年収1000万円を稼ぐことが話題になりました。
この記事を読んでというわけではありませんが、私自身の場合、今勤めている会社からの収入のみで年収1000万円以上を稼ぐことは、100%不可能です。
転職のハードルは一昔と比べ一段下がったイメージがあるものの、実際のところはというと、30代を過ぎてからの転職は、特殊能力・資格でもない限り、依然として難しい現状があるように感じます。
とはいえ、転職に成功し、実際に働き方や年収を理想に近づけることができる方がいることは間違いありません。
では、転職で成功するためには、どういった対策を事前に講じていけばよいのでしょうか。
転職を成功に導くスキルとは何か
転職時に求められるスキルは、業種により大きく異なります。
特殊な技術力や資格を持っていれば、それだけでO.K.という転職を目指すのであれば、その取得に全力を注ぎ込めばいいわけですが、グローバル化やIT化に伴い、そうした技術力や資格以外にも企業側は転職者に様々なスキルを求めているのが現状です。
では、企業が転職者に求める(期待する)能力には、どのようなものがあるのでしょうか。
専門力以外に身に着けるべきスキル
専門的な技術力や転職に有利な資格は、一朝一夕で手にできるものではありません。
また、仮に専門力や資格を有していたとしても、そうした力を身に着けている人が複数いれば、さらに別の視点から転職者を選別してきます。
では、企業の採用担当者は、専門力の他にどのような力を転職者に求め。試験内で見極めようとしているのでしょうか。
Benesse教育研究開発センターの調査によると、企業は専門力に加え、「問題解決力」を重要視していることが分かります。
「問題解決力」とは、何かというと
社会での問題を認識し、必要な情報を収集・分析・整理し問題を解決する力
であると同調査内で定義されています。
では、この問題解決力について、企業側はどのような方法でチェックしているのでしょうか。
転職時に求められる「問題解決力」とは何か
問題解決力と言葉としては理解できても、その能力の有無を企業担当者はどのように判断するのでしょうか。
この問題解決力については、新型アイフォンの発売で世間をにぎわせているアップル社の入社試験が非常に面白い問題でチェックしているので紹介したいと思います。
こちらはアメリカの『TIME』の記事ですが、実際のアップル社における入社試験内容と面接での質問(2015年と少々古いです)が掲載されています。
こちらの記事では、アップル社の入社試験で問われた33の質問を紹介しているのですが、この33の質問の中で、特に「問題解決力」をチェックしている質問が転職者にはぜひ参考にしてほしい内容となっています。
以下で、その質問とそれに対する回答を紹介しつつ、転職を成功するためにどうやって問題解決力を磨いていくべきなのかを考察してみます。
アップル社の入試試験で聞かれた33の質問
『TIME』では、アップル社の入社試験で聞かれた33の質問を公開していますので、ひとまず、33の質問すべてを紹介します。
- 子供にモデムとはどのような機能があるか説明してください
- あなたの親友について教えてください
- あなたは卵を2つ持っています。卵を割らずに落とせる最高の高さを知るにはどのようにすればいいですか
- あなたが興味を持っている課題と、それをどのように解決するかを教えてください
- 毎日、どのくらいの赤ちゃんが生まれていますか
- 100枚の裏表があるコインを持っています。10枚が表を90枚が裏を向いています。あなたはどのコインがどっちを向いているか感じることも見ることもできません。その状況でコインを表が同じ枚数になる2つのグループに分けてください
- 最もあなたが興奮することを教えてください
- あなたはアップル社で何をしたいですか
- 3つの箱があり1つはリンゴだけ、2つはオレンジだけ、3つ目はリンゴとオレンジが入っています。箱には間違ったラベルが貼られています。1つだけ箱を開けて中を見ずに1つだけ果物を取り出します。その状況で全ての箱に正しくラベルを貼ってください
- あなたが対応しているお客様は20分も待たされ怒っています。そして、マイクロソフトに行ってPCを買うと言っていますが、どのように対応しますか
- このペンのコストを聞かれたら、どうやってブレークダウンしていきますか
- 使い物にならないくらい古いPCを持った男性に助けを求められたらどうしますか
- あなたは賢いですか
- あなたの失敗談とそこから何を学んだか教えてください
- 上司に同意しなかったことはありますか?どのように意見を述べたか具体的に教えてください
- 水の入ったコップをレコードのターンテーブルにおいて少しづつスピードをあげて回しました。最初に何が起きますか
- あなたの人生で誇りに思えることを教えてください
- あなたを雇う理由を教えてください
- あなたはクリエイティブですか?
