイーノ(Arduino/同左)が、話題になっていた時期で、常にカバンの中にその二つを入れていておいて「俺、ハードウェアをやろうと思うんだよね……」って、見せながらよく話しかけていました。

梶原さんが持ち歩いていたRaspberry Piのイメージ画像

佐藤 あっ! それ、全然通電したことないヤツでしょ?(笑)

梶原 もちろん! でも、その二つを見せつつ話をするだけで「この人、本気なのかな?」みたいな雰囲気になる。ドヤ感が出るんですよ。

増井 1万円で買えるドヤ感! いいですね!

梶原 それでエンジニアが集まる飲み会に出かけては、とりあえず話しかけてみて「へー、おもしろそうですね」っていう反応が返ってきたら「何か一緒にやりません?」って誘ってみる。そんなことを繰り返していました。

共同創業者の佐藤未知さん 博士(工学)

佐藤 そんなことやってたんだー。初めて聞いた(笑)。

梶原 そうなの(笑)。まずはそんな感じで、Androidのアプリを作ってくれるエンジニアを集めつつ、並行して試用モニターになってくれる家族も探しました。こちらはすぐに協力者が見つかって、子どもと孫がアメリカのダラス在住という都内在住のご夫婦に、プロトタイプ開発で協力してもらえることになりました。

増井 ボランティアで協力してくれたエンジニアは、以前からお知り合いだったんですか?

梶原 いえ、一度だけ飲み会で会っただけでしたね。

増井 「限りなく知らない知り合い」ですね。

梶原 そうなんです。僕の前職はアップルだったんですが、社外のエンジニアとコネクションがなかったので、知り合いのツテで紹介してもらっては、波長が合いそうな人にひたすらお願いし続けるという。そうやってようやく最初の協力者を見つけたんです。

増井 エンジニアをお酒でゲットしたってことですね。

梶原 言われてみればそうですね。当時はほかに社員もいなかったので、フルタイムで動けるのは自分だけ。初期のプロトタイプはそうやって、人間関係を作るところから始めなければなりませんでした

プロダクトの説明以上に大切な「旗」の話

増井 最初のエンジニアにプロトタイプを作ってもらうにあたって、どうやって自分の意図を伝えました?

梶原 LINEでテキストをやり取りしたり、当時彼が勤めていたオフィスの近くでランチしたりしながら、まずこちらが欲しいものを伝えて、とりあえず作ってもらうという感じでしたね。その後、気になるところを何度も手直ししてもらいながら開発を進めました。

増井 「孫の写真や動画を実家に届ける」というプロダクトの性質上、イメージの共有はしやすいでしょうから、テキストや口頭で十分だったのかもしれませんね。プロトタイプを開発してみていかがでしたか?

梶原 2013年の9月にプロトタイプの開発に着手して、写真の共有ができるようになったのが11月。「結構時間がかかるんだな」というのが当時の印象でしたね。それに、祖父母のご夫婦から、ちょくちょく「動きません」「調子が変なんです」という連絡が入るような状態でしたから、最初の2~3カ月間は毎日のようにお宅にお邪魔していました。

増井 一番大変だったことは何ですか?

梶原 最終的に、ボランティアと外注を合わせて4~5人のエンジニアに協力してもらえたのですが、みなさん本業をお持ちの方ばかり。仕事が忙しくなると、開発が1カ月間止まってしまうなんてこともざらで、それが一番大変でした。

増井 ボランティアが主体だと、コントロールが難しそうですね。

梶原 そうでしたね。ちょうどそんな頃、シリコンバレーでDrivemode(ドライブモード)というスタートアップを経営している古賀洋吉さんが、2014年12月に日本に来られるというので、相談に乗ってもらいました。

増井 そこではどんなお話を?

梶原 「事業化を目指したいが、組織も整わないし開発のスピードも遅い。どうしたらいいでしょうか」と尋ねたら、「自分以外、全員ボランティアという状況はよくないし、スピード感がないのは当たり前。カジケン(※編注 梶原さん)と同じぐらいの熱量でフルコミットできるエンジニアを見つけなきゃ」と諭されました。同時に「エンジニアの口説き方も変えるべき」とも指摘されましたね。

増井 どんなふうに変えるべきだと?

