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「オイ、スネ夫っ!
今日は朝からのび太ん家で張り込みだっ!
わかったなっ!来なかったらただじゃおかねえからなっ!」

「はっ?
何言ってんだっ?ジャイアンのフリして・・・またお前かっ!
もうわかってんだよ」

ガチャ

くそ~

アッサリ電話切りやがって

親友の頼みだっつうのに・・・

しかしそこで文句を言いながら電話をかけていたのはあのゴリラ面の巨漢小学生剛田武ことジャイアン(小学5年生)とはかけ離れた容姿の持ち主だった

「武~!
早いトコ学校行きなっ!」

「はぁ~い母ちゃん」

冗談じゃない

今日はのび太の家の前で待ち伏せでもしようか思っているのだ

これは学校なんかより何倍も大切なことだぜ

そう心の中で思い、ヘコヘコ出かけるジャイアン

その後姿はどう見ても剛田家の一員とは思えない程小さく、弱々しかったという




どらえもんぬき
のび太は空き地の復讐鬼~後編
【パターン2、バットエンド】

作:黒白




「くそ~・・・
のび太の奴、来ないな・・・・」

さては俺を恐れて逃げやがったな

常人にはとても思いつかないこの発想、これこそがジャイアン独特のものだ

「とりあえず一発ブン殴ってその後さらし者にしてからじっくりこの体のことを聞いてやるぜ、のび太ぁ~」

・・・と、できるわけも無い計画を立てていると

キーんコーンカーンコーン

「嘘っ!?
もう学校のチャイムかっ!!、一時間目が始まっちまうっ!!」


っつ!

どうしてだ?

これはのび太の台詞のはずだろっ?

それにこんなに待ってもが出て来ないなんて・・・

もしかして間に合ってるのか?

あのノロマの遅刻チャンプがか?、早く学校行ったっつーのかっ?

「くそー!!
これものび太のせいだぞ――!!」


カバン、ランドセルを揺らしながらジャイアンは叫んだ





「ゲホッ、ゲホッ、ゲホッ、ゲホッ、」

駄目だ・・・

これ以上走れねえ、

このジャイアンツキャプテンでガキ大将の俺が?、冗談だろっ?

注意:ジャイアンツとはジャイアンを中心に作られた小学生草野球チームである、ただしあまり強くない模様

その彼女はのび太の家から学校までの間、ほんのわずかな距離でさえ走りとおすことが出来なかったのだ

学校1のノロマと称されるのび太出でさえも完走できる距離だぞっ!

何で俺様がっ!!

・・・・・・

・・・自問自答しても始まらないよな

「早く・・・
学校行かなきゃ」

そうは言うもののふらつく足はいう事を聞かない

何とか学校にたどり着いたときにはもう8時30分を回っていた

「はぁ~
入るの気が重いな・・・また1時間廊下に立たされ続けるのかよ」

もっと別の心配をしたほうが良いのだが彼女の頭はジャイアンのまま、

おまけにのび太の嘘によって『本当に頭が悪く』なっていた

ガラリ

「すいませ~ん、寝坊しました~」

「ああ、遅いぞ剛田っ!
今日は野比でさえ時間通りに出席していたといのにっ!!」

先生は俺を見もせずに言った

躊躇無く名前を呼ばれるところをみると、どうやら今日の遅刻、欠席は俺だけらしいな

ザワザワザワ

あん?

なんか辺りが騒がしいな

どうしたんだってんだ?

「あの娘、誰だろうね」

・・・と出来杉

「武さんじゃないわ」

・・・と静香

「服はジャイアンそっくりだけど」

・・・とはる夫

注意:はる夫とはドラえもん世界の脇役少年、デブである、ちなみに帽子がトレンドマークの彼は安雄という

「ああっ!またあの女だ」

・・・とスネ夫

「んん~、
何を騒いどるのかね?
剛田君、君もまだそこに立って・・・剛田君・・・か?」

先生もビックリだ

すっかりジャイアンかと思っていた人物は似ても似つかない女の子だったのだから

「はい、俺です」

・・・しまったなあ、今日のうちに元に戻るツモリだったから何も考えてねえよ

「し、しかし剛田君は男・・・」

目の前の変な女の発言で更に混乱する先生

はぁ~

またこのパターンか、仕方ねえ、一曲歌ってやるとするかな

「その女の子は間違いなくジャイアンですよ」

「!!」

いきなりの助け舟

思わず声の方向を見るジャイアン

しかしその先にいたのは

「のび太・・・」

昨日とは違う雰囲気をかもし出している野比のび太であった

そして彼こそジャイアンをこんな状況に叩き落した張本人である

「野比君、本当かね?
先生にはどうも信じられないんだが」

無理も無い

そんなこと現実には起こりえないことだから

「本当ですよ、
ちょっと春休みの間ドラえもんと色々ありましてね。」

「またどらえもん君か、
遊びも結構だが授業にまで持ち込んじゃあ困るよ」

先生は納得したようだ

・・・どういうつもりだ?

