15種類のがんのリスク因子になるタバコ
今年の5〜6月には、受動喫煙防止法の成立を巡って、厚生労働省と自民党、さらには小池百合子都知事、関連団体も加わって、喧々諤々の議論がなされてきました。
結局、通常国会では法案の提出すらできませんでしたが、少なくともこれをきっかけに、世の中で喫煙についての議論が深まっていくことは、とても大事なことでしょう。
そこで今回は、まずタバコのリスクから、ざっとおさらいいたしましょう。
タバコを吸うと、がんや心臓病、脳卒中、肺気腫、喘息等の罹患率や死亡率が高くなることが知られています。世の中に体に悪いものは数多くありますが、そのインパクトの強さという意味では、なんといってもタバコが群を抜いています。
上のグラフは、日本人の死亡に関わるリスク因子を並べたものですが、タバコは、がんにも心臓にも肺にも幅広く悪影響を及ぼすので、高血圧をおさえて、堂々の1位になっています。
グラフを細かく観ると、がんに対する影響力の強さが目立ちますが、実はここには肺がん以外のがんも含まれています。
「えっ、タバコは肺がんのリスク因子じゃないの?」と思った方も多いでしょう。
確かにタバコは肺がんとの関係ばかりがクローズアップされており、あたかも肺がんだけに悪影響を与えるというイメージが蔓延しています。けれど、実はそうではないのです。
IARC(国際がん研究機構)や国立がん研究センターによれば、肺がんのほかにも、鼻腔・副鼻腔のがん、口腔がん、咽頭がん、喉頭がん、食道がん、胃がん、大腸がん、膵臓がん、肝臓がん、腎臓がん、膀胱など尿路系のがん、子宮頚がん、卵巣がん、骨髄性白血病と、計15種類のがんのリスク因子でもあることが分かっています。
タバコの恐ろしさがよく分かりますよね。さらに、それぞれのがんのリスク因子がある人(胃がんのピロリ菌や肝臓がんのC型肝炎ウイルスなど)は、タバコを吸うことが相乗作用となって、がんのリスクをさらに押し上げるので、くれぐれも注意が必要です。
では、タバコを吸うと、どのくらい肺がんのリスクが増えるのでしょうか。