日本を訪れる外国人観光客は増えている。東京や京都などと並び人気なのが北海道だ。2016年度に北海道を訪れた外国人観光客は前年比10.6%増の230万人となり、10年前の3.8倍に増えた。札幌市の繁華街、ススキノにも多くの外国人観光客が訪れる。1キロ四方の狭い一角に4000店以上の飲食店がひしめき合う日本屈指の歓楽街だ。
かつてススキノといえば出張族でにぎわった街だ。ススキノの歴史は約150年ほどで当初から出張族を相手にしてきた。1870年に岩村通俊氏が赴任し、一時中断していた札幌本府建設が再開した。大工や職人が大量に札幌で過ごすことになり、これらの人々の需要を目当てに飲食店や貸座敷ができた。開拓のためにきた職人たちを引きとめておく方策として、飲食店を集約したことで、ススキノは誕生した。こうした由来からみても出張族を相手に繁栄してきたのだ。
だがいまススキノに大きな変化が出始めている。夜が静かになってきたのだ。2017年8月にススキノを訪れると21時を過ぎた頃から人が減りだした。かつて午後10時頃でもトレードマークであるNIKKA前のすすきの交差点は、「肩をぶつけず歩くのが難しかった」(地元関係者)全盛期と比べれば人影まばらとしか言いようがない。
さらに、0時になると一層寂しくなってきた。出張者が減っただけでなく、地元のサラリーマンの需要もしぼんでいる。1997年の北海道拓殖銀行の破綻以来、北海道経済は低迷し個人消費は落ち込みが続いている。自腹で飲む人が増え、2次会には行かなくなってきた。
地下鉄の終電が0時15分。近郊に住んでいる人が多い札幌とはいえ、夜中まで飲む人は減った。深夜1時前に客が誰もいなかったラーメン店の店主は「ほんとサラリーマン減った。早く家に帰って寝ちゃうんだろうね。閉店時間は朝3時だけど、営業時間の短縮を考えている」と明かす。タクシーも長蛇の列をなし、なかなか乗客が見つからずタクシーは増える一方だった。
接待需要は大きく減り、その分を外国人観光客が埋めていく。ススキノの飲食店関係者は願うが、そう簡単なものではない。外国人観光客も遅くまで飲み歩くことはなく、早々にホテルへ帰ってしまうのだ。