- 羽目を外した経験を教えてください
- お客様の問題を解決するのと良い顧客体験を築くのはどちらが重要ですか
- アップルがアップル・コンピューターからアップルに社名を変えたのはなぜだと思いますか
- とっても明るい人に見えますが、どんな時に落ち込みますか
- お客様にあなたが喜んでサポートしたいと思っていることを声のトーンで伝えてください
- なぜアップルに入社したいのですか
- iTunesのようなアプリで時間が経過して古くなったイメージを削除する機能を持っているとして、どうやって使わなくなったイメージを消していきますか
- インチキのコインと普通のコインが入ったツボからコインを一枚取り出して回したところオモテ、オモテ、ウラが出ました。インチキコインと普通のコインが出る確率は
- 過去4年間で最も幸運だった日は
- お客さんとしてアップルストアに入って来て最初に気がつくことはなんですか
- どうしてアップルに入社したいのですか
- あなたのお気に入りのアプリをどのようにしてテストしたいですか
- 入社して5年後にはどうなっていたいですか
- あなたならどうやってトースターのテストをしますか
いかがでしょうか。
アップル社といえば、企業価値は現在世界No.1の会社であることはいうまでもありません。当然、そうした大企業で働くことは誰にでもできることではなく、有能な求人者を選抜するために、ひと癖、ふた癖もある質問が並んでいます。
現在、転職を考えている私はもちろん、あなたも、アップル社に転職したいと考えているわけではないでしょうが、世界一の企業であるアップル社の入社試験を分析してみることで、きっと転職に役立つはずノウハウが学べるはずです。
アップル入社試験で注目したい質問
アップル社の入社試験で聞かれた33の質問の中から、「問題解決力」を問う質問をピックアップしてみると、
- 6.100枚のコイン問題
- 9.箱にラベルを張る問題
- 27.インチキコイン問題
などが該当する質問だと思われます。
アップル社の採用担当はこれらの質問を通して、どのような問題解決力をチェックしたかったのでしょうか。
アップル社が問う「問題解決力」とは何か
ここでは、3つの質問の中でも特に難しい問題である「100枚のコイン問題」を通じ、問題解決力とは何かについて迫ってみたいと思います。
100枚のコイン問題
100枚のコインがあり、10枚が表を90枚が裏を向いています。あなたはどのコインがどっちを向いているか見ることはできません。その状況で表が同数の2つのグループを作るにはどうしたらよいでしょうか。
言葉だけだとよく分からないので、図示してみることにしましょう。
具体的に問題を捉える
コインが100枚あって、10枚が表、90枚が裏を向いているということなので、こんなイメージが持てます。
実際には、目隠しされるなどしてコインの状況を見ることができません。
そこで、まず、コインが見える状況でイメージを掴むため、適当に2つのグループに分けてみることにします。
ちょうど50枚づつなるように100枚のコインを2つのグループに分けてみました。
仮に、この図のように表コイン(白石)が出ているとするならば、
- Aグループには白石が4個
- Bグループには白石が6個
という状況になるため、表コインが同数になるように分けなさいという指令に失敗しています。
実際にやってみるとよく分かりますが、適当にコインを2つのグループに分けて、表コインが同数になることはほぼありません。
問題を整理する
適当に2つに分けることは当然、アップル社の採用担当が求める答えではありませんので、もう少し論理的にこの問題を取らえられないか考えてみました。
そこで、この問題を「文字」を使って整理してみることにします。
100枚のコインを2つのAとBのグループに分けたとき、
- コインの(表裏合わせた)総数
- 表コインの数
- 裏コインの数
を文字を使って整理しました。
問題を整理したところで、目標をはっきりさせておくと、「Aの表コインの数」と「Bの表コインの数」が同じになるときの分け方「a」の値が分かれば問題解決です。