のび太が俺に俺に助け舟出すなんて

ジャイアンは警戒しながら例のスネ夫の近くに座る

「ようスネ夫、
おまえ今朝はよく約束すっぽかしてくれたよな~」

「ジャジャジャジャジャイアン・・・
あれ本当にジャイアンだったのっ!?」

ビビリまくるスネ夫

無理もない、迫力こそないがジャイアンは練馬の恐怖の帝王だ

「お前後でわかってんだろうな~」

「許してジャイアァァァァァンーーーー!!!」

ジャイアンのネチネチとした言葉攻めは午前中ほぼ毎時間スネ夫を震え上がらせていたそうな





そして昼休み、

待ちに待った復讐の時間だ

案の定グラウンドにのび太を呼び出してある



「ぐしししししししし、
待ったぜ~のび太よぉ~、
昨日の借りをタップリ割増しで返してやるぜ~」

「いいのかなジャイアン、
この僕にそんな口聞いて」

「ふん、ぬかせっ!
昨日はちょっと油断しただけだっ!
奇跡が2度続くと思うなよっ!!」

3度だろ?」

あくまで冷静なのび太

コイツの余裕はなんなんだ・・・?

またドラえもんの道具か?

どこにも隠し持っているようには見えないが

「あ、やってるやってるっ!」

そこに駆けつけるクラスメイト達、その中にはもちろん親友のスネ夫もいる

果てには野次馬で他の学年の生徒も集まってきた

「ギャラリーが増えてきたね、
観客は多ければ多いほど良いよ。
この前みたいに誰もいないトコで倒したってしょうがないからね」

「へぇ~、
ジャイアンのび太にやられたんだ~」

「意外と大したことないのよね~」

「な、なんだとお前らっ!!
俺様に向かってっ!!」

怒りをあらわにするジャイアン

仮にもにガキ大将だ、この扱いには憤慨する

「やっちまえのび太ー!!」

「ジャイアンなんて一捻りだー!!」

「喉潰せ、喉ー!!」

「そりゃあいいやっ!!」

「そーすりゃもうあの下手くそな歌聴かなくて済むぞっ!」

「たっおっせ!!」

「たっおっせ!!」

「たっおっせ!!」

「ど、どうなってんだようっ!?」

さすがのジャイアンも不安になってきた

クラス中に敵視されている

そう、あの暴力嫌いの静香や、親友のスネ夫からもこの敵意は感じるのだ

「のび太さーんっ!!
武さんなんてやっちゃってーーー!!」

「のび太っ!!
勝ったら旅行に一緒に連れてってやるぞっ!!」

・・・って叫んでるじゃねーかっ!!

スネ夫の裏切り者ぉ~~

静香ちゃんの薄情ものぉ~~

「のび太っ!!
お前みんなに何しやがったんだっ!!」

「んん~、
ちょいとみんなを正直にしてやったのさ」

「な、なんだとっ!!
嘘付け!!
戻せよっ!!、早くみんなを元に戻せよっ!!」

「無理無理、道具の効果は昨日で切れちゃったからね、
一生元に戻んないよ

道具・・・

やっぱりのび太はドラえもんの道具を使っていたのだ

「のび太ぁぁぁぁぁぁ!!!
の喧嘩に道具なんて使いやがってっ!!
許さねえぞテメー!!」

男と女の喧嘩だろ?
道具は使ったって良いんじゃないか?」

のび太の顔には小学生とは思えないいやらしい笑みが浮かんでいる

ゾクゾクゾク

何だこの悪寒は・・・?

気持ち悪い、こいつ気持ち悪いぜ

「いい加減にしろよっ!!
のび太の分際でぇぇぇぇぇ!!!」


姿勢を低くして突進するジャイアン

さすがに喧嘩慣れしているのか昨日と同じように胸を殴られない体勢をキープする

「はっ!?
何だいそのタックル?
100m何秒だい?、まじめに走ってくれよ」

え、俺遅いのか?

