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川澄綾子さん&下屋則子さんの溢れるセイバーと間桐桜への愛……。今だから聞いてほしい『Fate』のあれこれ。『Fate/stay night [UBW]』声優インタビュー

歴史に名を残した英雄たちが現代へと蘇り、万能の願いを叶える力である「聖杯」を手にするため、生死を賭けたバトルロワイヤルを行う「聖杯戦争」。

未だに新たな展開が行われ続ける、規格外の人気を持った『Fate/stay night』。シリーズでも人気の映像作品のひとつであるTVアニメ『Fate/stay night [Unlimited Blade Works]』(以下、UBW)の一挙放送が、9月16日よりAbemaTVの「アニメ24チャンネル」にて行われています。

その放送も間近に迫る中、共に『Fate/stay night』のメインヒロインを演じた、セイバー役・川澄綾子さんと間桐 桜役・下屋則子さんのお二人にお話を聞く、大変貴重な機会をいただきました。

最初の『Fate』の出会いから、今回放送される『UBW』、そして劇場公開が迫る劇場版『Fate/stay night [Heaven's Feel]』(以下、HF)に至るまでのエピソード……。『Fate』ファン必見の内容を最後までお見逃しなく。

気づいたら10年が経っていた『Fate』との出会い
──最初の「Fate」との出会いを覚えていますか?

川澄綾子さん(以下、川澄):最初にオーディションを受けたのはTVアニメが始まるよりも前でしたから……12年前くらいになるでしょうか。

下屋則子さん(以下、下屋):それこそ[HF]の収録現場では、キャストのみなさんとオーディション当時の話をしていました。意外とみなさん当時のことを覚えられていて、「実はこの役も受けてたんだ」と仰られていたり。

川澄:[UBW]や[HF]のような、大きなアニメ化というのは回数が限られるのですが、その間にもいろんなゲーム、スピンオフ、OVA、ドラマCDと、とにかくもいろんなものを録ってきたので……。

12年間ずっとセイバーを演じていた印象はあります(笑)。

下屋:特に川澄さんは、回数がすごく多いですよね(笑)。

川澄:則ちゃんも『Fate/Zero』(※1)(以下、Zero)に出てるけど、あの時はまだ桜は小さいころだしね。サーヴァントであるセイバーは基本年を取らないので、いつも同じ姿で出て来ますから。

※1:虚淵玄氏原作の『Fate/stay night』の前日譚にあたる作品。衛宮士郎の養父である衛宮切嗣とセイバーが参加した、第4次聖杯戦争が描かれた。2011年から放送されたTVアニメもヒットし、『Fate』人気を大きく押し上げる要因となった。

──最初に『Fate』という作品に関わった時、どういう印象を抱いていましたか?

下屋:初めてのアフレコの時、「世界観が複雑な作品なので、これを読んでください」みたいな感じで、ものすごく分厚い資料をもらったんです。結局資料で読むだけじゃ理解しきれなかったので、実際に演じてFateの世界に触れて理解していった感じですね。

川澄:あったあった。私はオーディションでセイバー役が決まった時、周りに『Fate』を知っていた人が多かったんです。私自身は実は存じ上げなかったんですけど、「本当にすごい作品で、すごく人気の役だよ」と言われたのを覚えています。

実際、取材される媒体の方とかも、すごく『Fate』が好きの方が多くて。最初のアニメをやっていたころに、「実は[HF]ではこうなっちゃうんですよ」みたいなネタバレを話されたこともありました(笑)。


──それは……同業者として大変申し訳ないです(笑)。

川澄:他のところでも話しているかもしれませんが、一番最初の『Fate』の時に発した「問おう、あなたが私のマスターか」という台詞が、これだけ大勢の人に知ってもらえるようになったことがすごく嬉しくて。

“セイバー”という名前を知らない人でも、パロディやCMなどで聞いたことのある決め台詞として、ここまで大きくなったんだなと思うと感慨深いですね。

──一人のキャラクターを10年以上演じられるということに、役者としてはどのような感想を抱かれているのでしょうか?

