2014年にMVNOに本格参入した楽天モバイル。もともと知名度が高かかったことに加え、ポイントなどを含めた楽天経済圏との連携や、端末、店舗の拡充などを積極的に打ち出してきたことで、シェアは急増している。MM総研によると、2017年3月末でのシェアは第3位。1位の「OCN モバイル ONE」や2位の「IIJmio」といった、老舗MVNOに迫る勢いだ。
その楽天モバイルが、料金プランを一新させ、さらなる勝負に打って出た。新料金プランの名称は「スーパーホーダイ」。3つから選べるシンプルな料金体系で、容量を使い切った後も、1Mbpsと比較的高速なデータ通信が可能なのが最大の特徴だ。最低利用期間を最大3年まで設定でき、それに応じて端末の初期費用を割り引くプランも用意した。
これに加えて、認定整備済品のiPhoneも取り扱うことになった。もともと、楽天モバイルは端末のラインアップにも特色のあるMVNOだった。Huaweiとタッグを組み、「honor 8」などの端末を独占的に提供するなど、他社に先駆けて端末に注力してきた経緯がある。
では、なぜ楽天モバイルがこのタイミングでiPhoneを販売するのか。新料金プランを投入する背景と合わせて、その経緯を楽天モバイル事業 事業長の大尾嘉宏人氏とプロダクト&サービス部 プロダクト・料金・サービス課 シニアマネージャーの倉澤赳徳氏に聞いた。
―― 速度制限後も1Mbpsというのは、なかなか画期的な料金プランだったと思います。このプランを投入するに至った背景を教えてください。
大尾嘉氏 データ通信の速度制限は62%の方が受けていますが、そのうち、90%が遅くなってイライラすると答えています。データ通信量を気にしながら使うという方も、65%に上ります。そんなことを気にしなくてもいいようにしたいというのが、スーパーホーダイのテーマです。高速データ通信の容量を使い切っても、いわゆる128kbpsや200kbpsではなく、1Mbpsまで出せるようにしたいという思いがありました。
ただし、12時から1時と、夜の6時から7時までは、申し訳ないのですが300kbpsに制限しています。すごくいい品質とはいえませんが、ちょっとだけ遅い。そういったところも、しっかりお伝えできればと思っています。
―― 制限後の速度を1Mbpsにした理由はどこにあるのでしょうか。
倉澤氏 体感スピードとして、多くのインターネットサービスをそこそこの速度で使えることを重視しました。過去には他のMVNOで定額3Mbpsというものもありましたが、1Mbpsと3Mbpsではあまり体感は変わりません。であればということで、コストとの兼ね合いもあり、1Mbpsに設定しました。
1Mbpsあれば、動画もYouTube等であれば、バッファーの圧縮がかなり進んでいるため、快適に見られます。200kbpsだと少しお待ちいただくというところでも、快適に使えると思います。
大尾嘉氏 今の話はパンフレットにも載せ、お客さまにも伝えていることです。ちなみに、高速通信は使い切ったときだけでなく、アプリから手動で低速にしても1Mbpsになります。
倉澤氏 お昼の混んでいるとき(300kbpsに制限される時間帯)だけ、高速通信を使うという方法もあります。
―― お昼は高速通信をオンにしても、あまり速度が出ないことにはならないのでしょうか。
倉澤氏 何十Mbpsというのは難しいですが、ある程度の速度は出ます。ただ、そこはMVNO業界全体の課題ですね。
大尾嘉氏 ピーク時間帯の速度は本当に課題で、昔はご迷惑をおかけしていたことも事実です。ただ、それ以降は毎週、毎週お客さまがこれくらい増えるということを予測、分析して、毎週、毎週、増強なりチューニングなりをしています。その結果として、ほかと比べて安定して使えているというお声もいただいています。
―― 1年目の金額が1980円からだったり、3つから料金プランを選べたりと、Y!mobileなどを意識している印象も受けます。なぜ、あの料金体系だったのでしょうか。
大尾嘉氏 金額は業界標準にならって、1980円からとしています。そこ(他社の同水準の料金プラン)に利便性を加えた格好です。プランは2GB、6GB、14GBを用意しました。他社には1480円という料金プラン(家族で加入した場合など)もあるので、僕らも楽天のダイヤモンド会員限定という形で、1480円にしています。ダイヤモンド会員はすぐになれるわけではありませんが、他社の基準に比べるとそんなに高くもありません。ハードルは意外と低いと思います。
―― 例えば、100円安くするといった細かな差別化はしませんでした。それはなぜでしょうか。
大尾嘉氏 値段を細かく変えるよりも、正しいコミュニケーションをすることを心掛けたからです。
倉澤氏 打ち出す金額と実際にお支払いする金額が懸け離れないようにしないといけません。数十円安くするよりも、比較してもらいやすいよう、同じ金額にして中身を見てもらえるようにしました。
大尾嘉氏 それがMVNOのミッションでもあると思っています。安い料金を提供して業界の風穴を開けるのもそうですが、一方で、悪しき業界の慣習にもチャレンジしなければいけない。3年目の新しいキーメッセージも、スーパーチャレンジですから。
―― 1年目だけ1000円割引というところは、キャッチアップしなくてもよかったのではないでしょうか。
大尾嘉氏 そこは社内でもすごく議論したところで、僕もまだ、正解かどうかは分かっていません。ただ、ずっと1980円からにするのは難しい。一方で、永年2200円、2300円というのであれば、容量別の組み合わせプランを選べばそうなります。ここはY!mobileさんなどが基準を作ってしまったので、素直に合わせることにしました。
倉澤氏 方や1980円で2年目から2980円、方や永年2480円となると、比較した際にどちらがお得なのか分かりづらくなってしまいます。あえてそこをズラすよりも、同じにした方が分かりやすかったというのはありますね。
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