若いお菓子職人さんでも知らない人のいるほど、珍しいフランスのロールケーキ、それが「ヴィーナスの腕」。
フランスの南西部、ラングドック・ルション地方に伝わるこのロールケーキ、名前の由来はもちろん「ミロのヴィーナスに腕があったら?」
片腕の女性が、完璧な美女へとなりますよね。
発祥は、フランスとドイツの国境、ナンシーという街という説もあります。ルーヴル美術館のミロのヴィーナスを見たパティシエさんが、よし、じゃあロールケーキで、失われた片腕をいっちょ作ってみるか、と。
現代では、お家に伝わる伝統菓子となって、ショーウィンドウでお目見えすることは少なくなった「ヴィーナスの腕」(le Bras de Venus)、特徴は、南仏産の良質なレモンを使う点です。
他にもチョコレート、カスタードを使ったものもありますが、要するに「ロールケーキ」ですね(笑)
日本でロールケーキといえばものすごくポピュラーですが(筆者は学生時代、3食主食にしていたぐらいです)、意外にも、フランスでロールケーキって、ほとんど見かけることはありません。
クリスマス時期の「ブッシュ・ド・ノエル」ぐらいですが、それもドイツ方面から伝わってきたということで季節限定。フランスで「ロールケーキ」、さほど知名度が高くありません。(ちなみにシフォンケーキも同様です)
気候のよい南フランス、イタリア国境の町、マントンのレモン祭でも有名ですよね。国内でレモンを作るのはこの地域だけです。毎年冬から春にかけては、オランジュ・サンギーヌ、オランジュ・アメール、ネーブル、グレープフルーツ、マンダリン、金柑、ベルガモットなど、柑橘類の天国です。
最近のパリのトップパティシエさんたちの動向としては、日本の「柚子」に注目している様子です。別途、ご報告いたしますね。
ロールケーキ型ではなくて、こんな風に中にびっちりとレモンカスタードを詰めた、小ぶりのタイプのものも。3時のおやつにぴったりです!
《今日のひとこと》ビーナスの腕なので・・あまり太すぎたり、筋肉質だったりしないほうがいいかもしれませんね。清く、正しく、美しく、タカラジェンヌの如き、優雅さを生地に織り込んで、丁寧に作ってみましょう。