下屋:先ほどの『Zero』の話もそうなのですが、同じキャラクターといっても、10年間全く同じものを繰り返しているわけじゃないんです。不思議な感覚がないわけではないんですが、「今度はこういう桜をやるんだ」というのを繰り返している内に、気づいたら10年経っていた……という感じかもしれませんね。

違う年代の桜を演じることで、よりキャラクターに深みが出ていったような気がしますね。

川澄:『Fate』とは長い付き合いになりますが、毎週収録をする時期もあれば、今回は1ヶ月、今回は3ヶ月何もなかったなという時もあって。

なので同じシリーズの作品でも、一回一回の収録に新鮮な気持ちで臨むことができています。


──スピンオフ作品も数多くが制作されています。

川澄:いろんなクリエーターの方が関わってくれる機会も多くなりましたし、そこにファンの人が加わることで、どんどん『Fate』の世界観が作られていった感じですよね。

下屋:そうですね。みんなで一緒に作ってどんどん大きくなっていったなーっていう感覚があります。

川澄:そういったスピンオフなどの要素が、元の作品にフィードバックされることもありますし。この12年の間、本当にいろいろな人達に育てられてきた作品だと思っています。

人気がさらに高まっていくきっかけを実感したのは『Fate/Zero』
──そんな『Fate』のすごいところは、今から10年以上前の作品にも関わらず、そこから現在に至るまで、人気が加熱し続けていることだと思います。キャストとしても作品人気の高まりを実感することはありますか?

川澄:それはありますね。もちろん一番最初の時からすごく人気がある作品だったんですが、特に見えてくる風景が変わったなと感じたのが『Zero』の時です。

イベントでステージに立った時、今までお客さんの9割が男性の方だったのに、女性の割合がものすごく増えたんですよ。

例えばイベントでは「問おう、あなた達が私のマスターか」という台詞を言う機会もあるんですが、最初は「うおおお!」っていう野太い声だったのが、「キャー!」って歓声も加わるようになって(笑)。

私たちキャストには、ユーザー数や視聴数などの具体的な数字は分からないので、あくまで目に見える範囲の感覚的な話にはなるんですが、そこからさらに『Fate/Grand Order』(※2)(以下、FGO)で女性が増えていったりと、どんどん変化しているのは面白いなと思いますね。

下屋:確かに『Zero』から一気に女性ファンが増えましたよね。あそこが大きな分岐点だったような気がします。

川澄:そこからの[UBW]もね、すごくカッコ良い男性がたくさん登場する、ヒーローたちの話なので、女の子達にぜひ見てもらいたいですね。

※2:アニプレックスより配信中のスマートフォン向けアプリ。『Fate』の生みの親である奈須きのこ氏らによる、スマホアプリの常識を覆すストーリーが大きな話題を呼び、爆発的な大ヒットを記録。新たな多数の『Fate』ファンを生み出した。2016年12月31日には、長編TVスペシャル『Fate/Grand Order -First Order-』も放送された。

──いくつもの作品に出演していく内に、キャラクターへと見方など、お二人の中で変化した部分はありますか?

下屋:私の場合、桜は少し特殊なキャラクターで、境遇や全貌というのが、[HF]以外のルートでは描かれないことが多いんです。

間にはゲームの収録もあり、[HF]のシーンも演じているんですが、まっさらな状態で入った当時と今では全然違うなと。ベースの部分では、もちろん変わらない部分はあるんですけど……。

例えば『Fate/Zero』では、桜の幼少期を演じられて、虫蔵のシーン(※3)を初めてアニメーションで見ることができました。桜がどういう経緯で間桐家に来て、どういうことがあったかというのもきちんと描かれて……。

そうした経験を経てたどり着いた[HF]は、振り返れば10年前の時とは感じ方が違いましたね。

川澄:私もやっぱり、一番最初は台本から得る情報だけで演じていたので、当時と今では全然違います。

ゲームの収録の後に、ゲームを自分でもプレイして初めて知ったことも多かったですし、ちゃんと理解が深まったのは、結構時間が経ってからだったと思います。

あとはセイバーの場合、そこからいろんなスピンオフや10年前の話があったり、最近では『Garden of Avalon』(※4)とか、アーサー王時代の話が描かれることも増えてきていて。

