子供時代は誰にとっても人生を左右する大切な時期だ。多くの人にとって、幼少期の体験は遺伝子レベルで影響するほどらしいのである。
この度、研究者は子供時代の出来事を特定することで、炎症を制御する遺伝子が改変されるかどうかを正確に予測することに成功した。これはその後の人生で患う病気が、子供の頃の体験の結果であることを示唆している。
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後天的に変化する遺伝子
米ノースウェスタン大学の研究チームは、後成的変化のヒントを求めて、炎症に関連する数百の遺伝子を解析した。
彼らが疑っていたのは、子供時代の環境と炎症プロセスに見られる差異との関連性は遺伝子自体に起因するのではないかということだ。
我々のゲノムのDNA配列は妊娠したときに多かれ少なかれ固定されるものだが、個人の遺伝子はその後も修正され続けるという結果がときおり得られている。
その後成的プロセスの顕著な例の1つがメチル化だ。これはメチル(CH3)基がDNAの機能を阻むような形でDNA構造に追加されるプロセスを含むものである。
メチル化をはじめとする後成的変化は遺伝子によって書かれている設計図の解釈の仕方に革命を起こした。かつて遺伝的な運命と考えられていたものが、ささいな環境における出来事であってすら重要な遺伝子に波及効果を及ぼすことが理解されつつある。
子供時代の経験が遺伝子の後成的変化に大きく影響
後成的変化は周囲の変化に素早く反応し、ゲノムを調整するために進化したようである。体には悪影響をもたらす恐れがある遺伝子もあり、それが後成的プロセスによってスイッチが切られれば、人体に有益な場合もある。
これらについての理解は比較的初期の段階にあるが、睡眠から経済的水準まであらゆることによって引き起こされる。
子供時代は明らかに人生における重要な部分で、この間にその後の健康や幸福感に影響する生物学的プロセスを作り出す。
今回の最新の研究で用いたのはフィリピンの500人ほどのサンプルで、それらは1980年代初頭まで遡れるデータを含むものだ。
2005年に採取された血液を使用し、炎症を制御する免疫プロセスに関連する114の遺伝子を解析。それらの遺伝子のうち9つのメチル化が、世帯の社会経済的状況、両親の不在、さらには乾季に生まれたかどうかといった子供時代の変数と密接な関連があることが判明した。
つまり子供時代の特定の経験を知ることができれば、9つの炎症関連遺伝子にスイッチが入るかどうかを予測できたということだ。
炎症は諸刃の剣のようなところがあり、血管を広げ、感染症と戦い、回復を促す手助けをするい方、それが長引けば不快感や損傷が発生したりもする。
炎症を制御する遺伝子は特定の状況における効果と費用とのバランスをとっているのかもしれないが、そのスイッチが切られてしまうと再び入ることは滅多にない。それは後になって病気になる可能性を開くということでもある。
こうしたことは、特定のコミュニティにおいて心臓血管系の病気や炎症関連の病気が発症しやすい理由を説明するかもしれない。
最近では環境が遺伝子の機能に影響することを示す手がかりはますます増えている。本研究は『Proceedings of the National Academy of Sciences』に掲載された。
via:Experiences in childhood can alter your DNA for the rest of your life - ScienceAlert/ translated by hiroching / edited by parumo
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コメント
1. 匿名処理班
遺伝子云々はおいといてさ、少なくとも成長後の言動には影響は出やすいよ。
虐待サバイバーなんかでは価値観が一般的じゃないために、他者との関わり方とかで問題が発生しやすくなる。
単に、他人に暴力振るうor振るわれるといった次元のお話じゃなくて、他者と自分の境界線が曖昧になり過ぎたり、他者に向かって適切にNOやYESが言えなくなるって具合で生き難くなってる事例がね。
だから、一見して穏やかで大丈夫そうに見えても、カウンセリングだとかの支援を継続する必要があるよ。
2. 匿名処理班
