分散投資という意味では日本国債を買うのは常識!?
個人投資家で、投信など間接的にせよ日本国債を買っている人は稀かもしれません。バランスファンドなどで組み込まれている、という場合を除いて生の債券を買い付けている人になるともっと数が少なくなるでしょう。
本来、債券はポートフォリオの上下動を少なくし、リスクを低減してくれるというメリットがあります。
ただ、米国株投資をしている人は特にそうですが、日本国債を購入するというよりは、AGGやBNDなど米国債ETFでの対応を視野に入れている人のほうが多いでしょう。あるいは、他の先進国国債でしょうか。
それはズバリ、デフレ、低金利ということで説明されます。デフレであるならば通貨を持っていれば、そのまま通貨の価値が上昇すると考えられます。そういう意味では薄利ではありますが、低利の日本国債でも持っていれば少なくとも損はしないと思われがちです。
しかし、これだけグローバル化が進展しますと、日本国内での通貨の価値だけで資産について考えるのは大局が見えなくなる可能性があります。例えばドル円ですと、ドルは年率2%のインフレが続いています。
ドル円チャートは長期ではほとんどボックスですから、国際的には円はじりじりと減価していることになります。つまり、低金利の日本国債を持っておくということは、国際的にはインフレ負けしている、あるいはインフレ負けしてきたということになるのです。
かつて日本人の給与は高く、豊かな国のうちの1つでした。しかし、一人当たりの給与では今や世界で25位前後です。円ベースでの手取りは漸減ですが、順位はかなり落ちています。この理由は2つあります。
- 他国の成長
- 他国のインフレ
この2つです。日本が現状維持をしている間に、成長国は成長し、円チャートがボックスの国とはインフレ分だけ減価してきたという結果です。
そういう意味においては、米国株投資というのはこの2点ともカバーできる、まさに困難な時代を生き抜く投資術ということになります。
それに対して、日本円のまま持っておく、あるいは低金利の日本国債を持っておく。これは国際的な減価にさらされることを意味します。こうしたことを踏まえてご質問を紹介します。
日本国債の購入を迷っている
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たぱぞう様
いつもブログを拝見し、勉強させて頂いています。
今年の初め頃から投資を始めて、少しずつではありますがVOOや投資信託、個別銘柄を買い増しています。ほとんど米国株で、当初の予定通りではあります。ただ、このごろ債券を入れた方が値動きがマイルドになるのではと思いました。
以前たぱぞう様が紹介していたBNDがいいと思っていましたが、海外債券は日本債券と期待リターンが同じでリスクが高いので日本債券の方がいいとも考え始めています。
とはいえ配当利回りがほとんどない日本債券を組み入れることにも納得できず、まごまごしている所です。たぱぞう様はポートフォリオに債券を組み入れることについてはどうお考えでしょうか?
また一般に日本債券より海外債券の方がリスクが高いと言う時、理由は為替の影響があるからと言うことでしょうか?素人臭い質問ですいません。ご多忙の所恐縮ですが、ご教授頂ければ幸いです。
日本国債への投資は個人的には必要ないと思います。
マイルドとワイルド、一字違うと大きく違います。
さて、海外債券のリスクですが、リスクのない海外債券を選ぶのが鉄則です。開発途上国の高利回り債券はリターンは大きいかもしれませんが、ハイリスクです。「ポートフォリオの値動きをマイルドにする」という目的ならばそぐわないことになります。
では、どこがよいのか。それはヨーロッパの一部の国など財務の良い国、それから米国債がその筆頭でしょう。2015年とややデータは古いのですがWikipediaから国債のランキングを引用します。
ランク | 国名 | ムーディーズ | S&P | フィッチ |
---|---|---|---|---|
1 | ドイツ | Aaa | AAA | AAA |
ルクセンブルク | Aaa | AAA | AAA | |
オーストラリア | Aaa | AAA | AAA | |
スイス | Aaa | AAA | AAA | |
デンマーク | Aaa | AAA | AAA | |
スウェーデン | Aaa | AAA | AAA | |
ノルウェー | Aaa | AAA | AAA | |
カナダ | Aaa | AAA | AAA | |
シンガポール | Aaa | AAA | AAA | |
2 | オランダ | Aaa | AA+ | AAA |
3 | 米国 | Aaa | AA+ | AAA |
4 | フィンランド | Aaa | AA+ | AAA |
5 | オーストリア | Aaa | AA+ | AA+ |
香港 | Aa1 | AAA | AA+ | |
6 | 英国 | Aa1 | AAA | AA+ |
7 | ニュージーランド | Aaa | AA | AA |
8 | フランス | Aa2 | AA | AA |
9 | ベルギー | Aa3 | AA | AA |
10 | サウジアラビア | Aa3 | AA- | AA |
11 | 韓国 | Aa3 | AA- | AA- |
12 | 中国 | Aa3 | AA- | A+ |
13 | エストニア | A1 | AA- | A+ |
チェコ | A1 | AA- | A+ | |
14 | 日本 | A1 | A+ | A |
スロバキア | A2 | A+ | A+ |
私たちが住む日本は国債の格付けでいうならば、世界上位ではありますがトップレベルではありません。さらに為替は基本的に国の信用、国力に左右されます。やや乱暴ですが平たくいうと、財務の強い国は為替も強いということです。
為替リスクを気にするならば、私たちの国の財務を顧みたほうがよほどよいでしょう。財務が良く、為替も強い国はほかにたくさんあります。母国だからと言って、日本債券のポジションを高めるのは、ほどほどが良いということです。
ポートフォリオの相場耐性を高めるならば、財務の強い国の債券を入れていくというのが基本になります。そして流動性、手軽さという意味においてはETFが一番です。つまり米国市場、ドルでそういった国の債券ETFを組み込んでいくというのは大いにありだと思います。
やや冗長になりましたが結論です。ポートフォリオに債券を組み込むのは悪くないです。ただし、日本国債のみに対象を絞るのは違うということです。
自分たちがよく事情を知る国、あるいは母国に絞る投資法もありますが、せっかくグローバルに投資ができる環境が整っているわけですから、その機会を生かし、近視眼的にならないように気を配る必要がありますね。
ご質問ありがとうございました。
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どのような分散投資が理想なのか。これは私たち個人投資家にとって永遠の課題であり、考えるに最も楽しいことかもしれませんね。
圧倒的な米国市場とETFですね。ドルを持つということは、世界一の市場で世界トップの商品が買えるということを意味します。
度々過去記事引用していますが、ジョン・C・ボーグル氏の米国株集中投資は非常に共感します。バフェット氏も