発表資料: 2009年11月30日

女性の毛髪を年代別に定量調査
加齢に伴う毛髪の密度、太さ、成長速度、毛周期ステージの変化を測定

花王株式会社(社長・尾崎元規)ビューティケア研究センターは、このたび、加齢に伴う毛髪変化の定量調査を目的に、20~60代の日本人女性74名(各年代14~15名)を対象とした、毛髪の密度・毛髪径・毛髪成長速度・毛周期(ヘアサイクル)ステージの実態調査を実施しました。
女性の加齢に伴う毛髪に関する悩みには、「白髪」以外にも、「髪が薄くなった」、「ハリやコシがなくなった」などの悩みがあります。これらの原因としては、加齢による毛髪の密度・太さなどの変化が影響することが考えられますが、さまざまな毛髪変化を一度に定量的に計測した例や頭部の部位差(頭頂部と側頭部)を比較した例は少ないのが現状でした。(これまでに花王が実施した毛髪の加齢研究については、参考資料を参照。)
そこで今回の調査を実施し、以下の結果が得られました。

女性の毛髪の加齢変化に関する調査結果

■毛髪の密度

・最も毛髪密度が高いのは20代で、頭頂部は約210本/c㎡、側頭部は約150本/c㎡でした。
・60代では頭頂部は約160本/c㎡、側頭部は約120本/c㎡で、20代に比べて2割ほど髪の本数が減少していました。

■毛髪径(太さ)

・最も毛髪直径が太いのは30代で約0.07㎜(頭頂部)でしたが、その後、加齢とともに細くなり、60代では約0.06㎜(頭頂部)でした。この変化が、ハリやコシの減少の原因のひとつである可能性が示唆されました。

■毛髪成長速度(伸びる速さ)

・毛髪の成長速度は、20~40代は約0.4㎜/日(1.2㎝/月)でしたが、加齢とともに毛髪の伸びる速度が低下する傾向があり、60代では約0.3㎜/日(0.9㎝/月)でした。

■毛周期ステージ

・髪が伸びる状態の成長期の毛髪は、40代までは全毛髪の約80%でしたが、50代以降は、50代は約75%、60代は約55%と成長期の割合が減少していました。
・また、髪が伸びず抜け落ちやすい状態の休止期の割合は、40代までは約15%であるのに対し、50代は約20%、60代は約30%に増加する傾向が認められました。

以上の結果から、髪の本数が減少し細くなることが、「ハリやコシがなくなった」という年齢とともに増える女性の髪の悩みに影響を及ぼしている可能性が示唆されました。また、毛髪の成長速度の低下や休止期毛の増加などの毛周期ステージの変化による影響も考えられました。
本結果は、第27回日本美容皮膚学会総会(2009年8月1、2日、新潟)において発表しています。

毛髪と毛周期


毛髪は、伸びて一定の期間を経ると自然に抜け落ち、抜け落ちたところからまた新しい髪が生えてきます。この周期を毛周期(ヘアサイクル)といい、「成長期毛(髪が生まれ伸びる状態。4~7年)→退行期毛(伸びない状態。2~4週間)→休止期(伸びないで抜け落ちる状態。数カ月間)」のステージ変化があり、脱毛の周期が違うため、通常はまとまって抜けることはありません。抜け毛の本数は、個人差や季節変動がありますが、1日あたり50~100本程度です。

研究方法

・試験参加者:
インフォームドコンセントを実施した日本人女性20~69歳までの各年代15名(30代のみ14名)74名で実施。

・測定部位:
頭頂近傍及び側頭部の2カ所について、毛髪を根元からカットして測定。
6日目に同じ部位をカットし、成長期毛の成長速度を測定。
 頭頂部:頭頂部から約2㎝の5㎜×5㎜
 側頭部:左右どちらか一方の耳の上7㎝の5㎜×5㎜

・撮影装置:
測定部位をデジタルマイクロスコープ(ハイロックス社 KH-7700)を用いて撮影。

・毛周期判別:
抜去毛(一人当たり10本)の毛根部を実体顕微鏡で観察。
形状から成長期毛、退行期毛、休止期毛に分類。
誤差を考慮し、各年代の毛髪をまとめて集計。

・検定方法:
毛髪密度、毛髪径、毛髪成長速度は、Kruskal-Wallis法で分散分析を行い、p<0.05の有意差が認められた場合、Scheffeの方法で多重比較検定を行った。
毛周期のステージは、χ(カイ)二乗検定で年代毎の比較を行った。


参考資料

※社外への発表資料を原文のまま掲載しています。