ちぃーっす。さて、挨拶はこれぐらいにして、この記事ではヨッピーを批判する。先日、ヨッピーの単著が発売された。かねてからファンだった僕はすぐさま購入したのだけど、これがガッカリする内容だった。そして、この本に対するネットユーザーの反応にも落胆した。ヨッピーはなんでこんな凡庸な本を書いてしまったのだろう? そして、ネットユーザーはなんでこんなのを褒めそやすのだろう。そこに今のインターネットの問題点が潜んでいる(気がする)。
ヨッピーの『明日クビになっても大丈夫!』(幻冬舎)は簡単に要約すればこんな内容だ。
(2)だけど、いきなり会社をやめても食えるかわからないので副業をしよう
(3)副業で時間がなくなるのが辛くならないように、好きなことを副業にするといいだろう
これだけ。そのほかにもWebライターとはどういう職業か、なぜ自分が今のポジションにいれているのかを、笑えるくだけた文体で書いているけども、骨子としてはこれだけだ。
さて、上の主張、どこかで見たことないだろうか? そう、本屋に行けば数多ある副業本と同じことだ。意識の高いビジネス書だけじゃない。『SPA!』や『日経トレンディ』にだって載っていることだ。
大企業はもはや安泰じゃない。自分で稼げる力をつけよう。毎月5万稼げる副業でこんなのがあるよ……こんなことはしょっちゅう書かれてる。
それの何がいけないの? 別に悪くない。事実、僕だってそうだと思うし、「何言っているんだ、大企業は安泰だ!」なんて主張する人はめったにいないだろう。
これだけなら「ヨッピーもつまらない本を書いたもんだ」とがっかりするだけだ。でも、この本とヨッピーにはとても嫌らしいところがある。それは何か。
ヨッピーはかねてからプロブロガーとかの「ブロガーになって自由になろう!」という意見をネット上で批判している。イケダハヤトにも噛みついていたよね。あれは面白かったな。
では、ヨッピーの本と彼らの主張はなにが違うのか? なんにも違わない。企業に頼るな、自分の力で稼げ、趣味を仕事にしろ。これらは数あるブロガーが言っていることだし、西野亮廣の『魔法のコンパス』(主婦と生活社)や、堀江貴文『多動力』(幻冬舎)にも書かれていることだ。
でも、ヨッピーはそんな人たちを批判していたんじゃなかったっけ? 彼らを批判しながら、同じ口で「大企業はダメだ」と彼らと同じ主張をする。こういうのをポジション・トークと言うのだ。
「いいや、違う。いきなり会社をやめずに副業をやればいい」と言うかもしれない。でも、最終的にはやめるんでしょ? この本にはある程度儲かるまで辞めないほうがいい、とは書かれているが、「会社員の給料をセーフティーネットにしつつ、儲からなかったら別のことをすればいい」と言っているので、要は儲かるまで試行錯誤しろってことだ。じゃあ、単に辞める時期が違うだけじゃない?
もっと言うと、この本は「会社員」と「旧タイプのライター」を仮想的にしている。
会社はこんなにつまらないぞ、業務中にふざけることもできないし、やりがいもない。はいはい。よく聞く意見ですね。でも、それは人によるんでないの? なぜ自分が上司に怒られて、仕事にやりがいを持てなかったことを社会前に敷衍するんだろう。楽しく仕事をしている会社員はいっぱいいる。きみはそうじゃなかったんだね。かわいそうに。
そして、自分が新しいタイプのライターであり、紙を主戦場とする「旧タイプのライター」はPVが取れないし、企画も広報もできないからダメだと書いている。どこかで見た手口だ。イケダハヤトもよく「おっさん」と煽って対立軸を作って、ブランディングをしているね。その手法とこれは何が違うんだろう。
この本で書かれているような「旧タイプのライター」って本当にいるのかな? 雑誌のライターは自分で企画を出すし、取材もするんだけどね。最近じゃ雑誌ライターが読み応えある取材記事をWebメディアに書いて、SNSでも拡散されるなんてことが珍しくない。都合のいい仮想敵を作って、自分の立場がよく見えるようにしてないだろうか。
イケダハヤトは「おっさん」を対立軸にして自分が新しいライフスタイルの人間だと見せる。ヨッピーは「旧タイプのライター」を対立軸にして、自分が新しいライフスタイルだと見せている。ここでもヨッピーは自分が批判している人間と同じスタンスを取っているのだ。というか、「大企業」を批判しているところだけを見ると、まったく同じだね。
ライターのヨッピーさんに「会社員やりながら“生産する趣味”を持つのが最強」という話を聞いてきた
https://www.buzzfeed.com/jp/narumi/yoppy-tsuribori
このバズフィードの記事にはもっとがっかりすることが書かれている。「起業か? それとも社畜か?」と煽る本がいっぱいある、って本当だろうか。会社員をやりながら副業しようなんて本はいっぱいあるけど?
