外来種「ミシシッピアカミミガメ」が卵からふ化する際、温度と時間が性別決定に与える影響を調べ、兵庫県の明石市立二見中学校3年尾上愛梨さん(15)が研究報告書をまとめた。大学の研究者ら全国の専門家らが集まり、23日に神戸で開かれる情報交換会で、最初に報告する。尾上さんは「日本固有のカメを外来種から守れるよう研究を続けたい」と意気込んでいる。
アカミミガメは米国原産で、ペットなどとして人気を集めたが、成長すると捨てられるなどし、全国各地のため池や川で野生化。産卵数が多く、生命力も強いため、固有種のニホンイシガメや水辺の植物などに悪影響を与えているという。
一般的にカメは梅雨から夏にかけて産卵し、高い温度の場合は雌に、比較的温度が低い場合は雄になる。温度を固定して雌雄の決定を調べる研究はあったが、尾上さんはより自然に近い状態を再現しようと、国内では例がないという時間と温度を変えた実験を行った。
尾上さんは姫路市立水族館の協力を得て6月、アカミミガメの卵11個を入手。発泡スチロールの箱を3個準備し、エアコンを利用するなどして常時25度以下とし、(1)温度を変えない(2)1日あたり1時間半を30度(3)1日あたり9時間を30度-とする3条件で実施した。その結果、(1)は4個すべてが雄、(2)は3個が雄、1個が雌、(3)は3個すべてが雌で生まれた。また、温度が高いほど、早く生まれる傾向があったという。
研究は大阪、兵庫を中心に保全活動を行う「和亀保護の会」の西堀智子代表がサポート。西堀代表は時間に変化を付けるように助言したといい、「一定の温度を保つ工夫が的確で、雌雄を見分ける精度も高い」と評価する。尾上さんは「この研究がすぐに防除につながるわけではないが、いろんな角度から研究を続けたい」と話していた。
情報交換会は9月23、24日、神戸市東灘区の御影公会堂で。参加費一般3千円、学生1500円。参加希望者は同市立須磨海浜水族園TEL078・731・7301
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尾上愛梨さんは小学校低学年のとき、自宅近くの池でカメを捕まえ育てたことがきっかけで、生態の研究に目覚めた。その池でもミシシッピアカミミガメが増殖していることを知り、「ニホンイシガメなど固有種が生息できる環境を取り戻すことが夢」と話している。
尾上さんは物心がついたころから生物好きで、特にカメが「かわいい」とお気に入り。神戸市立須磨海浜水族園に頻繁に通ううちに、「ウミガメ博士」として有名な前園長の亀崎直樹さんからもカメの生態などを教わった。
小学校の頃から甲羅の模様が成長でどのように変化するかや、在来種と外来種の食べ方や成長のスピードなどを調査してきた。
亀崎さんは「自分でテーマを見つけて、よく研究している」と期待していた。(藤井伸哉)