〔PHOTO〕iStock
金融・投資・マーケット

金融庁の「銀行カードローン対策」はあまりにご都合主義すぎる

修正と規制を行ったり来たり…

究極の「客殺し」商法

金融庁が、急増する銀行カードローン問題に本腰を入れることになった。金融行政の課題などをまとめた「金融レポート」で、銀行カードローンの審査体制など問題点を指摘、銀行側に自重を促す。

それを察知した銀行側は、来年1月をメドに審査が十分でない「即日融資」を取りやめる方針を打ち出しており、「最短30分」などと融資のスピードを競ったテレビCMは、既に、そうした表現を削除している。

背景に、消費者金融業界の貸付残高の急減を銀行カードローンが肩代わりしてきた歴史があり、銀行に認められた数々の優遇策にハマった利用者が、年収の2倍、3倍と貸し込まれて自己破産が急増するなど、最近、社会問題化していた実情がある。筆者も本コラムで『メルカリで現金出品という「究極の貧困ビジネス」が生まれた背景』(17年5月11日配信)と題し、その歪みを伝えたことがある。

貸金業法改正から10年が経過、消費者金融業者は業者数も貸付残高も急減したが、多重債務者を減らすという目的とは裏腹に、その穴を埋めた銀行カードローンが急増、自己破産予備軍が増え、かれらを顧客とする貧困ビジネス業者が、フリーマーケット(フリマ)アプリの代表であるメルカリに、5万円の現金を5万9500円で出品していた。

 

既に銀行カードローンの枠も使い果たし、無担保で急ぎのカネを必要とする顧客が、クレジットカードで決済、郵送で現金を受け取り、カード決済との時間差を利用する。それほど追い詰められた債務者が増えており、同じような形態の「カードで現金化業者」が増え、主要ターミナル駅にはそうした業者が軒を連ねる。クレジットカードのショッピング枠を使ってブランド品などを買い、それを安く引き取ってもらって現金化するのだ。

本来、貸金業法改正は高金利の消費者金融業者が、安易に貸し付けて厳しく取り立て、多重債務者を発生させる状況を変えるものだった。その穴を埋め、状況を変えなかった銀行カードローンは、どんな優遇策を受けて貸付残高を増やしたのか。

最たるものは、消費者金融業者には「年収の3分の1まで」という総量規制があるのに、銀行が除外されたことだった。総量規制は、10年6月の貸金業法改正の完全施行以降の措置だったが、「すべての業態を規制すると、金融収縮が発生する」という金融庁の方針で銀行は除外された。

銀行は、この制度的な優遇策を使い、「総量規制の対象外です」「年収証明書は不要です」と、広告を打って消費者金融から顧客を奪った。また、「おまとめローン」を使って、規制の消費者金融から規制外の銀行に移すような荒技も厭わなかった。

消費者金融から銀行に移して、「年収の3分1」の枠を消せば、新たな借金が可能になる。それを傘下や提携先の消費者金融業者と組んで囲い込めば、年収の2倍、3倍とか貸し込むことが可能になる。究極の「客殺し商法」だった。

そうなるように仕向けたのは金融庁である。