そういう意味では、自分にとって一番大きな変化は、アーサー王時代への理解が深まったことかもしれませんね。

アーサー王としてのセイバーを演じるにあたって、アーサー王関連の本を読んだり、映画を観たりもしたんですが、これがなかなか面白くて……。もっとも、そこに出てくるアーサー王を演じているのは、だいたいおじさんなんですけど(笑)。

一同:(笑)。

下屋:同じアーサー王でも、作品によって全然違いますよね(笑)。

川澄:そうしたアーサー王としての時代のエピソードや、『Fate/hollow ataraxia』(※5)では、セイバーがサーヴァントになる前の話を演じました。

セイバーが聖杯戦争に参加するまでの間に、どんな想いを抱いていたかという部分の理解は、かなり変わってきていると思います。

※3:間桐家が桜に行っていた蟲を使った儀式。筆舌に尽くしがたいほどの陵辱なシーンが描かれた。
※4:『Fate/stay night [Unlimited Blade Works]』の『Blu-ray Disc Box I』に特典として同梱された、奈須きのこ氏書き下ろしの小説。アーサー王として国を治めていた、セイバーの生前の姿や、円卓の騎士達の活躍が描かれた。後にオリジナルサウンドトラックと共に、ドラマCDとして発売されている。
※5:TYPE-MOONより2005年10月28日に発売された伝奇ビジュアルノベル。『Fate/stay night』の後日談的な作品で、コミカルなシーンが多いのが特徴。

綺麗事だけじゃない「人間臭さ」こそが、間桐桜の魅力
──キャラクターについてのお話をお聞きできればと思うのですが、川澄さんから見た桜、下屋さんから見たセイバーはそれぞれどんな印象をもっていますか?

川澄:実は私、桜が大好きなんです。

下屋:そうなんですか!? 嬉しいです!

川澄:ヒロインの3人(セイバー、遠坂凛(CV:植田佳奈さん)、桜)は全員が本当に魅力的なキャラクターだと思います。

凛が士郎をエミヤにならない道に引っ張っていく存在なら、桜は自分の方向に引きずり込む存在です。凛と桜は姉妹でありながら、そういった部分がとても対照的ですよね。

桜自身が間桐家に引き取られてから、辛い境遇の中で見つけた希望である士郎を絶対に逃したくない、他人には渡したくないという、綺麗事だけじゃ片付かない感情。人によっては「重い」とも捉えてしまうその想いの強さが、すごく魅力的なキャラクターだと思います。

──確かにセイバーと凛は、精神面でも強いキャラクターで、ある種理想的な存在と言えますよね。

川澄:セイバーはアーサー王時代のことを考えるとまた違ってくるんですが、特に対照的なのは凛ですね。桜は、自分では悪いと分かっていてもどうしようもできない、女性ならではの恐さとか執着をみせてくれることがあって、私はそういう部分が好きなんですよ。

下屋:本当におっしゃる通りで、桜はすごく人間臭いキャラクターなんです。本当は誰もが抱くような嫉妬だったりという感情を持っているだけで、現実にはみんなも同じだと思うんですよね。

川澄:だから前に桜が「怖い」ってファンの方に言われているのを聞いたとき、「いやいや、ホントは女性はこうだから」って思ったんですよ(笑)。

下屋:綺麗事とかじゃない、一人の普通の女の子なんですよね。今回の[HF]の中で、戦いが終わって士郎を連れ帰ってきたセイバーに怒りをぶつけるシーンもあったり……。

川澄:いつも穏やかな印象を与えてニコニコしている桜が、そこで士郎に対する強いこだわりを見せるんですよね。

桜って普段はセイバーにも気後れするタイプなんですけど、そういう場面での一瞬の感情の爆発とかが、内面をよく表しているなと。


──そうした部分は凛やセイバーにはない要素ですね。

川澄:凛はすごく頭が良くて、自分の感情をコントロールして理路整然としている子だから、自分の気持ちを的確に言葉で発することができるタイプ。

対照的に桜は、普段の気持ちをものすごく押さえちゃっているので、急に出た言葉が「怖っ!」ってなるのかなと(笑)。

もし桜が全部自分の気持ちを言えていたら、ちゃんとみんなにも分かってもらえるんだけど……。

下屋:でも、それを言える子だったらこうはなってないんですよね。

川澄:そう、それが桜なんだよね。

下屋:凛とかセイバーに対しても、普段は遠慮しがちなんですが、こと先輩(士郎)が絡むとそうじゃなくなってくる。

こういう子は現実にもいると思いますし、すごく生身の人間らしさというのを感じられますよね。

川澄:だから今回、[HF]の物語が描かれることで、ちゃんとみんなが桜のことを理解して、好きになってくれたら嬉しいなと、ずっと思っているんです!