梶原 古賀さんに「プロダクトの説明もいいけれど、その前に実現したい世界観を語るべきだ」と言われて、ハッとしたんです。彼はそれを「旗」と呼んでいたんですが、「まず自分の旗を掲げて、その旗を一緒に掲げたいと思える人を、事業サイドと投資家サイドで見つけるべきなんだよ」と。その言葉で目からウロコが落ちた気がしました。確かに僕はそれまで、プロダクトやサービスの解説しかしていなかったんです。

増井 なるほど。では、カジケンさんの掲げたい「旗」はどんな旗なんですか?

梶原 思いは社名に込めました。チカクという社名は、距離や時間を超えて大切な人を「近く」するという意味と、存在を身近で自然に「知覚」させたいという二つの意味を込めたものです。もう少し具体的にいうと、物理的な制約を超え人と人とを近づけ、世代間のコミュニケーションを円滑にすること。そして、世界中の親孝行の総量をテクノロジーの力で増やすというのが、僕らの掲げる「旗」。ここまで具体的に言語化したのはつい最近のことですが、創業以来この思いは変わっていません。

決意から3日後、未来の共同創業者と出会う

増井 佐藤さんはどういうツテでカジケンさんと知り合ったのでしょう?

佐藤 先ほどの話にあったボランティアエンジニアの中に、友だちが1人いたんです。当時は博士過程を終えて卒業を控えており、ステルスでやっているメンバー10人以下のヤバそうなスタートアップを探していたんですが、「これ」という会社には出会えずにいたんです。

増井 ステルスですもんね。すぐに見つかったらステルスじゃないですからね。

佐藤 そうなんですよ。で、業界事情に通じている友だちに聞いてみたら「おもしろい人がいるよ」と。それで新宿のカフェで引き合わせてもらったら、何だかすごく怪しいおじさんがいた(笑)。それがカジケンさんでした。

梶原 僕にとって幸運だったのは「旗」の話ができたことです。(佐藤)未知くんに会ったのが、古賀さんとお会いした3日後のことでしたから。

増井 おぉ! 古賀さんと会った後じゃなかったらと思うと、ちょっとヒヤッとしますね(笑)。

梶原 そうですよね! 未知くんはVR系の博士号を持っていて、「まごチャンネル」も、テレイグジスタンス(Telexistence/遠隔操作感)や、テレプレゼンス(Telepresence/遠隔地にいながら、現場にいるかのような臨場感を提供する技術の総称)の一形態だと考えていたので、話していてもすぐに気持ちが通じました。それだけでなく、以前Youtubeで映像を見て衝撃を受けた、通称“遠隔キッス”という研究に未知くんが関わっていたり、大学でVRの隣接研究をしている僕の高校時代の友人と知り合いだったりして、ご縁を感じないわけにはいかなかったというのもあります。

まごチャンネルのパッケージと本体。パッケージロゴの「まご」部分には、ひらがなでお孫さんの名前が入れられる

増井 佐藤さんはカジケンさんと会って、どんな印象でした?

佐藤 実は、ほかにも“すごく遠いところまでいけそう”な会社はありました。でもカジケンさんの話を聞いて、自分が実現したい世界観に一番近いと思えたんです。これまでコミュニケーションの課題は、距離や速度の問題に留まっているけれど、やがて質的に大きく変わると考えていた自分にとって、「まごチャンネル」のアイデアはとても刺激的でしたね。

増井 具体的には、どんなところに反応したんですか?

佐藤 そもそもカジケンさんは、アップル出身でビジネスの世界にいた人でしょう? 同じ分野の研究者同士なら「空気感や文脈を伝えるコミュニケーションに関心がある」と言われても不思議じゃないんですけど、ビジネス畑の人からそんな話が聞けるとは思わなかったので、すごく驚きましたし、ヤバいなって思いましたね。

梶原 僕にとっても深いレベルで話を理解してくれたのは、未知くんが初めてだったと思います。それ以前は、熱心に話をしてもポカンとされるばかりでしたから。

増井 佐藤さんにお伺いしますけど、学生の頃から「一緒に何かやろうよ」と声かけられる機会が多かったんじゃないですか?