いつもクラスのリレーの選手に選ばれてる俺が遅いってのか

ジャイアンのタックルは実際遅かった

こんな事をのび太にぶつかるまでの間に考えられるほどに彼女の足は遅かった、避けるのは造作も無い

だが

がしぃ

のび太は避けようともせず正面から受け止めた

「キャー!!
抱き合ってるわあの二人っ!!」

「おいおい、
ジャイアンってホモかよ?」

「いや、問題はそこじゃないだろ」

「そうだよ、女になって抱き合ってるってのがマズイんだよ」

「もしかしてあれっ!戦いの中で生まれた友情ってやつぅ~?」

外野がうるせえ!!

でもそんなことは気にしてる場合じゃないっ!!

なんでのび太はびくともしないんだよっ!?

おれはジャイアン様だぞっ!

盗塁すればホームスチールだって出来るほど・・・敵の守備が怖がるほどの突進力があるんだぞ

注意:野球で敵の守備への体当たりは反則です、守備妨害です、絶対やめましょう

「ど、どうだのび太っ!!
ちょっとは効いたかっ!!」

「いや全然、
やっぱりあれかな?、学校1の貧弱さって言ったらやっぱり1年生より弱いのかな」

くそっ!

わけのわからんことをっ!!

「さぁ~て、
いつまでも抱き合ってるのはごめんだよ。
僕には静香ちゃんがいるからね」

「ふ、ふざけ・・・
ひゃあ!!??」


効果音があるなら『ぐいっ』と言ったところだろうか

なんとのび太はジャイアンの細めの胴を両手で掴むとそのまま一気に持ち上げてしまった

「お、降ろせのび太っ!!
降ろせよ!!」


いきなり地面が逆転してパニックになるジャイアン

無理も無い、巨漢時代の彼を持ち上げて更に持ち続けていられるのは彼の母親くらいのものだったのだ

「あれぇ~?
降ろしちゃって良いのかな?
下には石が転がってるかもよ」

無論整備されたグラウンド

石なんて落ちていようはずも無い、あるとしても砂利か小石程度だ

「や、やめてくれのび太っ!
普通に、普通に降ろせよっ!!」

だがパニックに陥っているジャイアンには十分脅威だ

「あれぇ~、まだ命令口調?
自分の立場ってものをわきまえ・・・まあ今は浮いてるから立ってはいないけどね」

「いいぞー!、のび太ぁー!!」

「落としちゃえ!!」

「いや、パイルドライバーだっ!!」

「いっそのことキン肉バスターなんてどうかしら?」

「うああああああぁぁぁぁ、
や、やめろ、やめろぉぉぉぉぉぉ!!!」


甲高い声で叫ぶジャイアン

その光景はどうみても無様で元ガキ大将には見えない

「ぷっ」

吹き出したのはのび太だけではなかった

「なんだあの様はーーー!!」

「あははははははは、笑っちゃかわいそうよ~」

「自分だって笑ってるくせに~」

ギャラリーはもう爆笑の渦だ

虐めというのはハマルキャラとはまらないキャラがいるものだが

いまのジャイアンはどう見てもはまり役だ

これだけ大勢の加虐願望を満たしきる役者はそういないだろう

「ちくしょー!!、笑うなよっ!!」

もちろん観客は無視を決め込む

「またまた、
お客さんは神様だよ、そんな事言ってちゃいけないな、ジャイアン」

「うるせ・・・
うあっ!!??」

更にのび太はジャイアンを高く持ち上げた

もう持ち上げたというより抱え上げたというほうが正しい

「な、なんのつもりだのび太っ!」

相変わらず視線は逆転している

まさかこいつ俺を本気で投げ降ろす気か?

