メルケル独首相、支持率回復の裏にもうひとつの顔
ドイツでは、総選挙の投票が始まっています。多くの難民を受け入れたことで一時は支持率を大きく下げ続投も危ぶまれたメルケル首相ですが、最新の世論調査では、4期目の再選が有力視されています。驚異的な支持率回復の背景にはメルケル氏のもうひとつの顔がありました。
ベルリンからは週1便、イラク行きの飛行機が飛んでいるのですが、乗客の中には難民の姿も見られます。
ベルリンからイラクへと帰国する難民たち。聞こえてくるのは失望の声でした。
「イラクがまだ危険なのは分かっているのですが、どうしようもないのです」(イラク難民)
この2年半にドイツから帰国した移民・難民の数は11万人にのぼっていますが、その背景にはメルケル政権の様々な政策がありました。そのひとつが“難民認定の厳格化”です。
「これが友達のベッドで、私が寝るのはこの上です」(アリ・ヘメンさん)
アリ・ヘメンさんは2年前、内戦状態のイラクを脱出し、密航業者に130万円を払って1か月半かけてドイツに到着しました。しかし・・・。
「ドイツに来れば人権も安全も守られ、地獄からパラダイスにいけると思っていたのに・・・」(アリ・ヘメンさん)
難民認定は却下され、労働許可が下りないため仕事もできず、難民施設で暮らしています。ヘメンさんのように難民認定を却下されるイラク人は、去年、前の年に比べ10倍に増加しました。
「私が望むのは、仕事をして他の人と同じように普通に暮らすことです。今となっては夢みたいな話ですけど」(アリ・ヘメンさん)
帰国を決意した難民たちに対し、政府は、最大およそ25万円(=1900ユーロ)の“帰国支援金”と帰りの航空券を支給。さらに、早く帰国するほどその支給額が多くなる仕組みで、支援センターの相談窓口には多くの難民が訪れています。
「多くの難民がドイツに来ればすぐに家も仕事も見つかると思い込んでいるのです。収容施設に入れられ難民申請の結果を延々と待たされるなんて考えもしないのです」(帰還支援センターのハネローレ・テルテさん)
「経済大国としてドイツは難民問題に貢献していきます」(メルケル首相)
多くの難民を受け入れ、ノーベル平和賞の候補にも名前があがったメルケル首相。状況に応じて、2つの顔を使い分けるしたたかさが長期政権を維持する強みといえそうです。