防衛省向け通信衛星の損傷事故を巡り、NECが三菱電機に賠償請求していることが分かった。下請けとして参画した三菱電機の責任を明確にしようという意図がうかがえる。宇宙ビジネスへの参入企業が増える中、下請け企業による事故責任のあり方を探るモデルケースにもなりそうだ。
「あまりに初歩的。聞いたことのない種類の事故で驚いている」。業界関係者がこう話す問題の事故は、2016年5月、打ち上げ施設のある中米ギアナへの衛星輸送中に発生した。輸送用コンテナをシートで梱包する際、気圧調整用のバルブまでシートを覆ったため、貨物機内とコンテナ内の気圧差でコンテナが変形。積んであった衛星のアンテナなどが壊れてしまった。打ち上げは当然、中止。衛星は今も修理中で再打ち上げは18年3~9月の予定だ。
この通信衛星はミサイル防衛の強化などに備え、防衛省が計画したものだ。高速・大容量の専用衛星を配備し、自衛隊部隊の指揮運用を効率化する狙いがあった。PFI(民間資金を活用した社会資本整備)方式を採用し、スカパーJSATやNECなどの企業連合が13年に2基の整備・運用を約1200億円で受注。1号機は損傷したものの、2号機については17年1月に打ち上げ済みだ。
●防衛省の通信衛星整備・運用に伴う枠組み
日経ビジネス2017年9月25日号 14ページより