──川澄さんの桜への愛が痛いほど伝わってきました(笑)。下屋さんはセイバーをどう見ていますか?

下屋:私にとってのセイバーは、『Zero』と『stay night』で印象が全然違うんです。『Zero』のセイバーって本当に、笑顔のシーンが少ないですよね。

桜の目線としては、一緒に住んでいたご飯を食べている時の印象が強くて(笑)。

川澄:作中での桜は、そこしか見てないことになってるんだよね。

下屋:全体的に見れば、セイバーは凛としていて勇ましいキャラクターなんですが、実は可愛いものが好きで、食いしん坊だったり、可愛らしい姿がすごく好きです。

『Zero』ではそういうところがあまり描かれてなかったので、川澄さん自身も『Zero』と[UBW]では、違うイメージで演じられたのかなということも気になりました。

川澄:『Zero』の当時は、もし『Garden of Avalon』みたいな過去の話があったとして、そこから聖杯戦争に呼ばれたらという事を考えていました。

そうなると、やっぱりアーサー王然とした雰囲気と、聖杯を求める気持ちがとても強いだろうなと。「聖杯問答」という王様3人が議論を交わすエピソードもありましたし、よりアーサー王らしさを意識して演じるようにしていました。


──その後に、第5次聖杯戦争に参加するセイバーを、改めて演じることになります。

川澄:[UBW]では、『Zero』の最後があの終わり方をしているだけに、セイバーが聖杯を求める気持ちはさらに強くなっていると思います。

あくまで原点は『stay night』の方なので、難しいところではあるんですけど、[UBW]では、アーサー王らしい部分を少し減らすとか、『Zero』をやった後だからこその違いは意識しましたね。

──アニメでは『stay night』のあとに、一度過去の『Zero』への遡り、再び『stay night』に戻るという特殊な流れとなっていましたが、演じる側としてやはり難しい部分もあったのでしょうか?

川澄:そうですね。特にすごく難しいと感じたのが、[UBW]の1話の時に『Zero』の印象を引きずりすぎて、収録で「重すぎる」と言われた時です。

自分としてはあの『Zero』のラストシーンを経たあとなら、これぐらいは重いだろうと考えていたんですが、すると「違う違う」と(笑)。

一応[UBW]には結構『Zero』を踏まえたシーンも多いんですが、それに引きずられすぎてはいけないとアドバイスしていただけました。

下屋:確かに、そこまで男らしくしないでということを言われていましたよね。けど、全体を通して演じてそういう想いを抱かれた川澄さんの気持ちはすごく分かります。


──今お二人の話を聞いてふと思ったのですが、自分が演じているキャラクターを褒められるのはどういう感覚なのでしょうか?

川澄:そうですね、とても嬉しいです。特に長いこと一緒にやっていると、お互いにお互いの役が大好きなことはもちろん分かっているんですが、この3人に関しては本当に全員、とっても違った魅力があるので。

下屋:ええ、本当に三者三様という感じで……。

川澄:不思議なことに[UBW]をやっていたときは、凛のことが本当に大好きになっていた一方で、『Zero』をやっていたころはアイリ(※6)が大好きで大好きでしょうがなかったということもありました(笑)。

下屋:私は、嬉しいし照れます(笑)。特に十何年と一緒に同じ作品をやってきている役者さんにそういう風に言ってもらえるとやっぱり嬉しいですね。

川澄:桜に関していうと、何度か映像化されている中でも、[HF]だけは映像化がちょっと難しいかもしれないと言われていたところに、劇場版三部作っていう素敵な舞台が用意されることになって。

初めて知った時は、桜はすごく素敵な役だし、素敵な役者さんなので「則ちゃん良かったね」って感情が真っ先に浮かんできて……あの時の則ちゃんを思い出すと、今でもウルっと来ます。

下屋:2014年の発表の時ですよね。私自身もあんなに泣くと思わなくて……。

川澄:ごめん、本当に今泣きそう(笑)。


──メイクが! メイクが落ちちゃう!

