奇祭「バーニングマン」に奇妙なDIYハウスあり。15選
ネヴァダ州の砂漠で開催されるイヴェント「バーニング・マン」には、さまざまな「家」がDIYで立ち並ぶが、過酷な環境で大体は崩壊する。その環境に耐え抜いた素晴らしい設計の家たちを紹介。
TEXT BY LAURA MALLONEE
TRANSLATION BY MIHO AMANO/GALILEO
WIRED(US)
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1/15ピンク色のファブリックを贅沢に使った金属フレームのドーム「ピンク・ハート・キャンプ」。ジョン・「ハルシオン」・スティンの作品だ。PHOTOGRAPH BY PHILIPPE GLADE
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2/15サンフランシスコ・ベイエリア・エアプッシャー・コレクティヴによる作品「エアプッシャー」。PHOTOGRAPH BY PHILIPPE GLADE
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3/15850斤のパンによってつくられた「パン生地のドーム」。デスヴァレー国立公園にある史跡「Wildrose Charcoal Kilns」(木炭製造の窯)にヒントを得て作られた。PHOTOGRAPH BY PHILIPPE GLADE
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4/15「ギルドワークス」の作品「Sacred Spaces Village Ascension Gateway Camp」。PHOTOGRAPH BY PHILIPPE GLADE
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5/15アイザイア・マーティン、デイヴィッド・シールズ、タンディ・ニルが作成した巨大アヒル。PHOTOGRAPH BY PHILIPPE GLADE
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6/15「The Temple of Transition」は、高さ36m。合板でつくられた5つの「テンプル」(寺院)によって構成されている。PHOTOGRAPH BY PHILIPPE GLADE
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7/15長円形の5Vドーム(5種類の長さの支柱を使うジオデシックドーム)「The Shady Waffle」は、「平和に朝食を食べるために」建てられた。ジオデシックドームは、運搬と建設が簡単なので、人気がある。PHOTOGRAPH BY PHILIPPE GLADE
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8/15玄関を人工芝で飾ったトレイラーハウス。PHOTOGRAPH BY PHILIPPE GLADE
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9/15簡易車庫と壁画が印象的な 「Altervision 3D Blacklight Experience Camp」。PHOTOGRAPH BY PHILIPPE GLADE
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10/15直径9mのドーム「Root Society Camp」。PHOTOGRAPH BY PHILIPPE GLADE
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11/15スティーヴ・デリカーピニが設計した「The Darwin Fish Tank Camp」。塩ビ管(ポリ塩化ビニルのパイプ)、鋼鉄のバー、4x4の合板で作成されている。PHOTOGRAPH BY PHILIPPE GLADE
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12/15砂漠のなかで涼しくなりたければ「Arctica and the Ice Camp」に行こう。PHOTOGRAPH BY PHILIPPE GLADE
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13/152階建ての「The First Church of the Jerk」(間抜けの第一教会」では、「バーナー」の結婚式が行われる。PHOTOGRAPH BY PHILIPPE GLADE
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14/15足場用建材でつくられた音楽ステージ「テトリスキャンプ」。PHOTOGRAPH BY PHILIPPE GLADE
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15/15会場となる「ブラック・ロック・シティ」全貌。PHOTOGRAPH BY PHILIPPE GLADE
毎年8月に、米国ネヴァダ州の北西にあるブラックロック砂漠の真ん中で開催されるイヴェント「バーニングマン」。そこは決して快適な場所ではない。気温は摂氏40度を超えるし、時速48kmの風が吹くうえ、砂嵐も起こる。それでも、自身をバーナー(「燃やす者」の意)と称する7万人の参加者が、楽しい時間を過ごすために流れ込んでくる。そして、いつの間にかひとつの街が出来上がる。
建築オタクでもあるフランスの写真家フィリップ・グレイドは、参加者たちが過酷な環境を耐えるためにつくった奇抜な設営物に魅了され、それらのベストショットを自著『Black Rock City, NV』(ネヴァダ州ブラック・ロック・シティ)にまとめた。
写真には、ゲーム「テトリス」から発想を得た音楽ステージから、850斤のパンでつくられた「パン生地のドーム」まで、ありとあらゆる建物がとらえられている。「ここは、新しい可能性、新しい技術を試せるゼロ地点であり、本当の意味で創造的になれる場所なのです」とグレードは述べている。
この砂漠では、すべてが“破壊”される
第1回のバーニングマンが開催されたのは1986年。サンフランシスコのベイカー・ビーチでのことだったが、最終的には650kmほど北西に移動し、ブラックロック砂漠の干上がった湖底に落ち着いた。
イヴェント中の1週間だけ出現する“街”は、直径約2.4kmの同心円内に収まり、街の象徴として立つ人型の造形物「マン」から、各々の通りが放射状に伸びている。参加者が自らの手で設営する「家」の多くは、アラブ系遊牧民ベドウィンのテントや、モンゴル遊牧民の円形型テント「ゲル」、ネイティヴアメリカンのテント「ティピー」などからアイデアを得ており、過酷な環境に耐えることを願いながら、安くてリサイクル可能な材料でつくられている。
「この砂漠に持ってきたものはすべて“破壊”されます。おしゃれなプラダのシャツを持っていたとしても、バーニングマンには持っていくべきではありません」とグレードは言う。
グレードがこの過酷さを身をもって体験したのは、1986年に参加したときだった。持って行ったテントが薄っぺらで、あまりの暑さに耐えられなかったため、砂埃が厚く積もったクルマの座席で寝るはめになったのだ。その後の数年間も、似たり寄ったりだった。設置したキャノピーは吹き飛ばされ、NASAが開発した銀色の薄い保温ブランケットは風でズタズタになり、カモフラージュネットは太陽の熱で溶けた。グレードは腹立ちまぎれに、自転車でキャンプ内を巡り、熱にも風にも負けていない建造物を写真に撮り、その持ち主たちと話をして、アドヴァイスをもらうことにした。
それ以来グレードは、数えきれないほどの建造物を写真に収め、バーニングマンの建築をまとめたブログに2,000を超える画像を掲載してきた。そしてそのなかから毎年、自分が気に入ったものに「ゴールデン鉄筋賞(Golden Rebar Awards)」を授与している。
この膨大な写真のほとんどには不気味なほど人が写っていないので、手作りの家をじっくりと見ることができる。六角形のゲルであろうと、巨大アヒルであろうと、そのどれもが、このイヴェントの野性的なDIY精神を伝えている。
グレードもようやく、自分自身の「家」を見つけ出した。それは、シンプルだが頑丈な防水シートを自分のワゴン車から広げ、金属製のポールと45cmの鉄筋の杭で地面に固定するというものだ。「非常に質素です」とグレードは言う。バーニング・マンで最高に格好いい建物とはいえないだろうが、役には立つ。
『Black Rock City, NV』は「Real Paper Books」で入手できる。
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