まるでドラッカーが「日本人は人の財布は盗まないが、人の時間は平気で盗む。」と言ったような書き方です。
このツイートのソースはおそらくこれです。
ドラッカー「時間の収支表は常に大赤字である」日本人は人の財布は盗まないが、人の時間は平気で盗む。 | リーディング&カンパニー株式会社
このタイトルもドラッカーの発言がカギ括弧で括られているので、「日本人は〜」がドラッカーの発言ではないと判断できますが、非常に紛らわしい書き方です。
「日本人は人の財布は盗まないが、人の時間は平気で盗む。」は元ネタあるかと思ってしらべてみたのですが、「ザビエルの見た日本 講談社学術文庫」に似たようなことが書いてるらしいという検索結果が出ましたが、それは見てません。まあザビエルが生きていたのは400年以上前だし、本題から外れるので。
「日本人は〜」がドラッカーの発言でないと判断した理由は、ドラッカーの著書「産業人の未来」において、全体主義の国民性による説明を批判していたからです。
第1章「産業社会の行方」のp10〜11に以下のように書かれています。
国民性あるいは民族性なるものが存在することは確かである。しかし、それは主として物事の進め方に関わる特性である。すなわち、緩慢にか急激にか、慎重にか性急にか、感情によってか理性によってか、丁寧に行うかさっと行うかである。
(中略)
ファシズム全体主義を国民性によるものとして理解することは、ヒトラーの主張を認めるに等しい。必然かつ不変の国民性という概念と、恒久的かつ不変の人種的特性という概念の間には、ほとんど差がない。国民性による説明を批判していたドラッカーがこういう発言をするとは思えません。
なお、ツイートのソースにかかれている「時間の収支表は常に大赤字である」も原文とは異なっています。「経営者の条件」の第5章「最も重要なことに集中せよ」の冒頭に以下のように書かれています(太字引用者)。
時間を分析すれば、真の貢献をもたらす仕事に割ける時間があまりに少ないことがわかる。いかに時間を管理しようとも、時間の半分以上は依然として自分の時間ではない。時間の収支は常に赤字である。「プロフェッショナルの条件」の第4章「もっとも重要なことに集中せよ」にも同じ掲載されています(太字引用者)。
時間を分析すれば、真の貢献をもたらす仕事に割ける時間はあまりに少ないことがわかる。いかに時間を管理しようとも、時間の半分以上は、依然として自分の時間ではない。時間の収支は、常に赤字である。原著「The Effective Executive」の「5: First Things First」には以下のように書かれています。こちらを訳したとも思えませんね。
any analysis of executives' time discloses an embarrassing scarcity of time available for the work that really contributes.