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2017-09-24

「解散権」の議論について、ざっくり総まとめ。Add Star

| 「解散権」の議論について、ざっくり総まとめ。を含むブックマーク 「解散権」の議論について、ざっくり総まとめ。のブックマークコメント

この前、ほんのちょっとプロローグで描いたが、時間がないので総まとめ的に。

解散権に関する法哲学的議論は実際の政局を受けてブーム

毎日新聞

衆院解散:これでいい? 有識者憲法の規定逸脱」 - 毎日新聞 https://mainichi.jp/senkyo/articles/20170923/k00/00m/010/101000c

はてブ

http://b.hatena.ne.jp/entry/s/mainichi.jp/senkyo/articles/20170923/k00/00m/010/101000c

朝日新聞社説でも書いた。

社説は写せるから、写しておこう。

社説首相解散権 「伝家の宝刀」再考の時:朝日新聞デジタル http://www.asahi.com/articles/DA3S13145023.html


安倍首相が解散に踏み切ろうとするいま、首相がすべての衆院議員をクビにできる解散権のあり方に疑問が募る。

 「首相専権事項」「伝家の宝刀」などと言われるが、憲法にそんな文言はない。

 内閣不信任案が衆院で可決された時の対抗策である解散(69条)と、内閣の助言と承認による天皇国事行為としての解散(7条)があるだけだ。

 これまでの解散は7条を根拠とした例が多い。ただ憲法は、首相はどんな解散でもできるとも、逆に恣意(しい)的な解散はできないとも書いていない。

 選挙民意を問うことの意義は大きい。しかし、首相が自らの判断でいつでも解散できる現状は弊害も生んでいる。

 日本では3年ごとの参院選の合間に、不定期に衆院の解散・総選挙が行われ、国政選挙のサイクルが短い。その結果、バラマキ予算が幅を利かす半面、与野党とも国民負担を求める政策には二の足を踏みがちだ。

 議員たちは「解散風」のたびに浮足立ち、長期的な政策立案がおろそかになる傾向もある。

 与野党がもっと腰を落ち着けて政策論争に臨むためには、衆院議員がなるべく任期をまっとうする原則を確立する必要がある。各党は任期中に実現をめざす公約を掲げ、有権者は4年間の実績を見定め、次の選挙の判断材料にする。そんなサイクルを確かなものにしたい。

 内閣不信任案が可決された場合を除き、首相解散権抑制することはその有力な手段だ。

 内閣一方的な解散は憲法精神に反するとして、故保利茂衆院議長が約40年前、次のような見解を残している。

 「(解散は)内閣恣意によるものではなく、あくまで国会が混乱し、国政に重大な支障を与えるような場合に、立法府行政府の関係を正常化するためのものでなければならない」

 いまも通じる議論である。

 衆院憲法審査会では、解散手続き法律で定める方法や、憲法に解散の条件を明記する方法が議論された。主要政党が申し合わせる手法もありえよう。

 日本と同じ議院内閣制英国では2011年、議会内閣を不信任した時と、与野党事実上合意した時以外の解散をほぼ禁じる法律が成立した。与党の都合で選挙を行うために、自由議会を解散できる国は世界民主主義国で珍しい。

 野党の混乱のすきをつき、疑惑に対する追及をかわすための「大義なき解散」。それは、立ちすくむ日本民主主義の現状を映しているようにも見える。



バズフィードも、はやりにのって記事を書いた。

「いまなら選挙に勝てそうだから解散」は許される? さすがにダメ、と憲法学者が語る理由 https://www.buzzfeed.com/jp/satoruishido/kaisan?utm_term=.xf7xxY4np#.oma11r5WP


