聖賢に阿らない

BIG4にはトップ10選手でも5回に1回も勝てない

錦織圭選手の活躍で男子テニスのATPツアーも日本の一般の方にも知られるようになり、メディアの報道やスポナビブログコーナー等も含めて記事が増えて私も楽しみに拝読していますが、もう少し冷静に数字から現在のATPツアーの事実をつかんでおくことが大切だと思い、2年程前に数件だけ記事を書いてから休眠状態だったIDより、筆を執ることとしました。

さて本題ですが、タイトルにしたように、BIG4というレジェンドクラス4人が君臨する時代に、彼らに勝利を収めることがいかに困難であるかを改めて数字からつかむことで、錦織選手の立ち位置を知ることと結果を冷静に受け止めることにつなげようとする試みです。

まず、BIG4がレジェンドクラスという意味合いは、ATPのサイトの生涯成績を見たらよくわかると思います。

 1位 ジョコビッチ選手 743勝152敗、勝率.830  3位 ナダル選手 804勝172敗、勝率.824  6位 フェデラー選手 1080勝245敗、勝率.815  9位 マレー選手 606勝173敗、勝率.778

 ※数字は2016年全米終了時。

大前提として、決して短くないATPツアーの歴史上、TOP10に入る勝率の選手が4人も同じ時代にプレーしている事実を理解することが大切になります。 例えば、BIG4時代の前にフェデラー選手に抜かれるまでグランドスラム(GS)を歴代最多の14回制覇して一時代を築いたサンプラス氏の勝率.774(762勝222敗)は同10位です。現時点でBIG4全員がこのレジェンドを超える成績を残していることから考えても、レジェンドクラスの4人という見立てに賛同してもらえることと思います。

さて、このレジェンド達に勝つ確率のことですが、単純に1から彼らの勝率を引けば簡単に求められます。

 対ジョコビッチ選手 .170  対ナダル選手 .176  対フェデラー選手 .185  対マレー選手 .222  対BIG4 .187 ※全員の戦績をトータルした対BIG4勝率

そもそも、BIG4に勝つ確率は5回に1回も満たないのが数字上の事実です。 もちろん、生涯戦績なのでBIG4それぞれ時期を切り出したら勝率に揺らぎはあるかと思いますが、4人全員に対するトータルの勝率として考えると、ジョコビッチ選手とマレー選手が台頭し始めた2008年頃から大きく変わっていないと考えても暴論ではないと仮定します。

次に、TOP10選手における対BIG4勝率を見てみましょう。 ここでは単純化するため、現時点で現役のTOP10経験者でBIG4と合計36試合以上(本当はBIG4一人あたり10試合以上の40試合以上としたかったのですが、錦織選手が40試合に達していないため、9試合以上としました。)、対戦した実績のある数字を見てみます。漏れがあるかもしれませんが、ATPのサイトをざっと調べた限り該当する選手はわずか13人でしたが、以下の表に対戦数を多い順に並べます。

TOP10選手の対BIG4戦績

トータルすると、実際には前出の生涯成績から導き出した対BIG4勝率よりもわずか8厘だけ高い.195で、TOP10選手でも2割に満たないことが分かります。

個別に見てみますと、現役選手でもっとも対BIG4勝率が高いのはデルポトロ選手の.286、続いてツォンガ選手の.273までが2割5分以上、つまり4回に1回以上の勝率となっており、5回に1回以上となる2割越えはワウリンカ選手の.228、錦織選手の.211、ベルディッヒ選手の.207まででした。長年TOP10をキープしたフェレール選手が2割未満の.198というのは意外でしたが、フェデラー選手に一度も勝てず16連敗していることが多く影響しているように見受けられます。錦織選手のライバルと目されるラオニッチ選手も2割にわずか届かず、BIG4以外の数少ない現役グランドスラマーで、錦織選手が2年前のUSオープン決勝で敗れたチリッチ選手に至っては対BIG4勝率がわずか.128と、全体戦績の対BIG4勝率を大幅に下回るほどBIG4を大の苦手としていることが分かります。

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この記事へのコメントコメント一覧

BIG4にはトップ10選手でも5回に1回も勝てない

Peteさん

コメントありがとうございます。

今のATPツアーは知れば知るほど、興味深い要素が沢山あり、恐らく錦織選手がこうした時代にTOPの位置に居なければ、私自身もここまで関心を持つことはなかったと思います。
スポーツは伝説的な時代を共にしていても、興味を持っていなければ気づけないことが往々にしてあります。そして時代を共にしているからこそ、「生」で臨場感を持ってその瞬間に立ち会うことができる楽しみを享受できます。
そんな時代の扉を開いてくれた錦織選手には感謝しかありませんね。

BIG4にはトップ10選手でも5回に1回も勝てない

感情論が先行しがちな中、データに基づく検証によりプロテニストッププレーヤーの立ち位置を分りやすく
解説していただきありがとうございますプロテニス界が現在いかに高いレベルであるか、GS大会でBIG4に3回勝つのは至難の業であること、錦織選手の立ち位置が数字により裏付けされており説得力がありました。

BIG4にはトップ10選手でも5回に1回も勝てない

ヒデキリさん

コメントありがとうございます。
2014年は今、考えてみるとBIG4のうちジョコビッチ選手を除いた3人が問題を抱えていて年間を通して活躍できなかった、ある意味で特異な年であったと振り返ることができると思います。

 フェデラー選手→ランキングを落とし、プレースタイルを変えて復活する途上
 ナダル選手→けがで夏以降はほとんど試合に出られず
 マレー選手→けがの影響で大きく調子を落とす

このまま時代の流れは新世代へ切り替わっていくのか、と期待感のあった2015年でしたが、ナダル選手がけがの影響で復活途上のままけがで離脱する前のトップコンディションまで戻り切らなかったとはいえ、フェデラー選手とマレー選手は見事な復活を遂げ、さらにジョコビッチ選手が突き抜けたこともあり、総じてBIG4の牙城は崩れないまま、今に至っています。

仰られる通り、BIG4のすごさは決して自らの向上をやめないことであり、錦織選手をはじめとした台頭するプレーヤーがいればすぐに対策をしてその地位を脅かす存在を徹底的に叩いてタイトルを守り通す点です。その結果が彼らのTOP10勝率に現れていることが今回調べてみて改めて分かりました。正直なところ、TOP10クラスならもう少し善戦していてもよいのではないかと思っていました。

BIG4にはトップ10選手でも5回に1回も勝てない

データをもとにしたコメントは、説得力があり、興味深く読ませていただきました。
2014年、錦織選手はジョコビッチを初めとするbig4に相次いで勝利しました。その結果、big4の面々がトーナメントで勝つには、逆説的に錦織選手に勝てなければ勝利はないというように捉え始めているような気がします。2014全米以降、ATPツアーファイナルのマレーに勝利して以来、昨年のロジャーズカップQFナダルまで、連敗していました。マレーは、錦織選手のデータを細部に至るまで入手したし、ワウリンカも、2015全豪で徹底的に研究してリベンジしています。2014年全米でジョコビッチのインタビューでの「圭は、GSのFinalという別次元の世界に足を踏み入れた」という発言は、あまりにも有名です。全米でマレー、ワウリンカ、ジョコビッチに3連勝してチャンピオンになるなんて不可能に近いことでしたが、その挑戦する立場に立っているのが錦織選手なんですね。また、デルポトロ、錦織、ジョコビッチに3連勝したワウリンカも素晴らしいということになりますね。

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