こんなトコから叩き落されたら傷がつく程度じゃすまないじゃないか

例えようの無い恐怖がジャイアンに走る

それは彼がガキ大将故に経験してこなかった弱者が強者に抱く畏怖と恐れだった

「降ろして欲しい?
ジャイアン?」

「お、降ろして、
降ろしてくれっ!!」


「・・・駄目だな、
ちょっと良くなったけどそれが人に物を頼む態度っ?」

「の、のび太テメー・・・
ひっ!!」

のび太がジャイアンを一瞬放したのだ

「おっと御免」

そして激突寸前のところをまた捕まえられる

「はぁ~、はぁ~」

呼吸が荒い、はっきり言って怖かったのだ

じょ、冗談じゃねーぞ

こんなメガネ猿におちょくられるなんて

「じゃあ落とすよ~」

「や、やめてくれっ!
やめて下さいっ!!」


どうせコレが言わせたかったんだろ

のび太みたいな奴は単純だからな、多少屈辱でも言ってしまったほうが良いだろう

それにしてもやけに今の屈折してるなコイツ、ヤバイ薬でもやってるのか

「は~い、よくできました・・・
でも駄目だ」

「えっ!?」

一瞬言ってる意味がわかんなかった

理解したときはもう

「そらっ」

ぽいっ

「ひゃああああぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

それはまるでゴミ箱に捨てられるゴミの如く

ドサッ

・・・あれ

痛くねえや

ここ・・・砂場か?

「く、くははははははははははははは!!
最近は笑いが多くて実に楽しい日々だね、みんなっ!!」

のび太の哄笑

「ああ、ジャイアンがこんな弱いとは思わなかったぜ」

ギャラリーの嘲笑

「な、な、のびじぢゃ・・・・、あれ?」

なんだ、このマヌケな発音は?

ジャリ

口の中から音がした

砂だ、さっきの衝撃で全身砂まみれじゃねーか

「ざまあないねジャイアン、
いつも威張ってた罰だよっ!」

「や、野郎っ!
よくも、よくもっ!!
いっつも0点とって叱られてばっかの大馬鹿野郎のクセに!!
エラーに三振しまくるジャイアンツのお荷物のクセにっ!!
俺にいっつも虐められてるくせにっ!!!」


屈辱的すぎて涙が出てきた

もちろん悔し涙だ



普通少女が砂まみれで泣いていたらたいていの人間は同情するか懐柔の意を示す

しかし所詮中身はジャイアン、皆の反応は冷たい

それどころか

「何言ってんのこの女、のび太君が0点なんてとるわけ無いじゃんっ!!」

「そうだそうだっ!、お前じゃあるまいし」

「のび太さんはいつも100点よねー」

「だいたいジャイアンツってなんだ?
プロ野球チームか?、いくらなんでも小学生だったらしょうがねーじゃん」

「人のこと言えねーだろ、
それ以前にお前学校で一番運動神経鈍いくせに生意気なんだよっ!」

虐められっ子はアンタでしょ?
なにわけのわかいないこと言ってんのよっ!」

・・・わけがわかんないのはこっちだ

昨日までの全てがほとんど否定されてしまっている

こんなことが出来るのは

「おっ、ジャイアンどうしたの?
ジャイアンツのこと聞きたいの?」

ジャイアンはのび太を睨んだ

涙目だから全然迫力はないが意思は伝わった

「・・・ああ」

「あんなモンはもうこの世にないよ」

「なっ!?」

「かわりに僕が射撃同好会あやとり同好会を作ってあげたからね」

「そんな・・・そんな馬鹿な・・・」

我が耳を疑う言葉だ

誰が好き好んであやとりなどやるものか

それ以上に昨日まであったジャイアンツが一日で解散・・・

どころか無かったことにされてしまっている

「ふ、ふざけんなっ!!」

「ふざけてなんか無いよ、
あ、そうだ。
言っとくけどね、ジャイアンを今虐めてるみんなの記憶にほとんど手をつけてないからね」

「・・・一体何言って?」

何でのび太がこんな知能人めいたことを喋れるんだ・・・

いつもはドラえもんの受け売りの脳味噌入ってんのかと疑うほどの馬鹿が・・・

「つまり僕がいじったのは僕自身とジャイアンの情報、それとジャイアンツの事ぐらいってことさ」

「で、でもみんな・・・」

明らかにみんな変だ

「そりゃあ変だね、僕も驚いてるよ。
みんな僕に逆らう・・・みんな僕に逆らわないでほしいって願っただけなのに僕の意思に関係なく暴走するんだもん、
君ってやっぱり普段相当恨まれてるよ」

「そんな事が・・・」

さっきから驚いてばっかりだな俺

でもしょうがないじゃないか、だいたいなんだ?

こののび太の頭の切れようと喋り具合は?