南野森氏の、2014年インタビュー記事(孫引き

http://ameblo.jp/lovemedo36/entry-11955189567.html

憲法学者南野森氏

朝日新聞のオピニオン欄「耕論」より

====================

日本国憲法では、誰がどういう場合に衆院を解散できるのか、明確に定めた規定がないため、69条に定める内閣不信任決議案が可決、または信任決議案が否決された場合に限られるという説(限定説)と、天皇国事行為を定めた7条3項を根拠に内閣はいつでも自由衆院を解散できるという説(非限定説)に分かれました。

(※一度は「不信任案限定」とされたが)

その後、吉田内閣は非限定説の立場採用して不信任決議なしで衆院を解散。「抜き打ち解散」と呼ばれました。これがその後も踏襲されて、解散権首相の「伝家の宝刀」に…

(略)

本来、解散は内閣衆院が抜き差しならないほどの対立状態に陥った時、そのどちらを是とするかを国民に聞くものですから、そうした対立状態がないにもかかわらず解散するには、国民意思を問うべきよほど大きな論点がなければなりません。

郵政解散」は、参院で郵政民営化法案が否決されたことが理由とされました。本来、憲法上は参院で否決されても、衆院で3分の2以上の賛成で再可決すれば法案が成立するわけですから、そうした手続きを経ずにいきなり衆院を解散してしまった。これは解散権の乱用


そして、そういう新聞の論考を含めても、結局このtogetterまとめ(作成:おれ)以上に内容が充実しているものはない。

衆院解散(首相の「解散権」)と、憲法の関係を考える。~大屋雄裕氏のツイートを中心に - Togetterまとめ https://togetter.com/li/976420

もともと、憲法の議論っていうと九条をめぐる戦争と平和とかの話がメインで、統治の枠組み、制度の話はあまり盛り上がらない。

さらに、憲法とは別の「何がより民主政治の面での”正統性”があるか」に関する、慣習や意義付けの話はさらにマイナーで、誰もあんまり語らない。自分比較的、そのマイナーテーマを、トピックがあるごとに結構こつこつと蓄積していったから、例によって、「最近、これを言い出したそこらへんのおあにいさんとは、おあにいさんのできが違うんでえ」、ってやつである。

なんと2017年衆院解散への流れを受けて、追加更新しました。



こんな過去記事があった。「解散反対」はイコール、『現首相に引き続き政権を担ってほしい』?

「大義なき解散だ」という言葉は「現政権は引きずり降ろすほどの失政はしてない」と認めることにならんか? - http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20141118/p2



という感じで紹介したうえで、まとめる


もともと「七条解散」にアルスラーン王子並みの「出生の秘密」がある、のはその通り。…ってことは、整理してない憲法条文の欠陥、じゃないかえ???改憲


アルスラーン王子が、王の血をひいていないのじゃないか、という秘密を抱えているように、そもそも七条解散というのは憲法上できないんじゃないか、という議論。

これは議論としては十分なりたち、最後は裁判所が「統治行為論」で投げたってのがある。

https://kotobank.jp/word/%E4%B8%83%E6%9D%A1%E8%A7%A3%E6%95%A3-1725390

本国憲法第7条に基づき、内閣の助言と承認により天皇国事行為として行われる衆議院の解散。ただしこれは通称であり、法令に明記された用語ではない。天皇国事行為として行われるが、天皇は国政に関する権能を有しない(憲法第4条)ため解散権内閣にあり、事実上内閣の長である内閣総理大臣解散権を握っている。つまり七条解散は、内閣総理大臣国民に信を問う必要があると主体的に判断して解散するものと解釈されている。このため解散権は「内閣総理大臣専権事項」「首相伝家の宝刀」などといわれる。

 なお解散には、内閣不信任決議案が可決された場合などの憲法第69条に基づく解散もある。解散権69条解散に限定されるとの学説もあるが、1952年昭和27)の吉田茂内閣の「抜き打ち解散」以降、七条解散が定着した。

こういう議論を中学校でみっちり教えてほしいと本当に思う。そうすれば、憲法政治と法に対する不信と諦念を、子供のころから植えつけることが出来るからだ。

いや、アルスラーン王子とは認めず、「簒奪者」とヒルメスは思い続けているように(たとえがわかりにくいって!!)、七条解散をさかのぼって違憲とし、その結果生まれた各種の政権の正統性を丸ごと否定し、日本戦後民主政治の系譜がぐちゃぐちゃになっても、当方は一向に構わんのだが!!