下屋:やめてそんな! 川澄さんが泣いたら私も泣いちゃいますから!(笑)

川澄:それくらい、本当に良かったなと思ってます。……そろそろ納めないとメイクさんに怒られる(笑)。

※6:『Fate/Zero』の登場人物で、本名はアイリスフィール・フォン・アインツベルン。第4次聖杯戦争では、隠密行動を取る切嗣に代わり、表向きのマスターとしてセイバーを行動を共にした。

──(笑)。では次の質問に移りましょう。セイバーと桜、二人のキャラクターに魅力を一番感じた具体的な瞬間やシーンはありますか?

下屋:一番となると難しいんですけど、桜目線でいうなら、衛宮家で美味しそうにご飯を食べている時の食欲旺盛なセイバーさんが一番好きです。

川澄:私は、桜の耳元の髪をかき上げる仕草です。(ポーズをとってみせる)


──ああ!(笑)  アニメの中でも、あの仕草は必ず登場していましたね。

下屋:大体、先輩を起こす時はあのポーズですよね(笑)。

川澄:実は10年前からずっと、なんてあざといんだと思い続けていました(笑)。

でもそいうことを自然とできてしまう部分こそが桜の魅力なのかなと。さすがに、「ここのタイミングで耳を見せて……!」という計算まではしていないと思うんですけど(笑)。

一同:(爆笑)。

川澄:ゲームでの武内さん(※7)の絵も本当に可愛いじゃないですか。その印象がすごく残ってるので、どの映像化でもあれが見れると思って嬉しくなっていました。

あのポーズこそ、桜というキャラクターを全部表していると思いますね。

下屋:あの仕草、[HF]ではどうでしたっけ?(アニプレックス側のスタッフから、すぐに「あります!」との力強い返答が戻ってくる)──良かった、あるそうです(笑)。

川澄:すいません、なんか私、桜フェチみたいになってますね(笑)。

下屋:いえいえ(笑)。本当にありがとうございます。

※7: 武内崇氏。シナリオライターの奈須きのこ氏と並ぶ『Fate/stay night』の生みの親と呼ぶべき存在で、キャラクターデザインを担当。『Fate』シリーズの販売元であるTYPE-MOONの代表でもある。


──桜とセイバーといえば、[UBW]では主人公の衛宮士郎が、セイバーと桜の板挟みになるシーンなども描かれていました。

川澄:ありますね。桜目線からしたら当たり前なんですけど、桜にとってセイバーは、後から来た女なんです(笑)。

なので、拒否反応起こしたり、自分の居場所を奪われるかもっていう恐怖や焦りという感情を抱くのは当然で。ただあの3人は、ルートごとに受ける印象や関係性が違ってくると思いますね。

下屋:そうですね、特に[UBW]では士郎はセイバーと恋愛になるわけでもないので。

ただ、確かに桜のオアシスだった場所を犯されるのは、桜としてはたまったもんじゃないっていう感情はあると思います。でも、そういう士郎だからこそ、桜は好きになったのかなとも思うんですけど……。

川澄:いや! そんなんじゃないよ桜は。もっとドロドロしてるよ絶対!(笑)

一同:(爆笑)。

川澄:3人のヒロインの中でも、士郎にとって桜だけは存在な特別だと私は思ってるんです。士郎にとって桜はいて当たり前の存在だから、セイバーが来たからといって、そういう気は回らないんじゃないかなって。

──近すぎる存在であるが故に、気が回らなくなってしまうと。

川澄:ええ。もちろん、桜としてはすごく恐怖を感じたと思うんですけど、士郎としては別に凛と話すことにも気を使う必要はないだろうと考えているというか……。

[UBW]では実際に凛と恋愛関係になってしまうから、ちょっと難しいところなんですけど(笑)。

セイバーがこの家にいようがいまいが、衛宮家の中での桜の存在は絶対に揺るがないと、士郎は考えていると思いますね。

下屋:確かに士郎としてはそうだと思うんですけど、桜にとってはもう気が気じゃないですよね(笑)。

[UBW]では描かれないんですけど、そんなセイバーを見て、もしかしたら聖杯戦争に士郎が参加しちゃうんじゃないかって危機感を抱いていたかもしれない。あの物語の裏でも、間桐家の話はあるわけですから。


──そういった士郎を、お二人はどのように思われていました?