全然別人じゃないか

「さて・・・」

ぐいっ

今度はジャイアンの胴ではなく腕を掴んで引き上げる

「ま、まだなんかすんのかよ?
もういいよっ!俺の負けだよっ!かまわないでくれよっ!」


「おやおや、
ジャイアンともあろうものがずいぶん弱気だね、
漢義( おとこぎ ) あふれるガキ大将はどこ行ったのかな?」

どこかに行ってしまったのだ

実はあの時のび太が叫んだ台詞

男らしい』という性格さえもにさせられてしまっているのだが

ジャイアン本人にはそんな事は全然知らない

むしろ自分が何故こんなに卑屈になっているのかわからず悩むくらいだ

「し、知らんねえよっ!
負けだっつってんだろっ!!、さっさと放せよっ!!」


「・・・本当に降参か?」

「・・・ああ」

「・・・情けない、あの時僕は自分の中のわずかな勇気を握り締めて戦ったっていうのに・・・
その相手がこんな根性なしとはね」

小声で呟いたために周囲には聞こえなかったがジャイアンには聞こえた

コイツ・・・あの時の嘘のことだけで怒ってるんじゃないのか?

もちろんそれが大きなウェイトを占めているだろう

だがのび太の中には自分がはじめて出した勇気をぶつけた相手が結局ただ体に頼って喧嘩していただけの男だったという憤慨があった

かつての自分と同じ立場に立たせてみるとよくわかる

ここまで追い詰めてもやけくそにすらなれない、結局自分と同じだ

「そういえばさっきリクエストがあったよね?」

「え、り、リクエスト・・・?」

猛烈に嫌な予感がするぜ

「たしか君のあまりの音痴で迷惑なドラ声を二度と聞きたくないっていう人が大勢いるんだよ」

「ま、まさか」

のび太の指がジャイアンの喉に添えられる

「苦しい・・・苦しいよっ!
やめろっ!!」

「へぇ~、喉仏はないんだね~。
君の高い声で歌われるあの恥知らずな曲も1度は聴いてみたいんだけどね、
僕ってホラ、生徒会長じゃん。
来年は実力で選挙通らなきゃいけないしさ。
みんなの要望は聞いといたほうが良いと思うんだよね」

「ま、まじかっ!?
オイやめろっ!!警察沙汰だぞっ!!

「大丈夫大丈夫、『みんな僕に逆らわない』からさ」

どうやらみんなの中には警察もママも先生も雷さんも含まれているらしい

「みんなだってもうジャイアンの歌を聞きたくないよなっ!!」

「・・・」

「・・・」

「・・・」

さすがにここまでくるとやりすぎと判断したのか、ギャラリーも黙りこくってしまった

「・・・みんな、ジャイアンの歌なんてもう聞きたくないよね?」

のび太の声がドスの利いたものに変わる

「・・・はい」

「・・・ええ」

「・・・聞きたくない」

「・・・あんな歌聴きたくないよ」

え、オイっ!!

冗談だろみんなっ!、集団催眠かっ!!、黒服の集団かっ?、それとも白装束の集団かっ!?

ジャイアンは完全にパニクっていた

余裕ありそうに見えてまるでなかった

「さぁ~ジャーイアン、
上向いてね~」

まるで歳下の従姉妹とでも遊ぶときのようなのび太の口調

しかし目は狂気の光を放ってはいる

「や、やめて、いやだ、いやだ、いやだ、いやだ!!」

「わがまま言うなって、男の子でしょう?」

のび太の指に力が入る

「ひいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ」

もうワケが解らなかった

とにかく泣き叫べばなんとかなるかもしれない

すがるような気持ちだ

キーんコーンカーンコーン

昼休み終了のベルだ

「・・・っち!、ここまでか
みんな、行くぞ」

「・・・・・・・・えっ!?」

「じゃあねジャイアン、明日も遊ぼうね」

「・・・えっ!?、あっ!?」

「・・・まだほおけてんな、
いいさ、今日から立場が逆転したんだ、
しっかり虐められっ子のび太ライフを楽しみな」

そういい残すとのび太やクラスメート達は校舎に入っていってしまった

残されたのは顔面涙でぐちゃぐちゃのジャイアンだけである

「あっはは、助かった・・・
助かったよ・・・あはははははははは」


もうジャイアンには考える気力は残されていなかった

そしてそのままグランドで笑い続けていたところを先生に発見され、

強制的に午後の授業を受けさせられるのであった



後書き2

この話は幸せになるか壊れて終わるかのどちらかです、中間はありません

幸せほのぼのタイプがお好きな方、多分ほとんどの方がそうでしょうが・・・

そちらは【パターン1、グットエンド】をお読みください

この後編よりは挿絵も多いですし読み応えがあると思われます

ではまたいつか


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