素直に読めば七条解散は違憲だ、という主張はあるにしても、やはりもう少し整理して憲法を作るべきじゃなかったんかいな、マッカーサーさんよ…と。


そういえば、今回政治の空白とかいう話になって、参院緊急集会の話も出ているけど、これも憲法の中でエラーバグがあることは一部で知られている

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8F%82%E8%AD%B0%E9%99%A2%E3%81%AE%E7%B7%8A%E6%80%A5%E9%9B%86%E4%BC%9A

憲法は「衆議院が解散されたときは、参議院は、同時に閉会となる。但し、内閣は、国に緊急の必要があるときは、参議院緊急集会を求めることができる」と定める(日本国憲法第54条第2項)。

衆議院の解散[編集]

緊急集会を開くには「衆議院が解散されたとき」でなければならない(日本国憲法第54条第2項)[5]。本来、国会は同時活動を原則とするが、この原則を貫徹すると衆議院が解散されている間いかなる事情においても国会は活動できなくなってしまうことから、憲法上、緊急の事態を解決するために設けられたのが参議院緊急集会制度である。

任期満了の場合の問題

衆議院議員任期満了による総選挙の場合は、通常は任期満了前30日以内に行われるため(公職選挙法31条1項)、選挙期間中でも衆議院議員の身分を失わないので、緊急集会の問題は生じない。しかし、任期満了前の選挙期間国会閉会後から24日取れない場合は、例外的国会閉会の日から24日以後30日以内とした上で衆議院議員任期満了後に総選挙が行われる可能性もある(公職選挙法31条2項)。そのため、解散後の総選挙の場合と同様に衆議院議員不存在となる。しかし、憲法54条は、緊急集会衆議院が解散された場合としていることから、任期満了後から衆議院議員が選出されるまでの間に衆議院議員存在しない状況において国に緊急の必要がある事態が発生しても、緊急集会を求めることは困難とされる


憲法を作ったやつはまったくうかつな…だからバターン半島から一度は追い出されるんだよ!!(禁句)


だから、そもそも解散権憲法で明記すべきでは(制限するならするも含めて)、という議論もある


同時に、今回もバグが発生した「要請があったら国会を開かねばならないとして、いつ以内に?」というところも、自民改憲案にあるように憲法の条文で期日を設定すればいいと思うのだが…会期制廃止論とかもあるね



憲法を変えなくても、政党間で申し合せたり、下位の法律を作ればいい」か?


これに対し

曽我部真裕(そがべ・まさひろ) 氏の論考。

プロフィールを見ると「専門は憲法情報法。2001年京都大学院法学研究科講師准教授を経て2013年から教授パリ政治学院などで客員研究員客員教授を務めた。放送倫理・番組向上機構(BPO)放送人権委員会委員。著書に『反論権と表現の自由』(有斐閣)など」とある

https://thepage.jp/detail/20170504-00000002-wordleaf?pattern=1&utm_expid=90592221-90.Psn9uNmMQsqD2PQwW8WpfQ.1&utm_referrer=https%3A%2F%2Ftogetter.com%2Fli%2F976420%3Fpage%3D3

解散権国王がもつ大権であり、立憲君主制作法に従い、首相の助言に基づいて解散権が行使されてきた(したがって実質的な決定権は首相にある)。ところが、こうしたあり方は、与党に有利な時期を見計らっていわば党利党略で解散・総選挙を行うことを認めるものだという批判が以前から根強くあり、近年の政治改革の流れの中でこの点についても改革がなされたのである。さらに、近年のイギリスではハング・パーラメント(どの政党単独過半数をもっていない状態)によって連立政権常態化しつつあり、それに対応するために議会任期の固定が必要だという主張もあった。