佐藤 VR系の研究をしていると、ソフトや外装、電気、メカにも関わるので、相談される機会は少なくなかったです。基本的にそういう依頼は断ることにしていたのですが、たまに手伝うこともあって。ポイントは、構想だけじゃないってことでしたね。どんなに拙くても、目に見える形に起こしているか。つまり、“ダーティプロトタイピング”をしているかどうかで決めていました。

増井 雑なアイデアだけでは、なかなか手伝う気になりませんよね。

佐藤 そう思います。アイデアが頭の中にあるだけでは、価値は顕現していません。それを何とかしたくて苦労して手を動かしている人の話なら少しは聞こうかという気になるんですが、ただ「やりたい」だけだと、なかなか一緒にやろうという気は起こりませんでしたね。

梶原 僕はエンジニアじゃないけど、MacとテレビとDropboxで似たような体験を作れました。ペーパープロトタイプでも紙芝居でも、何かしらできることはあるんです。

増井 手間を惜しんではいけませんよね。

梶原 そうですね。もし僕がプロダクト作りについて悩みを相談されることがあったら、形はどうあれ、プロトタイプを作ることを勧めるでしょうね。もちろんそれは、人を説得したり説明したりするためでもあるんですが、自分に確信を持つための手段でもあると思うからです。確信が腹に落ちていれば、言葉に説得力が出る。もしその程度の工夫ができないなら、サービス作りはやめたほうがいいと思います。だって、起業したらもっといろいろな工夫が必要になりますからね。

増井 そこまでたどり着けないのであれば、その先に進むのはかなり難しいというのはよくわかります。

梶原 結局、お金や時間、リソースがないからできないって言っていたらキリがありません。だから、プロトタイプ作りは最初の試金石であり、1発目のテストみたいな感じだと思いますね。

増井 同感です。

「開発できない分、お客さんの代表にならないと」

増井 お話を聞く限り、かなりたくさんの人に会われていますよね。1年間でどれくらいの人に会いました?

梶原 当時は最低でも週に2回は人と会って食事をしたり、飲みに行ったりしていましたから、エンジニアだけでも年間で100200人は会っていたと思います。そのうち実際に一緒にやりたいと思ってもらえたのは4~5人だけだったので、ヒット率は数%ほど。つまりフラれまくったってことですね。

増井 ちなみに、お会いした人には毎回口頭で説明していたんですか? 紙の資料やスライドを作りましたか?

梶原 全然作らなかったですね。

佐藤 僕も紙の資料は見たことがなくて、「同じ説明を何百回もしているのに、面倒じゃないのかな?」って不思議に思っていました。でも、カジケンさんはどちらかというと、“ライブ感”を大事にするタイプなんですよね。

梶原 そうだね。

増井 確かに紙の資料を用意しておくと説明は楽なんですけど、相手に与えるイメージが固定化してしまう恐れもあるんですよね。ライブで話すメリットって、その場で思いついて話したことが意外と的を射ていたり、次のプレゼンに生かせたりすることじゃないですか。

梶原 それも確かにあります。相手の反応を見ながら話すことで、次に生かそうと思えるアイデアや言葉が湧いてくることもありますから。

増井 紙の資料もそんな感じでアップデートすればいいんですが、案外やりませんからね。

梶原 そうなんです。あとは紙の資料に落とすと、どうしても「陳腐に見えてしまう」という悩みもありました。

増井 そうなってしまうのは、「まごチャンネル」の体験がシンプルでエモーショナルなプロダクトだからかもしれませんね。

梶原 そうです。いまならユーザーが使っている動画を見せれば一発ですが、当時はイメージを的確に伝えるのは簡単ではありませんでした。資料作りのために、どこかで素材写真を探してきてはめてみると、すごく嘘っぽい(笑)。それもあって紙の資料はあまり作らなかったんですよね。その代わり、ユーザーアンケートやインタビューは散々やりました。

佐藤 その当時のヒアリングメモとかを見ると、本当によくやっていたなと思いますよ。

梶原 僕は手を動かして作れない分、自分がお客さんの代表にならないといけないので、そこは一所懸命やったつもりです。

「時間が巻き戻せたらもっとブログを書くと思う」

増井 もし過去に戻れるとしたら、やり直したいことってありますか?

