主星の光を9割以上取り込む黒い惑星
【2017年9月21日 HubbleSite】
ぎょしゃ座の方向約1400光年の距離にある系外惑星「WASP-12 b」は木星の1.7倍の半径と1.4倍の質量を持つ巨大惑星だ。主星からの距離が約340万km(太陽~地球の約45分の1)しかないため、昼側の大気は摂氏2500度と高温になっている「ホットジュピター」の一つである。
カナダ・マギル大学のTaylor Bellさんたちの研究チームがハッブル宇宙望遠鏡(HST)でWASP-12 bを観測したところ、この惑星は光をほとんど反射せず、舗装されたばかりのアスファルトのように真っ黒で、惑星大気へ降り注ぐ主星からの可視光線のうち94%以上が取り込まれてしまうことがわかった。「ほとんどのホットジュピターは主星から届く光の約40%を反射しますから、これほど暗い惑星の発見は予想外でした」(Bellさん)。
惑星の昼側の大気が高温のため、ほとんどの分子は存在できず、したがって光を反射する雲もおそらく発生しないとみられる。惑星へ降り注ぐ光は惑星大気の奥深くまで届き、水素原子に吸収されて熱エネルギーに変換される。
WASP-12系の想像図。(左斜め上)惑星、(右)主星(提供:NASA, ESA, and G. Bacon (STScI))
WASP-12 bは主星に非常に近いところを公転しているために潮汐固定されており、昼と夜が入れ替わることがない。昼側と環境が異なる夜側の温度は1400度ほどで昼側よりはかなり低く、昼と夜の境目では水蒸気が検出されているため、大気中に雲やもやが存在している可能性がある。
「ホットジュピターの風変りな仲間が持つ多様性の高さが示されました。WASP-12 bのように表面温度が摂氏2500度に達するものもあれば摂氏1200度ほどのものもあるのです。過去の観測によれば、ホットジュピターの昼夜の温度差は、昼間側の温度が高ければ高いほど大きくなります。より多くの熱が惑星の昼間側に吸い込まれていることが示唆されますが、夜側へ熱を運ぶ風などのプロセスのペースは一定しません」(Bellさん)。
2008年に発見されたWASP-12 bは、太陽に似た星の周りを回っている。これまでの観測で、超高温の惑星大気から主星に向かって物質が流出し、惑星が縮小している可能性が示されている。
〈参照〉
- HubbleSite:NASA's Hubble Captures Blistering Pitch-Black Planet
- The Astrophysical Journal Letters:The Very Low Albedo of WASP-12b from Spectral Eclipse Observations with Hubble 論文
〈関連リンク〉
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