しかし、このままの状況でAの表コインとBの表コインの枚数を一緒にするという式を作っても、自明の解にしかならず、肝心な「a」の値も分かりません。
問題を分析する
では、どうすれば目標である「a」に関連した式が作れるのでしょうか。
ここで「a」を含んだ式を作るために、次のような点に注目します。
Aグループの裏コインの数には「a」に絡んだ式があり、これと、Bグループの表のコインを結びつけることはできないでしょうか。ここにこそアップル社が求める「発想力」の本質が秘められています。
アップルが求める発想力
「a」に絡んだ式を作るために、Aグループのコインを全て裏返してしまうのです。
すると、どうなるでしょう。
Aグループのコインを裏返したことにより、Aグループの表コインと裏コインの枚数は入れ替わります(上図)。
その状態で、問題で指定されている「表の枚数が同じになる」ように式を作り、その式を解きます。
Aグループのコインをすべてひっくり返したことで、Aグループの表コインの枚数が(a-x)枚になりました。
これがBグループの表コインの枚数と一致すればよいわけですから、「a」を含む式を作ることができます。
これを解いた結果、『a=10』という答えにたどり着きました。
100枚コイン問題の答え
では、ここまでの考え方を踏まえ、アップル社採用担当の問いに答えてみます。
まず、100枚のコインから適当に「10枚」(これが先ほど求めたaの値)を数え、100枚のコインを10枚と90枚の2つのグループに分けます。
次に、10枚のコイン(Aグループ)を全てひっくり返します。
すると、Aグループの表コインとBグループの表コインの枚数が同じ数になっています。
この減少はたまたま起きた訳ではなく、どのような状態でも成り立つことは上で示しています。
よって、100枚のコイン問題の解答は、次のようになります。
100枚のコインを10枚と90枚に分け、10枚を全て裏返す
大学入試でも問われる問題解決力
ここまで考えてきた「100枚のコイン問題」の類題は、実際に大学入試試験でも出題されています。
白石180個と黒石181個の碁石を一列に並べる.このとき,碁石がどのように並んでいても,次の条件を満たす黒の碁石が少なくとも一つあることを示せ.その黒の碁石とそれより右にある碁石をすべて除くと,残りは白石と黒石が同数となる.
これは2001年に東京大学で出題された問題です。
ここでの解答は控えさせていただきます(ググれば色々な解答が出てきます)が、この東京大学の問題でもアップル社の「100枚コイン問題」と同程度の問題解決力が必要と思われます。
転職を成功に導く「問題解決力」
アップル社がここで紹介したような質問を通じて見極めたかった「問題解決力」とは、何なのでしょうか。
「100枚コイン問題」に答えるに当たり、意識すべき手順のポイントを示してみました。
ここで、意識してきたポイントをまとめてみると
- 質問の意図を読み取る
- 具体的な状況を設定(図示が有効)
- 問題点を整理する
- 解決に向け、構造を分析する
- 発想力で勝負
- 解決策を端的に示す
というステップに分けられます。
この6つのステップの中でも、「5.発想力」は問題解決には欠かせません。この発想力を磨くには、数学や統計学を学ぶことがかなり有効ではないかと思いますが、1.~4.のステップを踏むことができれば、かなりの高得点がゲットできると思います。
「発想力」は専門的知識と同様、一朝一夕ではなかなか身に付きそうもありません。
確かに、この1.~4.の手順は日常生活や現状抱える問題点を想定し、すぐにでも実践することができそうです。
もし、1.~4.の手順が身に付いていたり、さらに先の力を手に入れたりしたい方には、こちらの記事も参考になるはずです。
以上、本日は
- 転職を成功に導くために必要な力
- そのためにはどう行動すればよいか
について、アップル社の入社試験を使って考察してみました。
そんな私と同じ思いの方は、「問題解決力」を磨くことで、年収1000万円突破が近付いてくるのかもしれません。