結婚するのもなにかと難しくなっているらしいこのご時世,街コンに参加して付き合いはじめ,結婚に至るカップルも誕生しているようですね.
その街コンですが,女性のほうが参加費が安い傾向にあるようです.その理由について,以前某記事のはてなブックマークに以下のコメントをしました.
需要も然りですね.一つだけ付け加えるなら,女性人口が男性人口より少ないからです.数が少ない性をめぐって,数が多い性が競うのは人もほかの野生動物も一緒ですから
そう書いたからには理由を説明しておかなければいけません.
街コン参加費は女性のほうが安い
このサイトで東京圏開催2017年9月30日(土)の参加費を覗いてみました(2名1組の参加というのもありますが,ここでは男女とも1名の料金のみ記載,男女比は過去の実績を考慮).
2017年9月30日の街コン(全イベント)一覧 | 街コンジャパン-全国の街コン公式サイト-
◆開催地:表参道,男女比ほぼ1:1
女性(20〜29歳) ¥2,000
男性(23〜32歳) ¥5,500
◆開催地:青山,男女比ほぼ1:1
女性(20〜34歳) ¥1,980
男性(30〜39歳) ¥5,480
◆開催地:恵比寿,男女比記載なし
女性(20〜29歳) ¥2,500
男性(22〜29歳) ¥7,500
◆開催地:銀座,男女比は厳密に調整
女性(20〜29歳) ¥3,200
男性(25〜32歳) ¥7,500
4つのうち3つの参加条件は独身.筆者は参加できません.
女性の参加費はおおむね男性の半額以下のようです.男性側はより高いお金を払って,すなわちコストを負担しないと街コンに参加できません.
野生動物を見渡せば,メスとの交尾をめぐってオスがよりコストを払う,つまり少ない資源をめぐって競合する事例はたくさんあります(どのメスもいつでも誰とでも交尾するわけではない等いろんな現象があり,これを書き始めるとものすごく長くなるので割愛します).
懐かしの『ラブアタック!』より
では,どのような競合があるのでしょう?
『ラブアタック!』というTV番組を覚えてますでしょうか?(ラブアタック! - Wikipedia).もちろん若い方は知るよしもないのでちょっと説明します.
この番組には第1部と第2部がありました.第1部は番組に応募した男性数名がいくつかのゲームに挑戦し,勝ち抜いた1名が女性(1名)にアタック(求愛)できるというもの.個人的には「フルコースディナー早食い競争」が大好きでした.
この第1部は,まさに動物行動学で言うところのコンテスト型競合(優劣関係が資源獲得に影響するタイプの競合)に相当します.男性同士での競合で勝ち抜かないと,女性への求愛権を獲得できません.まあせっかく勝者となってもふられるケースが多々発生したことは言うまでもありません.
一方,第2部は男性が各自得意芸等を披露し,女性(1名)に対して順番に求愛するというもの.男性陣全員に求愛権が付与されているのが第1部との大きな違いです.この場合,一人目でカップル誕生した場合,残り全員がとても悲しい目に遭うわけでして,それはそれで楽しゅうございました.
この場合,順番に求愛するのではなく,全員が同時に求愛するのであれば,それは集団求愛という行動に相当します.集団求愛は鳥の世界でよくみられます.冬の川で一羽の雌のカモのまわりを雄のカモが取り囲み,雄たちが普段見慣れない動作をしていたら,それは集団求愛と思って間違いないと思います.集団求愛の場合,雄は雌に選ばれないと交尾することができません.だから雄は雌に対して「ラブアタック」するのです.
『ラブ・アタック!』では第1部・第2部とも1名の女性に対し複数の男性が競合していました.このような状況は日常生活ではあまりみられないかもしれません(少なくとも私は経験してないです).
しかしながら,少なくともある年齢下の男性は潜在的に競合せざるをえない状況にあるのです.なぜならすべての男性が結婚できるかというとそれは物理的に不可能だからです.
