9月24日は、ドイツの総選挙だ。
ドイツで一番長い伝統を誇るSPD(社民党)が、選挙直前になってさらにずっこけた。今年1月のアンケートで、シュルツ新党首が破竹の勢いでメルケル首相を追い抜いたあの栄光は一瞬のことだった。その後は再びきりもみ状態で落っこちたまま低空飛行が続く。
過去にはブラント首相やシュミット首相を輩出した誉れ高い政党だが、現在、支持率わずか20%。それでもシュルツ党首は演説のたびに、「私は首相になりたい!(Ich möchte Kanzler werden!)」と繰り返しているところが、まことに痛々しい。
一方、現在一番強いCDU(キリスト教民主同盟)も、支持率はたったの36%だ。しかも、ここ数週間の傾向としては下降気味。つまりCDUも、選挙での勝利は確実とはいえ、抜群の人気には程遠い。
現在のドイツ政権は、この両党に、CDUの姉妹党CSU(キリスト教社会同盟)が加わった大連立となっている。
ただ不思議なことに、CDUもSPDも人気がこれだけ低調なのに、アンケートに答えた人の93%が、現在の生活に満足していると答えている。
確かにドイツは昨今、めきめきと国力を伸ばし、EUはもちろん世界での政治的発言力も強くなる一方だ。おまけに景気は抜群に良い。だから、国民が現在の生活に満足しているというのはわかるが、だったら、現在の政権にも満足して良さそうなのに、そうはならない。
さらに言えば、メルケル首相の政策、たとえば、急激な脱原発や無理な難民受け入れなども、実はドイツを混乱させている。脱原発は電気代を高騰させ、難民に化けて入ってきた多くの犯罪者のせいで、治安も悪化している。当然、メルケル氏に対する批判の声も高い。
なのに、アンケート回答者の半数以上が、「首相を直接選べるとしたなら再びメルケル」と言っている。つまり国民は、メルケル首相の業績をさほど評価してはいないが、一方で、これらによって自分たちは世界に人道的模範を示せたという誇らしさがあるようだ。
ドイツ人というのは、頭の中で現実主義と理想主義が混交する人たちなので、どうもよくわからない。