となると、樺太にはエンチウ民族が先住していたということになる。
また、北海道のメナスンクルやスムンクル、ペニウンクルがそれぞれ別集団(民族)だったとしたならば、北海道には、メナスンクルやスムンクルたちが先住していたことになる。
いや、彼らは民族ではなく部族(的集団)だという人もいるかもしれないが、すでに書いたように民族と部族をはっきり分ける定義がはっきりしないのである。
アイヌが民族ではないというなら、「先住部族」ということになるのだろうか。
アイヌが「一つ」の民族ではないにしても、アイヌが「民族」ではないという証明にはならないのである。
アイヌが「一つ」の民族ではなかったとしても、「アイヌ」と呼ばれる人たちが北海道・樺太・千島などに先住していたのは歴史的事実であり、現在のアイヌがその末裔であることは確かな事実なのだ。
仮に「一つ」ではなく、複数の民族諸集団なり部族だったとしても、それはアイヌが先住者ではないと主張する根拠にはならない。
むしろアイヌが「一つ」の民族ではないならば、エンチウ民族(部族?)だの、ペニウンクル民族だの、サルンクル民族などがそれぞれ存在し、それぞれを認めなくてはならないことになる。アイヌの先住者としての権利を認めたくない人たちにとってはかえって面倒くさいことになりはしないか。
台湾などは、北海道の半分以下の面積であるが、その中に、14以上の諸民族が先住していたのである。
少なくとも台湾政府は、その14については、原住民族として認定し、ある程度の権利を保障しているのである。
アメリカ先住民族(インディアン)も、チェロキーやアパッチ、ナバホなど日本でも名前の知られている民族(部族)をはじめとする、言語や文化を異にする何百という集団に分かれているが、彼らが先住民族ではないということにはならない。
その一つ一つが先住民族ということになる。
これはオーストラリアのアボリジニについても同じ事が言える。彼らは何十何百という民族なり部族に分かれていようが、アボリジニがオーストラリアの先住民族であったことはまぎれもない事実なのである。