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黙って働く肝臓のスゴイ働き

肝臓の位置
出典:田辺三菱製薬 肝機能ナビ
http://kankinou.net/kanntann/

肝臓の位置や大きさを正確ご存知ですか?

肝臓は、体の中の上腹部辺りにあり、大きな赤い色をしている臓器です。肝臓の上のあたりは、ヘルメットのような丸っこい形をしていて、横隔膜と接している場所にあります。

重さは1.5㎏程度あり体重の1/50ほどで、体の中で一番重い臓器となっています。そして体内にある血液の4分の1にあたる量が肝臓に集まっています。

肝臓の働きは全部で500種類以上あるので、これだけ大きな臓器であるのもうなずけます。

今回は、体の中で一番大きい臓器である肝臓の働きについてご紹介します。



~ 目次 ~


肝臓の働き3つ

3つの肝臓の働き

肝臓は、体にとって重要な働きを行っています。原料を化学反応させるような化学工場に例えられることがありますが、その理由は、肝臓が生命の維持に必要な働きを行っているからなのです。肝臓の働きは、大きく分けて下記の3つあります。


肝臓の働き3つ
  1. 代謝機能
  2. 解毒作用
  3. 胆汁の生成と分泌作用

1. 代謝機能

肝臓の代謝機能

体の中に入った食べ物は、そのままでは、栄養として体に取り入れることはできません。そのため、食べたものは細かく分解され、栄養として吸収できるようにします。肝臓は、小腸で吸収された食べ物から、糖やたんぱく質、脂肪を体内で使えるように形を変化させます

そして、変化したものを貯蔵し、必要なときにエネルギーとして使えるように準備しています。この代謝によって作られる熱は、体温を維持するために必要なものです。


糖質代謝
糖質

ごはん、パン、麺といった食材に多く含まれている糖質は、からだにとってエネルギーとなり大切な栄養素になります。糖質は、ぶどう糖に分解された後、小腸から吸収されて、門脈を通って、肝臓まで運ばれていきます。ぶどう糖は、グリコーゲンとして肝臓内で変化し蓄えられます。

血糖とは、血液中にブドウ糖が含まれていることを指します。血糖が多すぎると、肝臓がブドウ糖をグリコーゲンとして蓄えます。逆に少なくなると、グリコーゲンからブドウ糖を作り、血液に送りだして、エネルギーとして供給されます。

このように肝臓の働きによって、血液中の血糖値が調節できるようになっています。そのため、肝機能が低下するような病気になると、この働きがうまくいかずに血糖値が上昇して糖尿病のような状態になってしまいます。


たんぱく質代謝
たんぱく質

からだにとって必要なたんぱく質は、アミノ酸で構成されています。食べ物である肉や魚に含まれているたんぱく質は、小腸でアミノ酸に分解されて吸収され、肝臓に運ばれてきます。

肝臓ではアミノ酸から、体を構成するたんぱく質へ合成する働きがあります。その量は毎日50g程度合成されています。体にとって大切な働きをする血漿の中に含まれているたんぱく質をつくって、血液中に供給することもこの肝臓の働きの一つです。


脂質代謝
脂質

脂肪は、たんぱく質や糖質といった三大栄養素の中でも、大きなエネルギーとなり、体にとって大切なエネルギー源となるだけでなく、脂溶性のビタミンを補給するためにも欠かせない栄養素です。 肝臓では、脂肪酸を作ったり、分解したり、コレステロールやリン脂質といった物質を作る働きがあります


2. 解毒作用

解毒作用

体の中に取り入れた、アルコールや薬、老廃物などの有害になるような物を分解して、体に悪い影響がでないように毒性のないものに変化させる働きがあります。

腸管の中の細菌によって、食べ物のたんぱく質からつくられるアンモニアは、体にとって有害な物質です。肝臓ではアンモニアを尿素として変化させる働きがあります。そのため尿となり有害物質は体外へ排泄されます。肝硬変などの病気により、肝機能が低下すると、このアンモニアが血液中に増えてしまい、意識障害を起こす原因となります。


3. 胆汁の生成と分泌作用

肝臓で作られた老廃物を流すための胆汁を生成し、分泌する働きがあります

胆汁は、脂肪の消化吸収を助ける消化液として働きます。十二指腸で脂肪を消化するときに、この胆汁は使われています。胆汁の主な成分である胆汁酸は、脂溶性のビタミンや脂肪の吸収を助ける働きがあります。そのため、肝臓の機能が低下すると、コレステロールがたまってしまい、胆石ができやすい状態になります


胆汁酸の新しい働き
遺伝子

胆汁酸は、肝臓でコレステロールから作られる胆汁の成分ですが、古くから漢方薬として利用されていました。熊胆(熊の胆のう)は、胆汁の分泌促進(利胆作用)や炎症を抑える作用などがあるとして、漢方薬として知られています。この熊胆の成分が胆汁酸によるものと考えられています。

胆汁酸を体内に入れた時の薬理作用は、小腸で行われる脂肪分の消化と吸収を促す働きがあることと、胆石の予防や改善といわれていました。胆汁酸には、その他にも結晶化したコレステロールを溶解する働きがあり、胆石の治療としても利用されています。

これらの働きに加え新しく注目されているのが、胆汁酸が細胞に入り込み、遺伝子を調節するものと結びつき、体で行われるさまざまな化学反応を調節する働きです。コレステロールの分解や中性脂肪の合成を抑える働きや、甲状腺ホルモンの活性化に作用して、基礎代謝を高めることもわかっています。



肝臓の働きがうつを抑える?

運動
出典:毎日新聞 体内に改善効果物質
https://mainichi.jp/articles/20170822/ddl/k31/040/466000c

前述したとおり肝臓は、体にとって大切なさまざまな働きを持っています。そして、まだまだ解明されていない肝臓の働きがあるようです。

2017年8月21日に肝臓に関する新たな発見がニュースで取り上げられました。鳥取大学の岩田正明准教授らのチームが、肝臓で脂質から生成される物質(βヒドロキシ酪酸、以後BHBと表記)に、うつ病を抑制する作用があることが、動物実験で判明したと発表されました。

うつ病は、ストレスなどで神経と神経をうまく連絡することができない状態で、脳内の炎症が原因とされていました。BHBは、体内で糖分が不足したとき、代わりのエネルギー源として肝臓で生成されるもので、空腹時や運動を行ったときに生成されます。

このBHBをラットに投与すると、うつ病の原因とされる炎症性物質の発生を抑えることがわかったのです

BHBは体内で生成される物質であるため副作用も抑えられる可能性があり、今後うつ病の薬の新しい成分になるのではと注目されています。まだ、ラットの実験での結果なので人間の場合の結果は不明ですが、今後の活躍が楽しみです。



まとめ

肝臓は、体の中で一番大きな臓器であり、生命を維持するために、さまざまな働きをしてくれています。新しい働きとしてうつにも対抗する力を秘めていますがm“沈黙の臓器”といわれるように、肝臓は、悪くなっても症状がでるまでに時間がかかり、がまんして働いてくれています。

肝臓の機能が低下し、病気になってしまうと大切な働きが行われなくなり、日常生活に影響がでるような症状がでることもあります。

日頃の生活を見直し、規則正しい生活とバランスのとれた食事をとり、健康な体を作るように心がけましょう。

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