日本で少ないのは男性?女性?
これから結婚を目指す男性にとっては少々つらいことかもしれませんが,現実から目を背けてはいけません.
◆次の図は0〜60歳の男性・女性の人口について,女性を1とした男女比を示します(平成22年国勢調査による統計表一覧 政府統計の総合窓口 GL08020103の表2CSVより).
例えばあなたが24歳だとします.図の24歳の棒グラフの値が1より上にある場合,24歳男性の人口は24歳女性を上回っていることになります.
では,図を見てみましょう.
結果は一目瞭然.0〜49歳までの男女比はすべて男性側に偏っています.この年令でカップルになる場合,男女の人口比という個人の力ではどうにも左右できない神の手によって,男性と女性で出会いのチャンスが初めから違うのです.
なぜこんなことが起きるのでしょう?
実はヒトの出生性比(男性:女性)の世界平均は105〜106:100になっています.胎児の死亡率・流産率,さらには産まれてから乳幼児期を経て青年期までの死亡率も男性のほうが高くなっており,これはヒトにも自然淘汰がかかっているからとのこと.(長谷川真理子著『雄と雌の数をめぐる不思議』, pp.178-179より).
長谷川は医療が発達した現代では男性と女性の死亡率の差が縮まっていることも指摘しています.ということは,男性と女性の人数差は(男性が死ななくなってるから)あまり変わらず推移する,と言えるでしょう.男性は今も,そして未来も余り続けるのです.
ちなみに世界人口は約73億4800万人,うち男性約37億620万,女性約36億4200万人です(http://toukei-labo.info/05_jinkou/05_jinkou2.html).ブルゾンちえみが言ってる数値はちょっとデータが古いようです.
街コン価格が概ね女性のほうが安い理由
すべての街コンについて調べてはいませんし参加したこともないので経験なさった方の意見をうかがいたいところですが,ちょっと見た限りでは街コンの男女比は1:1を謳っていした.募集年齢における男女比はこれまで述べた通りなので,女性応募者を集めるほうがよりコストがかかります.男女比をそろえようとすれば,参加費用に性差を設定せざるを得ません.
言い換えれば,49歳以下の未婚女性は,女性に生まれたというだけで結婚をめぐる男女間の優劣関係において男性よりも優位に立っているのです.この優劣関係の差が,男女で支払うコストの違い,すなわち参加費の金額差として顕在化するのです.選ぶ性と選ばれる性,同性間でより競合する性とそうでない性.どちらが高くつきますか?だから平成22年時点で49歳以下の場合,男性のほうが高い料金を負担すると考えられます.
女性より高い料金を払って街コンに参加した男性達は,水面下の集団求愛を経てコンテスト型競合を勝ち抜き,ようやく『ラブ・アタック!』第1部勝者のごとく女性への求愛権を得られるのです.とはいえ首尾良く求愛権を得られたとしても,「ごめんなさい」の一言をくらって奈落の底に叩き落とされるかもしれませんが・・・
男女の立場は条件次第で逆転する
一方,街コンの例じゃなくて申し訳ないのですが,『男性医歯系・1000万〜パイロット・弁護士・会計士・・・』などという婚活パーティーだと男女の関係は逆転します.男性よりも女性のほうが高い参加費を支払うのです.これは年収1,000万円超の男性が選ぶ側,女性が競合する側になるからです.希少性が高い=少ない資源をめぐって争う側がより高いコストを支払うからなのですね.
蛇足ではありますが,男女とも独身50歳以上のとある婚活パーティーではどちらの性も参加費は¥7,000になってました.50歳を超えると,男性の人口のほうが女性より少なくなります.それにもかかわらず参加費が男女で同額ということは男性の価値がそれほどでもないことを物語っているようでちょっともの悲しくもあります.
さらに蛇足なのですが,男女それぞれの未婚率の推移について図を引用しておきます.
若い皆様の健闘を祈ります.
ではまた!