 議会任期固定法は、議会任期を5年に固定し、これに伴って解散が制限されることになる。ただし、内閣不信任決議案が可決された場合と、下院が3分の2以上の多数によって自ら解散を決議した場合には解散が行われるものとされた。今回の解散は、実際には首相の主導によって進められたが、法律上は自主解散という位置づけになる。

日本で、議会任期固定法のような法律を制定することが憲法上許されるかどうかは明らかではない。なぜなら憲法上、内閣自由解散権が認められるということであれば、国会法律でそれを制限することは、憲法上の権限を下位法で制限することになるからである

ただ、主要政党で申し合わせをすれば、憲法を変えなくても実質的な「改憲」になるってことだよ、これ。改憲クーデター(笑)

逆に「今の衆院議員任期4年は長すぎる。3年を新たな”任期”にして、自発的に解散しよう」と、「主要政党が申し合わせ」れば、憲法第四十五条任期は4年と定めていても実質上は3年になる…そういうのもあり?



直近の民意」が重要なら、いつでもそれが理由になるのでは?と


直近の民意概念あれば「大義」問題は全て解決しないか?と。

これも明文規定ない「べき論」ですが、最新の選挙結果が一番重い民意だとの「直近の民意概念(07年参院選後にブーム!になりましたなあ)が正しいなら

直近の民意を聞くため解散」で大義になっちゃうのでは(笑)と。

もちろん「直近の民意」自体、法的な何かがあるわけではなく、「べき論」なので、直近の民意なんて物自体に重みがないんだ、といえば言える。



そもそも7条解散が合憲でも違憲でも、69条に基づき「与党が不信任案を(なれ合いで、名目上)可決すればいいだけ」だから議論も無意味

https://thepage.jp/detail/20170504-00000002-wordleaf?pattern=1&utm_expid=90592221-90.Psn9uNmMQsqD2PQwW8WpfQ.1&page=3&utm_referrer=https%3A%2F%2Fthepage.jp%2Fdetail%2F20170504-00000002-wordleaf%3Fpattern%3D1%26page%3D4

実効性の点とも関連するが、不信任決議があった場合に限って解散を認めるとしても、馴れ合い不信任決議を可決するという抜け道もある(1948年10月の衆議院解散馴れ合い解散」はそのようなものであった)。


もちろん「不信任をした人を、選挙のあともう一度首班指名するのは筋が通らない」みたいなべき論はあるだうし、ドイツはこういうことを制限する法規定もあるみたいだが…それでも、現行憲法上でもそういう手法があるということは押さえておくべきでしょう。


そもそも衆院任期が安定して4年になったら、「じっくり腰を据えて政策に取り組む」議員がいるのかねえ?

解散がない参議院で、じっくり腰を据えて取り組んでいる議員がどれだけいるかっ。イッタ・ヤマモトやヨシフ・アリタがそうだというのかっ(笑)

だいたい、議員どもというのは、人気いっぱい身分が保証されていればそっちのほうが怠惰で傲慢自己中心になるものなので、いつでも首が切られる存在だというふうにしたほうが少しはマシになる…かといえば、今度は選挙選挙で近視眼になりがちなのもたしかなのだ(笑)。何とか味のカレーカレー味のなんとかじゃないけど(笑)、どっちもダメな議員が生まれるのだから、衆院参院は別の種類のダメさを分担したほうがいいな…というぐらいには、自分は「権力への疑念」を持っている(笑)




「解散が妥当かどうかは「選挙」という、最大最高の民意判定機によって結果が出る」という論




というわけで、民主主義乾杯!」「くたばれカイザー!」ということで〆て・・・・・いや、最後は憲法それ自体に語ってもらおう。


http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S21/S21KE000.html


第十五条 4  (略)…選挙人は、その選択に関し公的にも私的にも責任を問はれない。

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