雪舟の幻の作品 84年ぶりに確認 山口県立美術館
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室町時代に独自の水墨画のスタイルを確立した雪舟が描き、昭和8年に行われた入札を最後に所在がわからなくなっていた「幻の作品」を84年ぶりに確認したと山口県立美術館が発表しました。国宝に指定されている「四季山水図」とよく似た作風の山水図で、専門家は「真筆で間違いなく、非常に重要な発見だ」としています。
「倣夏珪山水図」(ほうかけい・さんすいず)と呼ばれるこの作品は、縦横およそ30センチのうちわのような形の枠の中に、中国の南宋の時代の画家、夏珪の作風を基にした山水図が描かれています。
手前にはひときわ濃い色の岩が力強い筆遣いで描かれ、その後ろに枝を伸ばした木々や水辺に浮かぶ小舟などが表現されています。昭和8年に行われた入札の目録に記されたのを最後に所在がわからなくなり、「幻の作品」とされていましたが、この作品を個人のコレクターが所蔵していて、調査の結果、雪舟の真筆と判断したと、雪舟の研究を進めている山口県立美術館が発表しました。
室町時代の画家、雪舟は、独自の水墨画のスタイルを確立したことで知られ、「山水長巻」の別名で知られる「四季山水図」や「天橋立図」など、6つの作品が国宝に指定されています。
今回の作品が描かれた時期はわかっていませんが、「四季山水図」と岩や木の枝などの表現がよく似ているということです。
調査に当たった明治学院大学の山下裕二教授は「雪舟の真筆に間違いないと見た瞬間に確信した。夏珪のスタイルを完全に自分の中に取り込んでオリジナリティーを出している。山水画においてこれほど自分のスタイルを確立した人はほかになく、四季山水図を研究するうえでも非常に重要な発見だ」と話しています。
「倣夏珪山水図」は山口県立美術館に寄託され、来月31日から公開されます。
手前にはひときわ濃い色の岩が力強い筆遣いで描かれ、その後ろに枝を伸ばした木々や水辺に浮かぶ小舟などが表現されています。昭和8年に行われた入札の目録に記されたのを最後に所在がわからなくなり、「幻の作品」とされていましたが、この作品を個人のコレクターが所蔵していて、調査の結果、雪舟の真筆と判断したと、雪舟の研究を進めている山口県立美術館が発表しました。
室町時代の画家、雪舟は、独自の水墨画のスタイルを確立したことで知られ、「山水長巻」の別名で知られる「四季山水図」や「天橋立図」など、6つの作品が国宝に指定されています。
今回の作品が描かれた時期はわかっていませんが、「四季山水図」と岩や木の枝などの表現がよく似ているということです。
調査に当たった明治学院大学の山下裕二教授は「雪舟の真筆に間違いないと見た瞬間に確信した。夏珪のスタイルを完全に自分の中に取り込んでオリジナリティーを出している。山水画においてこれほど自分のスタイルを確立した人はほかになく、四季山水図を研究するうえでも非常に重要な発見だ」と話しています。
「倣夏珪山水図」は山口県立美術館に寄託され、来月31日から公開されます。
「倣夏珪山水図」の特徴
今回見つかった「倣夏珪山水図」は、雪舟より200年以上前に活躍した中国・南宋の画家、夏珪(かけい)の画風を模した山水図です。左端に雪舟の署名があるほか、枠の外側の右下には「夏圭」と記されています。
山口県立美術館によりますと雪舟が活躍した室町時代後期には夏珪を模した作品が流行し、さまざまな画風を描き分けていた雪舟にとっても重要なテーマになっていたということです。
描かれているのは秋の情景で、黄色に薄く色づいた水辺のあしの上には葉を落とした木々が枝を伸ばし、「酒旗」(しゅき)と呼ばれる酒屋を示す旗が揺れています。手前の岩は絵の重心となるように濃い色で塗られ、雪舟特有の陰影を際立たせた描写や大胆で勢いのある筆遣いが見られます。また、人が岩の間の小道を歩く姿や向かい合って語り合う姿を描くのも雪舟が山水画でよく用いた手法です。
作品は紙の染みが目立たず状態もよく、岩の青みがかった色や木の緑色も鮮やかに残されています。
