「MBAランキング」で、ハーバード・ビジネススクールを抜いて2016年、17年と2年連続で世界第1位に立ち、名実ともに世界最強の経営大学院となった「INSEAD(インシアード)」。世界80か国以上から学生が集まり、グローバル性、多様性を大きな特徴とするこの学校、いったい何がそれほどすごいのか。
いまやビジネスパーソンのバイブルとも呼ばれる大ベストセラー『最強の働き方』(東洋経済新報社)『一流の育て方』(ダイヤモンド社)の筆著者で、インシアードの卒業生でもあるムーギー・キムさんをガイド役に、「世界最強の経営大学院」が生み出す人材とその「生産性を高める仕事術」に迫る。《これまでの連載はこちら》
「キムくん、最近、ケニアに行ってきたんや。ケニアとか、携帯バンキングの普及率が世界最高峰って知ってるか? アフリカが世界経済の成長を牽引する、そんな“リープフロッグ”(蛙飛び)に経済が成長する国が、アフリカにはたくさんあるんや」
これは私が尊敬する、ダボス会議を取りしきる某高名な政治・経済指導者が先日、それはそれは美味しいランチのウナギ丼をほおばりながら、私におっしゃった一言である。
なるほど、アフリカが最後の成長フロンティアと言われて久しいが、皆さん、アフリカといえばどんなイメージをお持ちだろうか? ガリガリの身体におなかが突き出た、栄養失調の子どもたち。奥さんがたくさんいる軍事政権の独裁者による虐殺。そしてたまにYoutubeで見る、ライオンと象のケンカ。
アフリカと聞いて、こんな時代錯誤のシーンしか思い浮かばないようであれば、時代の最先端をゆく我らが「現代ビジネス」を読んだあなたは、本当によかった。
今回のコラムでは、非常にエキサイティングなアフリカの現在に関して、インシアードの後輩にして、某大手コンサルティングファームのナイロビオフィスで働く加賀野井薫さんにご登場いただく。
日本の大学を出た日本人ビジネスパーソンが、アフリカでの就労の機会を得るにいたった、「単なる名刺交換で終わらない、人脈有効活用の三大秘訣」について、読者の皆さんとともに考えたいと思う。
「アフリカはこれから絶対に面白くなる。君のやりたいことを考えたらケニア支社が一番面白いはずだ。ケニア支社のパブリック・ソーシャルセクター(政府、自治体、NPO、社会起業を担当)のトップを紹介するから直接話してみてくれ」
インシアードでMBAを取得したあとはケニアで働こうと決めた私(加賀野井)は、当時勤めていたコンサルティング会社のケニア支社への転籍が最良だと考え、そのための足がかりを探していました。
アフリカの拠点にどんな人がいるのか調べてみると、かつて日本で一緒に働いていたフランス人の上司が、なんと全アフリカ支社を束ねるポジションに! さっそく彼に電話をして自分の希望を伝えると、すぐに担当部署のトップにつないでくれました。冒頭のセリフは、そのときに彼が私にかけてくれた言葉です。
その後、多少時間がかかりましたが、社内の別の人からの支援もあって、思い立ってわずか4か月でケニア支社転籍に道筋をつけることができました。こういう障壁を解決してくれるのは、いつも人脈なのです。
こうやってさらっと書いてしまうと、いとも簡単なことのように聞こえるかもしれませんが、数年前の自分だったら、こうはいかなかっただろうと思います。正直なところ、当時の自分は「人の力を借りるなんてダサい」と考えていました。そのままだったら、元上司を頼ろうと思わなかっただろうし、ケニアで働こうとも思わなかったかもしれません。