川澄:板挟みにはなっているんですけど、みんなに良い顔をしようとしているという印象は受けないですね。いわゆる、優柔不断さは感じません。

下屋:男として優柔不断で、あっちもこっちに行ってるわけじゃないんですよね。

川澄:「桜にしようか、セイバーにしようかな」みたいなところは一切無いですから(笑)。

そこはやっぱりなんかこう、士郎の士郎たる部分というか……だからこそ[HF]がああいう話になっていくんだろうなと。

下屋:あのお話は、主人公が士郎みたいな人じゃなかったら成り立ってないですよね。だからこそ士郎はあのままで良いんだと思います。

[UBW]を見直せば[HF]がより楽しく!
──[HF]では、セイバーと桜はお互い過酷な運命に立ち向かっていくことになりますが、もし自分自身がセイバーや桜の立場になったらどのような行動をとりますか?

川澄:それはもう、真っ先に逃げますね。サーヴァントとしての責務とか、そんな重いものは背負いません(笑)。

下屋:私も本当に全く同じです! 虫が大嫌いなので、とても間桐家になんかいられない!(笑)

私から見ると、本当に桜は我慢強い子で、そこがすごいと思うんです。普通はあんな目に合わされたら、逃げるという選択を考えると思うんですけど、本当に我慢強い子なんだろうなと思いました。

先ほどの話にもありましたが、そんな我慢強さがあるからこそ、自分が本当に言いたいことも我慢してしまうのではないかと思います。ただ、もしそれが私だったら絶対に無理です!(笑)


──確かに……(笑)。最近では、『FGO』をきっかけに『Fate』を知り、アニメの[UBW]で初めて『stay night』に触れる人も多いと思いかと思います。そういう方々に伝えておきたいことがあれば。

川澄:[UBW]には『FGO』に出てくるサーヴァントも沢山出てきます。

『FGO』だと他の世界観の英霊も出てきてしまう関係で、残念ながらクーフーリンが星3(※8)のサーヴァントになっているじゃないですか。けど、星3サーヴァントでも、アニメだとこんなに強いんだっていうことを分かってもらえるかなと(笑)。

※8:『Fate/Grand Order』における、各サーヴァントに設定されたレアリティ。星1~5の5段階があり、レアリティが高いほど強力なサーヴァントとされることが多い。

──ゲームのプロフィールには、いろいろとネタバレ書いてありますが(笑)。

川澄:そこは一度忘れてもらって(笑)。『FGO』と『stay night』は基本的に別の作品なので、それぞれに別の『Fate』があると認識してもらった方が良いとは思います。

そして、『FGO』をプレイしている人なら必ず一度は見たことがあるサーヴァントが、[UBW]には何人も登場します。

その原点となる活躍をみていただければ、『FGO』でメドゥーサとかクーフーリンが出てきた時、これまでとは違った喜びを感じ、よりゲームが楽しくなるんじゃないかと思います。

下屋:確かにこれだけ長くやってると、途中から入ってきたという方も多いですよね。[UBW]の一挙放送だけではなく、今度新しいブルーレイが発売される『Zero』も含めて、[HF]を見る上での最高の流れになっているので、是非お時間があれば見ていただければと思います。


──最後に公開が迫る[HF]に向けて、[UBW]の一挙放送に注目して欲しいというポイントを教えてください。

下屋:[UBW]の桜は日常的なシーンがメインで、その裏側でどんなことが起きているかは描かれていません。なので明るい一面が目立つんですが、そのあとに[HF]の物語を知ると、実は裏でこういうことがあったんだとかいうことが分かる関係性も、面白い部分だと思っています。