この作品は中国の有名画家の画風を模した「倣古図(ほうこず)シリーズ」の中の1枚で、江戸時代前期に狩野派の絵師が模写した12点が残されていることから、雪舟が少なくとも12点を描いていたことがわかります。このうち現存する6点はいずれも国の重要文化財に指定され、今回7点目が見つかったことになります。シリーズのうち夏珪を模した山水図は季節ごとに4枚が描かれ、今回見つかった「秋」と、個人が所蔵する「春」と「冬」はありますが、「夏」は所在が分かっていません。
山口県立美術館によりますと雪舟が活躍した室町時代後期には夏珪を模した作品が流行し、さまざまな画風を描き分けていた雪舟にとっても重要なテーマになっていたということです。
描かれているのは秋の情景で、黄色に薄く色づいた水辺のあしの上には葉を落とした木々が枝を伸ばし、「酒旗」(しゅき)と呼ばれる酒屋を示す旗が揺れています。手前の岩は絵の重心となるように濃い色で塗られ、雪舟特有の陰影を際立たせた描写や大胆で勢いのある筆遣いが見られます。また、人が岩の間の小道を歩く姿や向かい合って語り合う姿を描くのも雪舟が山水画でよく用いた手法です。
作品は紙の染みが目立たず状態もよく、岩の青みがかった色や木の緑色も鮮やかに残されています。
この作品は中国の有名画家の画風を模した「倣古図(ほうこず)シリーズ」の中の1枚で、江戸時代前期に狩野派の絵師が模写した12点が残されていることから、雪舟が少なくとも12点を描いていたことがわかります。このうち現存する6点はいずれも国の重要文化財に指定され、今回7点目が見つかったことになります。シリーズのうち夏珪を模した山水図は季節ごとに4枚が描かれ、今回見つかった「秋」と、個人が所蔵する「春」と「冬」はありますが、「夏」は所在が分かっていません。
真筆と判断した根拠は
山口県立美術館によりますと、この作品は4人の専門家が調査に関わり、全員が「真筆に間違いない」と判断したということです。
このうちの1人、明治学院大学の山下裕二教授はその理由の1つとして、うちわのような形をした枠の上の部分を描き直していることを挙げています。「雪舟」の署名も舟の字が大きくバランスが悪いとして、「こういうちょっと情けないところが部分的に見えるのも、オリジナルであることを保証する材料だと思う」と指摘しています。
また、江戸時代前期の狩野派の絵師による忠実な模写が残されていることや、昭和8年に行われた入札の目録の写真と表具に至るまで一致していたことも、傍証になるとしています。
山下教授は「絵そのものも、力強い岩の描き方やことさらに黒くしていることなど、雪舟の筆の癖と一致している。これほどまでに研究者が一致して間違いないと判断を下す作品は珍しい」と話しています。
このうちの1人、明治学院大学の山下裕二教授はその理由の1つとして、うちわのような形をした枠の上の部分を描き直していることを挙げています。「雪舟」の署名も舟の字が大きくバランスが悪いとして、「こういうちょっと情けないところが部分的に見えるのも、オリジナルであることを保証する材料だと思う」と指摘しています。
また、江戸時代前期の狩野派の絵師による忠実な模写が残されていることや、昭和8年に行われた入札の目録の写真と表具に至るまで一致していたことも、傍証になるとしています。
山下教授は「絵そのものも、力強い岩の描き方やことさらに黒くしていることなど、雪舟の筆の癖と一致している。これほどまでに研究者が一致して間違いないと判断を下す作品は珍しい」と話しています。
専門家「世紀の発見」
19日の記者会見で、国内外の水墨画の歴史に詳しい学習院大学の島尾新教授は「雪舟の真筆はなかなか出てこないうえ、みずみずしく鮮やかな色には本当に驚き、感動しました。『世紀の発見』と言ってもいいのではないか」と話していました。
また、40年近く雪舟を研究している明治学院大学の山下裕二教授は「オリジナルの中国の画風をそっくりまねた物ではなく、雪舟風になっている。中国の画家のスタイルを取り込んですべて自分のものにしたという雪舟の主張が感じられる」などと作品の特徴について説明しました。
