2013年から小説投稿サイト「小説家になろう」にて連載され、書籍化もされた『異世界はスマートフォンとともに。』。異世界でも使用可能なスマートフォンを手に主人公が冒険する本作は、その人気により7月からアニメも放映されています。
『岡田斗司夫ゼミ』では岡田斗司夫氏が本作のアニメのシーンを引用しつつ「アニメとして酷い」理由を解説します。酷い理由を解説しつつも「狂った作画こそが、この作品の面白味だ」ともコメントしました。
※本記事には『異世界はスマートフォンとともに。』のネタバレを一部、含みます。ご了承の上で御覧ください。
『いせスマ』はアニメとして酷い――「ダメなアニメの見分け方わかりますか?」
岡田:
『異世界はスマートフォンとともに。』そんなタイトルのアニメがありまして、「何!? 聞き逃せんことを俺は今聞いた!」と思ってですね(笑)。どんな都合のいい話が出てくるかわかるじゃないですか。主人公が女の子をはべらして、なんじゃこれは!? と見てるだけで頭が悪くなる作品に違いないと思ったんですね。
正直これがラノベ好きな皆さん、僕なんかよりもずーっとディープに読んでる人にとって面白いとか面白くないとか、イケてるとかダメとか、どう受け取られているのか皆目わからないんですけど、アニメとして酷いのはわかるんですよ。
岡田:
アニメとしてこの上なく酷いのははわかるので、余計なお世話ですけども僕にとってこのアニメがどんな風にみえているのかを、フリップにしてお伝えしようと思います。まず主人公が使った第2話で使った、相手に目つぶしをする魔法「ブラインドサンド」というのを使います。
この砂をベージュ色に描くところが、もうセンスがないんですよ(笑)。昔『ガルフォース』っていうアニメのオープニングが作られた時に赤井孝美【※】が「ダメなアニメの見分け方わかりますか。それは涙を水色に作画していることです! 人間の肌の上を涙が走った時に、水色に描くバカがいると思いますか! でもダメなアニメは描くんですよ!」って(笑)。それから『ガルフォース』を見たら水色の涙が顔に流れてたんですよ(笑)。 同じように砂をベージュ色で描きゃいいというもんじゃないというね。
※赤井孝美
イラストレーター、プロデューサー。元株式会社ガイナックス取締役。1991年、監督・脚本・キャラクターデザインを務めた『プリンセスメーカー』を発表し、「美少女シミュレーション」というジャンルを確立したと評された。
岡田:
「ブラインドサンド」という魔法は相手に目つぶしをするんですね。これが目つぶしをするシーンがこれなんですけども、なんか酷くないですか(笑)。頭の周りに茶色の腹巻みたいなものがあってですね。これで声優さんが「うわっ、目が!」って言ってることで、なんとか場面を持たせようとしていますが、これは酷いな……。
絵が下手なのではない、センスが変なんだ
岡田:
絵が下手なのかな? と思ったんですけど、そんな単純な問題じゃないんですよ。実は絵が下手なわけではなくて、作ってる人のセンスが変なんです。この「ブラインドサンド」で相手をやっつけた後の場面、この構図をご覧ください。
岡田:
ない! ないでしょ! 普通はこんなてんでバラバラな配置にしませんよ。やるんだったらもっとカメラ位置を下げて、目線近くにした方が緊迫感があるし、顔のアップをいれていいんですよ。これを延々ロングでやって、男の子が、左の女の子に駆け寄って、みんなが走り去るまで、ずっとこの構図だから、すごく間抜けなんです。
岡田:
その他に馬車に乗って皆が移動するシーンというのがあります。ここはありがちなんですが、奥の女の子がひとり延々説明で喋る。手前には馬車にふたりが乗ってるんですけど、このシーンが長すぎる。宮崎駿みたいな構図の能力があれば、このシーンでも持つんですけど、これで20秒くらいの長セリフをされると、すごく辛い。ピクリとも動かない手綱を持っている手が、どんどん気が狂って見えるんです。
だからこういう手綱を持っている手を入れ込んでいるシーンは、長く撮っちゃダメなんですよ。こういうのは2秒か3秒のインサートカットにすべきで、20秒もあるようなカットでは、この手が微動だにしないことに視聴者も変だと思ってくる。ただ下手なのではなくて、無理のある構図をやりすぎてるんです。
岡田:
無理のある構図のおかげで、主人公が魔法の本を読んでいるシーンはフレームが下に行きすぎている。おかげで足が異常なまでの長さっていうんですか(笑)、1メートル半くらいある、長い太ももが描かれてしまうんですね。この位置に本を書きたいばっかりに、自動的に手と腕がぐーんと前に伸びちゃっているんですよ。
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