そんな[HF]での桜も、同じ存在ではあるんですが、私としては今まで演じてきた桜を一度リセットして、気持ちを1から作り直して演じたつもりです。そうした、[UBW]と[HF]での、桜の違いやギャップという部分も、注目していただけたらなと思っています。

川澄:私はやっぱり士郎がずっと言い続けている「正義の味方」という存在の意味が、[UBW]と[HF]でこんなにも変わってしまうのかという部分が、注目のポイントだと思います。

[UBW]で描かれた「借り物の理想でも良いという答え」に、問いを投げかけられることになり、作品の雰囲気もガラリと変わってくる。そのギャップこそが『Fate』だとも思うので、それぞれのルートで士郎が見せてくれる、異なる生き様の違いというのを感じてもらえたら嬉しいですね。


──なるほど。今日はありがとうございました!

最初の出会いから[UBW]、そして[HF]と、これまでお二人がどのような想いで『Fate』と歩んできたのかが明かされた今回のインタビュー。

劇場版[HF]が発表された時を思い出した際、川澄さんは本当に涙ぐみ、言葉に詰まってしまう一幕もあり、お二人がどれだけ『Fate』という作品に強い思い入れを抱かれているかが、聞き手の側にもヒシヒシと伝わって来るインタビューとなりました。

また対談の中でも何度か語られた通り、[UBW]と[HF]は、いわば表裏とも言える関係にある物語です。その両方を見ることでまた違った感動を味わえるようになっています。

未視聴の方はもちろん、リアルタイムで視聴済みの方にとっても、今回のAbemaTVでの一挙放送は[HF]に向けた復習をするのにピッタリのタイミングとなっているので、この機会を絶対にお見逃しなく!


[取材・文/米澤崇史 石橋悠]

「Fate/stay night [UBW]」独占先行放送カウントダウンSP

●9/16(土)放送特番の無料ビデオ視聴
10/14劇場公開記念!「Fate/stay night [UBW]」独占先行放送カウントダウンSP
https://abema.tv/video/episode/26-28_s1_p105

●第2部、第3部放送情報
第2部(#8〜16):2017年9月23日(土)19時/翌9時
<番組視聴URL>
19時:https://abema.tv/channels/anime24/slots/ARCHdASFEWYvDD
翌9時:https://abema.tv/channels/anime24/slots/9kw56KZfAHKSxP

第3部(#17〜25):2017年9月30日(土)19時/翌9時
<番組視聴URL>
19時:https://abema.tv/channels/anime24/slots/Bsj7JSSZyb4nCP
翌9時:https://abema.tv/channels/anime24/slots/9kw54W5x8kApUF
※各一挙放送終了後、翌週月曜日より振り返り放送実施(各日22時/27時より)

作品情報
劇場版 Fate/stay night[Heaven’s Feel]I.presage flower
2017年10月14日 公開

●スタッフ
原作:奈須きのこ/TYPE-MOON
キャラクター原案:武内崇
監督:須藤友徳
キャラクターデザイン:須藤友徳・碇谷敦・田畑壽之
脚本:桧山彬(ufotable)
美術監督:衛藤功二
撮影監督:寺尾優一
3D監督:西脇一樹
色彩設計:松岡美佳
編集:神野学
音楽:梶浦由記
制作プロデューサー:近藤光
アニメーション制作:ufotable
配給:アニプレックス

主題歌:Aimer

●キャスト
衛宮士郎:杉山紀彰
間桐 桜:下屋則子
間桐慎二:神谷浩史
セイバー:川澄綾子
遠坂 凛:植田佳奈
藤村大河:伊藤美紀
言峰綺礼:中田譲治
間桐臓硯:津嘉山正種
美綴綾子:水沢史絵
柳洞一成:真殿光昭
衛宮切嗣:小山力也
ランサー:神奈延年
ギルガメッシュ:関智一
ライダー:浅川悠
アサシン:三木眞一郎
キャスター:田中敦子
アーチャー:諏訪部順一
葛木宗一郎:てらそままさき
イリヤスフィール・フォン・アインツベルン:門脇舞以

>>「Fate/stay night[Heaven’s Feel]」公式サイト
>>「Fate/stay night[Heaven’s Feel]」公式ツイッター(@Fate_SN_Anime)



(C)TYPE-MOON・ufotable・FSNPC

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