一方、作品を来月から公開する山口県立美術館の荏開津通彦学芸員は「確実に雪舟とわかる作品が新しく出てくることは100年に1回ぐらいのことで、普通にはないことなのでびっくりした。できるだけ多くのお客さんに見ていただきたいので工夫を凝らして展示したい」と意気込んでいました。
また、40年近く雪舟を研究している明治学院大学の山下裕二教授は「オリジナルの中国の画風をそっくりまねた物ではなく、雪舟風になっている。中国の画家のスタイルを取り込んですべて自分のものにしたという雪舟の主張が感じられる」などと作品の特徴について説明しました。
一方、作品を来月から公開する山口県立美術館の荏開津通彦学芸員は「確実に雪舟とわかる作品が新しく出てくることは100年に1回ぐらいのことで、普通にはないことなのでびっくりした。できるだけ多くのお客さんに見ていただきたいので工夫を凝らして展示したい」と意気込んでいました。
雪舟とは 人と作品
雪舟はおよそ600年前の室町時代に現在の岡山県総社市で生まれ、子どもの頃に修行した寺には、涙でねずみの絵を描き才能を見いだされたという逸話が残っています。
その後、京都市の相国寺で修行し、35歳のころに当時、繁栄を誇っていた西国随一の守護大名、大内氏の本拠地の山口に移り住みました。そして、50歳を前に中国にわたって絵を学び、帰国後、この経験を生かして、さまざまな太さや濃さの線で輪郭を描き岩などを重ねて空間に奥行きを生み出す独自の水墨画のスタイルを確立し、山口を主な拠点に活躍しました。
「山水長巻」の別名で知られる全長16メートルの絵巻、「四季山水図」や、「天橋立図」「慧可断臂図」(えかだんぴず)など、日本画では最も多い6点が国宝に指定されています。
その後、京都市の相国寺で修行し、35歳のころに当時、繁栄を誇っていた西国随一の守護大名、大内氏の本拠地の山口に移り住みました。そして、50歳を前に中国にわたって絵を学び、帰国後、この経験を生かして、さまざまな太さや濃さの線で輪郭を描き岩などを重ねて空間に奥行きを生み出す独自の水墨画のスタイルを確立し、山口を主な拠点に活躍しました。
「山水長巻」の別名で知られる全長16メートルの絵巻、「四季山水図」や、「天橋立図」「慧可断臂図」(えかだんぴず)など、日本画では最も多い6点が国宝に指定されています。
雪舟の幻の作品 84年ぶりに確認 山口県立美術館
室町時代に独自の水墨画のスタイルを確立した雪舟が描き、昭和8年に行われた入札を最後に所在がわからなくなっていた「幻の作品」を84年ぶりに確認したと山口県立美術館が発表しました。国宝に指定されている「四季山水図」とよく似た作風の山水図で、専門家は「真筆で間違いなく、非常に重要な発見だ」としています。
「倣夏珪山水図」(ほうかけい・さんすいず)と呼ばれるこの作品は、縦横およそ30センチのうちわのような形の枠の中に、中国の南宋の時代の画家、夏珪の作風を基にした山水図が描かれています。
手前にはひときわ濃い色の岩が力強い筆遣いで描かれ、その後ろに枝を伸ばした木々や水辺に浮かぶ小舟などが表現されています。昭和8年に行われた入札の目録に記されたのを最後に所在がわからなくなり、「幻の作品」とされていましたが、この作品を個人のコレクターが所蔵していて、調査の結果、雪舟の真筆と判断したと、雪舟の研究を進めている山口県立美術館が発表しました。
室町時代の画家、雪舟は、独自の水墨画のスタイルを確立したことで知られ、「山水長巻」の別名で知られる「四季山水図」や「天橋立図」など、6つの作品が国宝に指定されています。
今回の作品が描かれた時期はわかっていませんが、「四季山水図」と岩や木の枝などの表現がよく似ているということです。
調査に当たった明治学院大学の山下裕二教授は「雪舟の真筆に間違いないと見た瞬間に確信した。夏珪のスタイルを完全に自分の中に取り込んでオリジナリティーを出している。山水画においてこれほど自分のスタイルを確立した人はほかになく、四季山水図を研究するうえでも非常に重要な発見だ」と話しています。
「倣夏珪山水図」は山口県立美術館に寄託され、来月31日から公開されます。