黒人への暴力に抗議の米NFL選手たち トランプ氏に反発
米国の人種差別や黒人への警察暴力に抗議するプロスポーツ選手たちと、ドナルド・トランプ米大統領が対立している。黒人への暴力に抗議して試合開始前の国歌演奏であえて地面に膝をつくプロフットボールリーグNFL選手たちを、トランプ大統領が「くびにしろ」とツイート。これに反発して24日の各地の試合では、多くの選手が国歌演奏中に膝をついてあらためて抗議の姿勢を示した。プロバスケットボールNBAの優勝チームも、NFL選手への支持表明を機に、予定されていたホワイトハウス表敬訪問が取りやめになった。
NFLでは昨年夏、コリン・キャパニック選手が警察暴力に抗議して国歌演奏時の起立を拒否し、膝をついたのを機に、複数の選手がこれに同調した。24日はそれ以来、最も大勢の選手がこれに賛同した。
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トランプ氏は22日、キャパニック選手たちの行為を念頭に、支持者集会で「我々の国旗に不敬な態度をとる奴に、NFLチームのオーナーが『あのクソ野郎をすぐにグラウンドからつまみだせ。出てけ。クビだ』と言ったら最高じゃないか」と発言し、声援を浴びた(訳注・「クソ野郎」と訳した元の発言は、「son of a bitch=直訳・あばずれの息子」という罵倒語)。
トランプ氏はさらにツイートで、「もし選手がNFLやその他のスポーツ・リーグで何百万ドルも稼ぐ特権を手にしたいなら、我々の偉大な米国旗(や国)への不敬は許されてはならない。国歌には起立すべきだ。そうしないなら、お前はクビだ。何か別のことをしろ!」と書いている。
大統領の支持者の間ではさかんに支持されている一連の発言に、米国のプロスポーツ選手たちは強く反発し、週末にかけて各地で様々な抗議の行動に出た。
23日夜には、米大リーグ、オークランド・アスレチックスのブルース・マックスウェル選手が国歌演奏中に、抗議で膝をついた。
24日に米各地で開かれたNFLの試合では――、
- シアトル・シーホークス、テネシー・タイタンズ、ピッツバーグ・スティーラーズの選手たちが国歌演奏中に、グラウンドに出てこなかった。
- シカゴ・ベアーズの選手たちは、グラウンドの横で互いに腕を組んで抗議。
- 米国を代表するクオーターバックのひとり、トム・ブレイディ選手もニューイングランド・ペイトリオッツのチームメイトたちと腕を組んで抗議。
- グリーベイ・パッカーズやシンシナティ・ベンガルズの一部選手たちも腕を組んで抗議。
- シーホークス対タイタンズの試合では、国歌を歌った歌手が演奏後に膝をついた。
- デトロイト・ライオンズ対アトランタ・ファルコンズの試合では、国歌を歌った歌手が演奏後にこぶしを上に突き上げた。
- タイタンズやペイトリオッツの試合では、選手たちの抗議行動に一部のファンがブーイングを浴びせた。
- ジャクソンビル・ジャガーズのオーナー、シャヒード・カーン氏は、国歌演奏中に選手たちと腕を組んで抗議。チームオーナーが試合前にピッチで選手たちと肩を並べるのは異例。カーン氏は大統領選でトランプ陣営に100万ドルを寄付している。
NFLのロジャー・グデル・コミッショナーはトランプ大統領の発言を批判し、「このように分断をあおるコメントは、残念なほど敬意を欠いている」と述べた。
NFL選手協会のエリック・ウィンストン会長は、大統領発言が「公民権のために闘った過去の英雄たち、今も闘っている英雄たちを、正面から平手打ちした侮辱行為に等しい」と批判した。
今年6月にプロバスケットボールNBAのファイナルに優勝したゴールデンステート・ウォリアーズのスター選手、スティーブン・カリー選手は22日、ホワイトハウスの表敬訪問に反対すると発言した。NBAやNFL、大リーグの優勝チームによるホワイトハウス表敬訪問は、慣例となっている。
カリー選手はトランプ氏について、「これまでの発言内容や、発言すべき時に発言しなかったこと」を自分や他の選手たちは支持していないことを、ホワイトハウス訪問を拒否することで示したいと述べた。
この発言を受けてトランプ大統領は23日、「ホワイトハウス訪問は優勝チームにとって大きな栄誉とされている。スティーブン・カリーはためらっているので、招待は撤回だ!」とツイートした。
ゴールデンステート・ウォリアーズは、チームがホワイトハウスに「招かれていないこと」は十分承知したが、それでも「平等と多様性と包摂を称える」ためにチームとしてワシントンは訪れるつもりだと発表した。
(英語記事 Trump NFL row: Defiance after US president urges boycott)