社員を追い詰める「自爆営業」の横行
ノルマを達成できないと社員自身に買わせるなど、昔から残る風習でもある自爆営業。今やパートやアルバイトなど非正規社員でさえも某コンビニにおいて季節性商品を買わせるなど深刻な問題。
更新日: 2017年01月26日
ノルマを達成できないと社員自身に買わせるなど、昔から残る風習でもある自爆営業。今やパートやアルバイトなど非正規社員でさえも某コンビニにおいて季節性商品を買わせるなど深刻な問題。
更新日: 2017年01月26日
本来、労働の対価として正当な賃金をもらってまっとうな生活を送るための場所が会社です。それが自爆営業では会社のマイナスを社員に負担、尻拭いさせてしまうのです。日本郵便の非正規社員が年賀状販売ノルマを課されて、売り上げが立たないと自分で買い取ったりするのがわかりやすい例です。昨年、菅義偉官房長官が記者会見で指摘し、広く知られるようになりました。
旅行業界でもチケット販売の売れ残りを自腹で買い取らせるような自爆営業は横行しているし、運送業では車のリース代や燃料代が自腹、アパレル販売なら残業代なしで売れ残り商品の買い取り強要など、ニュースにならないだけで多くの業界で社員の自爆営業は見ることができるのです。
自爆営業が起きている現場では、高い確率でパワハラがあるということです。罵倒、叱責、損害の自腹補填、評価を下げる、解雇を示唆する……などが繰り返され、上司の評価を極端に気にするあまりミスを報告できないばかりか、職業倫理や法律に違反することよりも上司のパワハラを恐れる社風が出来上がってしまうのです。そうなると、隠蔽工作に走ってしまう社員がいても不思議ではありません。
多くの人は、自分が自爆営業をしていることや、そのような行為を強いる会社にいると自覚していません。そういう会社で先輩や上司になっている人たちは、自分が乗り切った経験から、試練が自分の人生の肥やしになると考える人が多いのです。そんな試練を乗り越えた人は同期の中でもごく一部のはずで、誰にでも当てはまることではありません。それなのに、自分たちがやってきたことだからと強制してくるのです。一方で、強いられる側は、ほかに比較できるお手本がいないので、これが当たり前のことだと、その環境を受け入れてしまうのです。
■恐るべき「自爆営業」の姿とは
「普段のノルマも辛いのに、それ以外にも自分で自社の保険に加入するのが決まりになっていて、月に数万円も飛んでいく」。「毎月一定金額、自社の商品券を買わないといけないけれど、商品券で払える店が限られていて困る」。4月から正社員として働き始めた者が訴えるのは彼らの会社の「自爆営業」の実態だ。
コンビニエンスストアのアルバイトは、3000円のクリスマスケーキ販売のノルマとして、1人7個以上が課せられ、売り切らないと自腹。同様にお歳暮などにもノルマが課せられるという。
日本郵便の「自爆営業」
時給850円、1日6時間の週6日勤務で月収が13万円という30代前後の非正規社員・吉尾正人さんは、自分の力だけでは年賀状のノルマを達成できないので、年賀状を金券ショップに売りにいっている。勤務する中部地方から鈍行列車でわざわざ上京。近所の金券ショップは1~2軒しかない上、足元を見られて35円くらいでしか売れないのだという。もし、1枚につき15円も自腹を切るとなると、1000枚なら1万5000円も自腹を切ることになってしまう。
おまけに地方では、金券ショップに持ち込むのは誰かに見られる可能性が高いが、都会ならばその心配はないから、毎回出張せざるを得ない。吉尾さんはお目当ての金券ショップを訪れると、1枚につき42円で1000枚を売却。8000円自腹を切ることになったが、鈍行列車の往復運賃を入れても、損害額は1万5000円以下で済んだからましだと
吉尾さんの班には、正社員6名と非正規社員6名がおり、それぞれ正社員は9000枚、非正規社員は2500枚、班全体として6万9000枚のノルマがある。個人のノルマ、班のノルマは厳密に区別され、その両方を達成しないと、朝礼の時、社員全員の前で怒鳴り散らされる。ビールケースをひっくり返した「お立ち台」に「恥ずかしい社員」として立たされて、「皆様の足を引っ張り申し訳ありません」との謝罪の言葉を述べさせられる屈辱が待っているのだ。個人でのノルマが達成できないと、最終的には班長、はたまた、課長や部長などの管理職が自腹を切らなくてはならない。それを避けるために、上の者は弱い者をしつこいくらいに恫喝しなくてはならないのだ。
これは年賀状だけに済まず、さらに、年賀状より売るのが難しい「かもめーる」や「ふるさと小包便」でも同じだ。おまけに小包便はカタログ販売なのでショップに持ち込めないから、全額自爆。しかも、最安でも1000円だから「年90個のノルマだとそれだけで9万円の自爆。でも同じものばかりだと自爆がばれるから、高いものも織り交ぜなくてはならない。
おかしいと思っても、転職が難しい今では、会社に逆らって失職するよりは自腹に走ってしまう現状があるのだ。一体労働者はどうやって身を守れば良いのだろうか?