さらに「イケイケ層向けのビジネス書が多いから、フワフワ層向けのビジネス書を書いた」とまで言っている。
ということは、イケダハヤトや他のビジネス書が相手しない層がいるから、そこに向けて煽ったってことになる。他のやつらには「煽りすぎ」と批判して、自分は「この層が空いているから煽ろう」と本を出す。ひどい話だ。結局、自分も煽るんじゃないか。煽り屋のポジション・トークだって明言しているわけだけど、自覚しているんだろうか。
こんな凡庸な副業論を、ヨッピーが書いているからというだけではてなブックマークで賛同が集まる。実は僕は……これが一番悲しい。だって、安易なポジショントークに一番厳しかったのが彼らだったはずなのだ。それが「記事が面白いから」「ファンだから」という後光効果で凡庸な副業論を持ち上げてしまう。こんな残念な光景は見たくなかった。ちょっと考えれば同じことを言っているのがわからずに、ヨッピーのポジショントークに乗せられて、「そうだ、そうだ、あいつらはおかしい! ヨッピーが正しい!」と騒ぎたてる。なんて残念なんだろう。
そして、実はこんな残念な光景は、今のインターネットには至るところにある。糸井重里が言っているから、堀江貴文が言っているから、西野亮廣が言っているからと、中身をろくに検証せずに受け入れる人たち。「肩書きに関係なく、良いことを言っている人に賛同が集まるインターネット」はどこへ行ってしまったのだろう。いや、すでにそんな理想は崩れたなんていうのは僕にだってわかっている。でも、はてなブックマークは最後の砦として残っていると思っていたんだ。どうやら……違ったようだね。
とにかく読んでいてがっかりする本だった。
細かいところをつつけば、おかしいところはもっとある。自動運転車が実用化したら、トヨタの業績が悪くなんて失笑ものだ。トヨタがどれだけAIに投資しているか知らないのだろうか? それに海外企業が先に自動運転車を開発しても、トヨタも追随すればいいだけだ。「やっぱり日本車がいいよね」なんて人はいくらでもいるし、トヨタの広告費や販売網を考えれば、すぐに盛り返せるだろう。こんなちょっと考えれば疑問符がつくような未来予測を「予言」なんて仰々しく書いているから白けてしまう。
編集者にそそのかされたのかもしれないが、こんな凡庸な副業本を書くべきじゃなかった。ヨッピーは面白い記事を書けるし、Webで新しい表現を切り拓いている。きみならもっと世間が驚くような本が書けただろうに。本の中で「銭湯の本の依頼がきたけど、断った」と書かれている。そっちを書くべきだったと思うよ。本当に……本当に残念だ。新しい才能がこんな風にスポイルされるのを見るのは。
ハゲなんとかみたいな文体っすね
誰だろう。鼻息荒いっすね。
本の中にtehuは出てこないの?
これ、読む人が読んだら誰かわかるんじゃない?
さっそく憤慨トラバと憤慨ブコメついててワロタ もう少し購読者とファンの気持ちを考慮して書くべきだったね!
イケイケ層を批判する人たちに多いフワフワ層向けの本、という位置づけの本はあまりなかったのでは まともなギャラのオファーは断らないって言ってた気がするのでその流れかなー...