「大勲位」中曽根康弘元首相(99)の孫で、かねて政界進出がうわさされてきた中曽根康隆氏(35)が21日、次期衆院選で群馬1区から立候補する意向を表明した。自民党からの出馬を目指すが、同区には自民現職がおり、別の候補擁立を模索する動きもある。康隆氏は公認が得られなければ無所属での出馬も辞さない構えだ。政界屈指の名門・中曽根一族の御曹司が、保守王国・群馬で祖父が挑み続けた「上州戦争」を再現する可能性も出てきた。

 康隆氏は21日、群馬県庁で会見し、次期衆院選で群馬1区からの出馬を目指す意向を表明した。「自民党の国会議員として、群馬から羽ばたきたい」と述べ、自民党の公認を目指す考えも示した。

 康隆氏は、中曽根一族のサラブレッド。14年衆院選でも出馬説が浮上し、政界進出が取りざたされてきた人物だ。祖父は中曽根康弘元首相、父は中曽根弘文元文相(71)。母は、前川喜平前文科事務次官の実妹。幼稚舎から大学まで慶応で、慶大では体育会ゴルフ部副将として活躍。アイドルグループ「嵐」の櫻井翔と同窓で、米コロンビア大大学院時代は、自民党の小泉進次郎筆頭副幹事長とともに学んだ。外資系証券会社に勤務後、13年から父の秘書として働いた。

 先月末、父の事務所を退職。その後、急転直下、衆院解散の流れになった。康隆氏は18日付のブログで「自身の政治活動に精進していくことを決意した」と表明。「満を持しての行動」(自民党関係者)だ。康弘氏の選挙区は、旧群馬3区と比例北関東、弘文氏は参院群馬。1区出馬を目指す康隆氏は、地盤を継ぐ「世襲候補」ではない。

 群馬1区は、複雑な選挙事情を抱えている。現職の佐田玄一郎元行政改革担当相は、スキャンダル報道などを理由に、地元がすでに不支持方針を決定。昨年5月に行われた公認候補選考会では、康隆氏と比例北関東の尾身朝子衆院議員(56)が名乗りをあげ、結果的に尾身氏が「公認申請候補」に選ばれた。

 しかし佐田氏も今回も出馬の意向で、地元は尾身氏を1区の候補として公認申請の方針。一方、康隆氏はこの日、自民公認を得られなくても「不退転の覚悟で臨む」と無所属出馬も辞さない構えを明言した。党側の調整難航は確実だ。

 4人の総理を輩出した群馬は、長年自民党が議席を得てきた保守王国だが、康隆氏の登場で「保守3分裂」の可能性もある。民進、共産両党も候補を擁立する同区内は、衆院選屈指の超激戦区となりそうだ。

 ◆前回の14年衆院選群馬1区の開票結果 (1)佐田玄一郎氏(自民・前職)6万1927票=当選(2)上野宏史氏(無所属・前職)5万4530票(3)宮崎岳志氏(民主・元職)4万9862票=比例当選(4)店橋(たなはし)世津子氏(共産・新人)2万1394票。