こないだテレビで「家庭環境や親の性格は子どもの性格に一切影響しない」ってキッパリ言い切っててドン引きだった。
3. 匿名処理班
自分は16歳まで家族から虐待を受けていた
10歳で隣に住む人と兄から性的虐待を受け
同年に自己免疫疾患で寛解しないと言われる皮膚病を発症した
それ以降30年この病気に悩ませられ続けた
全身血だらけ、落屑によりいつも人目を忍んで生活した
この病気が原因だけじゃなかったけど、結婚しようとも思わなかった
昨年ある事が切っ掛けで今はほとんど出なくなったが
今でもストレスが溜まったりすると少し出てくる
因みに両親家系にこの病を持つものはいない
だからこの記事は非常に興味深かった
管理人さん、纏めてくれて有難う
4. 匿名処理班
エピジェネティックでどうぞ
5. 匿名処理班
被虐待児で病気多い自分、納得
心身よわよわだし全身麻酔数回受けたし、既に余生
6. 匿名処理班
※1
遺伝子置いといたらとうに周知の事実じゃないか
7. 匿名処理班
卵が先か鶏が先かヒヨコが先か
8. 匿名処理班
ごめん、どういう体験か書いてないので何もわからない。
ただ炎症について言えば、反応が高いとアレルギーや自己免疫疾患になるが、同時に癌が大きくなる前に殺してしまえる利点があるとか。
今、日本では三人に一人がアレルギー持ち、だからと言って人口の30%が子供のころなにか『体験』をしてるとは言えないだろう。
個人的にはアレルギーの増加は慢性的な「睡眠不足」と対人関係や食事など「過剰な刺激」が怪しいと思う。
9. 匿名処理班
私も虐待されて育った。確かに怪我した後の傷は中々治らないし、すぐに感染症にかかる。
10. 匿名処理班
子供の頃に酷い迫害を受けた人が、大人になって子供を産んだらその子供に遺伝的に受け継がれるってことかな。
11. 匿名処理班
※3
自分もDVネグレクトの後遺症で化学物質過敏症になりました。
周囲には発症者いません。
12. 匿名処理班
虐待受けたら体が弱くなるなんてどこにも書いてないし
子どもの頃の経験といっても虐待のことだけではないんだけど(原文見てないから分からんけどそもそも今回の調査で虐待が変数として扱われてたかも不明)
こういっちゃなんだけど自分語りしたいなら然るべき場所でやってほしい
13. 匿名処理班
※8
がんを経験したけど繰り返される慢性的な炎症ががんの起因にもなるよ。アレルギーの増加は生活環境が清潔になりすぎた弊害だと思います。
あと子供の頃の特定の【環境・原因】が虐待であるとは一切かかれていない。環境と書かれて思い当たるのは、ざっと考えても気温や湿度、花粉やカビなどに晒された、湿度、動物と一緒に育った育ってない、気圧の低い高い、酸素濃度などが考えられるよね。
ストレスによる自律神経の狂いから引き起こされる、咽頭の炎症反応である喘息なども実際あるので、虐待でストレスがかかりそれにより炎症反応がでるというのはあながち間違ってないとも思うけど、子供の頃に虐待されていなくてもストレスがかかる要因はとても沢山あると思うよ。
あと、※9の人の症状は炎症というより免疫力が低下してる症状では。糖尿病か自己免疫疾患かも知れないよ。一度病院で検査したほうが良いかも。
14. 匿名処理班
※9
20後半になったらそれは加齢や。
いつまでも若いわけじゃないんやで
15. 匿名処理班
※13
たしかに一部の癌は慢性的な炎症により発症するのもあるね、一括りにしたことは軽率だったかも、謝ります。
例えば皮膚癌、唇などずっといじっていると発症するものがある。
炎症と癌のことをもう少しだけ、ウィルス性の癌があるが意外とコレが種類が多いと見直されている、年々、新たなウィルスが見つかっているからだ。
で炎症反応の高い人はこのウィルスに対抗できるのだ。
16. 匿名処理班
一瞬、ラマルキズムかと思ったけど、よく読んだら違うのね。
でも、これを進化論批判に流用するアホが出てくるのに1000ガバス。
17. 匿名処理班
そういやテレビで黒人の人がマラリア感染に抵抗する遺伝子持ってて子供が生まれたらそれが原因で悲惨な目にあってたな環境や遺伝とは一歩間違えれば悲惨だなもっとも親にそんなこと考える人なんてほとんどいないだろうけどいたらよっぽどの金持でイケメンで健康の人しか子供産まないだろうしなw
18. 匿名処理班
ストレスと免疫、は
関係あるからなぁ
ストレスにより遺伝子が改悪(よくて改変)てことかね この研究は
19. 匿名処理班
エピジェネティクスな