■年賀状過大ノルマで「ストレス自殺」 遺族が日本郵便を提訴
郵便局に勤務していた埼玉県東部の男性(当時51)が、職場での過重なストレスでうつ病になり自殺したとして、遺族らが2013年12月5日、日本郵便を相手どり慰謝料など約8000万円の損害賠償を求める訴訟をさいたま地裁に起こした。
この日、男性の妻(46)と弁護団が開いた記者会見や訴状などによると、男性は2008年にうつ病と診断され、その後3回にわたり休業と復帰を繰り返したが、10年12月、業務中に郵便局の4階から飛び降りて死亡した。
男性が勤務していた郵便局では、配達ミスなどをすると朝礼で同僚数百人を前に反省を述べさせられる慣習があり、男性は過重なストレスを受けていた。上司から罵声を浴びることもあったという。
また、年間約6000~9000枚の年賀状の販売目標があり、達成のために自らが年賀状を買い取る「自爆営業」と呼ばれる行為が課せられていたと、厳しい職場の現状を報告している。
弁護団は「恒常的なパワハラがあるような環境で、質量ともにストレスの多い職場だった」と指摘。男性の妻は、自殺する直前に夫が年賀状7000枚の販売目標に苦しんでいたこをあげ、「夫は薬を飲みながら働き、亡くなった。同様に悲しむ人をなくしたいと思った」と、涙ながらに提訴の理由を話した。
日本郵便は「訴状が届いていないため、現時点でのコメントは控える」としている。
■年賀はがき『自爆営業』郵便局員たちノルマこなすため数万円の自己負担
6000枚とか8000枚とか販売ノルマをかせられた郵便局員が、売れない分を金券ショップに売る。50円の年賀はがきも金券ショップの買い取りは40円程度だから当然足が出る。その分を自分でかぶる。勤務地ではわかってしまうかもしれないので、新幹線で東京へ売りに行ったり、宅急便で遠方の金券ショップに送る。かくして郵便局員の8割がノルマを達成するが、多くが自腹だという。郵便配達員たちがこれを裏付けた。
「今年のノルマは8000枚。金券ショップにいったのは6400枚。残りのうち1200枚が自宅と親戚。今年の損失はだいたい4万5000円くらい」
「手取りで17、8万円かな。自爆は2万円くらい」
「ほかにも、暑中見舞い、母の日、父の日、敬老の日、イベントゆうパックとか入れたら、年間11~12万円くらい会社に払ってますよ」
「イベントゆうパックがいつもあるから、自爆は毎月3万円から4万円」
年賀はがきは昨年は約33億枚売れた。ノルマは人によって5000枚とか1万枚とか割り当てが違う。
「(達成できないと)班からも同僚からも責められる。『なぜやらない』『いつ達成するのか』と。個人別の売り上げの表を毎日見てます」
「注文するのは、一般的な普通紙の無地とインクジェット。理由はショップの買い取り価格が高いからです。高くても1枚43円ですがね」
「(上司に)呼び出されえて、机叩いてどなられたり、『いついつまでにどれだけやります』と一筆書かされたり。11月1日に一気に数字が上がる人っていうのは、(金券ショップに)売ってますよ」
「配達エリアが2つ3つあると、そこに(営業が)3人、4人、5人と入ってきますから、みんなが取り合いできびしい。この時期は配達が増えるので、こっちは営業している時間はないです」
「ノルマやめてほしい。働くのがあほらしくなる」
日本郵便に関わってきた弁護士は、「ノルマが普通の勤務時間の中で消化できるのであれば問題はない。しかし、時間内でできない、あるいは内勤の人に販売ノルマを課すのは、明らかに業務命令として違法」という。
日本郵便は、「金券ショップへの持ち込みの事実は把握している。今後ないよう不適正な営業行為としてコンプライアンスに違反する旨を社員に周知していきます」という。そういうことじゃないだろうに。
日本郵政の株式は国が保有している。普通の会社とは違う。また、郵便は公共サービス的なものだ。民営化したからといって、一般会社なみのノルマを課すこと自体に無理がある。
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