梶原 うーん、どうするかな……。うちにはまだ内部にデザイナーがいないのですが、仕事の精度とスピードを上げるために、エンジニアとデザイナーをもっと早い段階で採用すると思います。まさに現在、この2つの職種で人材を募集中なんですよ。

これは古賀さんに言われたことでもあるんですけど、「一緒に仕事がしたいと思ってもらえることはもちろん大事なんだけれど、最悪自分がいなくなってもこの『旗』を支えたいと思ってくれる人が見つかるかどうかのほうが大事だ」と。そういう意味では、もっとブログを書いて情報発信すると思います。

増井 ブログって書き手の価値観がにじみ出ますからね。

梶原 ええ。いまうちで働いてくれている社員の中にも、僕のブログの読者だった人が2人います。ある程度カルチャーフィットが済んだ状態で来てもらえるので、入社後のギャップが少ないんですよ。

増井 実際に人と会える量には上限がありますが、ブログならいくらでも読んでもらえますからね。

梶原 はい。ある程度理解していただいている状態で話せるので、採用につながりやすくなるというのはスタートアップにとってすごく大きいと思います。それだけでなく、いろいろなセレンディピティ(予想外の発見)が起きやすくなるはずなので、もし時間を巻き戻せるとしたらブログはもっと熱心に書くでしょうね。あとは、少しぐらいプログラミングが書けたほうがよかったのかも、と思うことはあります。

増井 佐藤さんはどう思います?

佐藤 カジケンさんがもしプログラミングを書けたら、開発についての考え方を共有しやすくなったでしょうね。でも、この人の強みはビジネス領域にあるわけですから、無理して覚える必要はなかったと思いますよ。それに、カジケンさんは言葉で体験をイメージさせる能力がめちゃくちゃ高い。それは普通の人にはなかなかない能力だな、と。

増井 要するに、スタートアップには体験を語れる人と、体験からプロダクトを作れる人の2人が必要だということなのかもしれませんね。

佐藤 ええ。大きくイメージがずれてないところまで想起させてくれるのであれば、必ずしもコードが書けなくても問題ないと思います。

「売上はすべてを癒やす」その真意とは?

増井 変なことを聞くようですが、どんなことがあったらこの事業から撤退しようと思います

外装デザインが固まるまで、さまざまな形状が検討された

梶原 もし喜んでくれるお客さんがいないのであれば、やめるでしょうね。プロトタイプを作っていた頃、最初のエンジニアとよく試用モニターのご自宅を訪ねました。実際に喜んでいる人の顔を見るのは、作り手のモチベーションを上げる効果があります。逆に言えば、できるだけ早いタイミングで喜んでくれる人を見つけられるかどうかが、事業継続の分水嶺になるといえるかもしれません。

増井 ちょうど昨日、ある友人と「最終的にスタートアップを救うのは売上だ」という話をしましたよ。

梶原 「売上げはすべてを癒やす」っていいますからね。

増井 そうなんです。でもあれって結局、お金を払ってくれるユーザーがいるかということが大切で、それが1円でも1億円でも大した問題じゃないんですよね。「売上はすべてを癒やす」というのは、ユーザーが喜んでお金を払ってくれる環境を作れていれば、結局すべてを癒やすことにつながるって意味なんですよ。

梶原 本当にその通りだと思います。僕もプロトタイプを作り始めてすぐにやったのは、お客さまからお金をいただくことでした。プロトタイプでしたが「毎月500円でも1,000円でもいいのでください」と、勇気を出して言ったら、みなさん快くお金を払ってくださいました。もし、それがなかったら「自分が思ったほどの意味はないのかも」と思って諦めたかもしれません。でもそうじゃなかった。だからこそ、諦めずに続けてこられたんだと思います。

佐藤 僕らは文字通り「お客さんの笑顔のために」がんばっているわけで、それがなかったらスタートアップなんてキツすぎて続けられませんよ。お客さんが喜んでくれるのがサービスを続ける絶対条件だというのは、確かにそうです。

増井 今回のインタビューで、プロダクト開発を成功させるためには世界観を示す「旗」を掲げ、人と接する機会を増やすことで成功の確度を上げられることがわかった気がします。今日はお忙しい中、お時間をいただき本当にありがとうございました!

梶原・佐藤 こちらこそ、ありがとうございました!

 

(構成/武田敏則)