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【言わねばならないこと】(101)平和国家 変えてどうする ジャーナリスト・田原総一朗さん僕は小学五年生の夏休みに玉音放送を聞いた。先生はそれまで、この戦争は世界の侵略国である米英と戦って、植民地となっているアジアの国を独立させ、解放させる正義の戦争だと言っていた。君らも大人になって戦争に参加して天皇陛下のために名誉の戦死を遂げろと。ところが、二学期になって先生の言うことが百八十度違う。実はあの戦争はやってはいけない悪い戦争、侵略戦争だと。新聞もラジオもガラッと変わった。大人、とくに偉い人の言うことは信用できない、国家は国民をだますんだという気持ちがあって、それが今も続いている。 安倍晋三首相は二〇二〇年に自衛隊を憲法に明記する改憲を目指すという。反対だ。首相は、多くの憲法学者が自衛隊は違憲と指摘しているからやるんだというが、今の自衛隊の位置付けは国民の理解が得られている。改憲したい人たちは明記からはじめて、やっぱり九条二項(戦力不保持、交戦権否認)を変えようということだろう。フランスやイギリスのように「普通の国」にしたいのだ。 変えてどうするのか。二十年ほど前に僕が司会をしたシンポジウムで、キッシンジャー元米国務長官は、日本の改憲には反対と言った。「アジアの国々は憲法九条があるから、日本は戦前のようにならないと信頼している。われわれもそうだ」と。キッシンジャー氏が言ったように、平和国家だからアジアの国々や欧州の国に信頼されている。これを変えるべきではない。 僕らの世代は体験的に、保守もリベラルも戦争は絶対にダメだという感覚がある。戦争を知る最後の世代として、平和国家を訴えることが使命だと思っている。 <たはら・そういちろう> 1934年生まれ。早稲田大文学部卒。岩波映画製作所、東京12チャンネル(現・テレビ東京)を経てフリーに。今月発足した「安倍9条改憲NO!全国市民アクション」発起人の一人。
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