みなし残業=ブラック企業?みなし残業は違法かわかりやすく説明します

みなし残業とは

みなし残業とは、会社で働く社員に対して予め残業時間を想定して設定し、基本給を残業代込みで支払うというシステムです。このみなし残業制は給料を払う側からも受け取る側からも双方にメリットが存在するため、現在では多くの企業が採用しているシステムです。

しかしその反面、運用する際には気を付けないと見落として労働基準法に抵触してしまいかねない注意点も存在します。今回は最近よく耳にするこの制度について、わかりやすく説明していきたいと思います。

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1)みなし残業とは

みなし残業とは、簡単に説明すると基本給の中に残業代を予め含めて支払うシステム。このように予め残業代込みで計算された給料が支払われますが、残業代に相当する時間分、必ず残業しないといけないわけではありません。この点がみなし残業制を非常に画期的なシステムに昇華させている大きなポイントと言えます。

社員は仕事を定時までに終えることが出来れば、定時退社しても問題ありません。それでも、あらかじめ設定されたみなし残業代を含んだ給料が支給されます。

2)みなし残業制が増えている背景は

労働基準法によると賃金とは「労働の対価として労働者に支払うもの」といった表現になっています。そして現在の労働基準法において「労働の対価」は「労働時間の対価」と置き換えて考えても問題無いくらいに労働時間を軸に定められている傾向にあります。

この理由は、一昔前まで日本には圧倒的にブルーカラーの労働者が多かったという点が考えられます。しかし機械技術の進歩やIT産業の普及とともに、現在ではホワイトカラーの職種の割合が増加してきています。それにより従来の労働基準法にある労働時間で考える賃金設定に徐々に綻びが生じてきているのです。

ホワイトカラーの職種では労働時間の長短よりも純粋な成果に応じて賃金が決定されるシステムのほうが理に叶っています。そういった経緯から現在注目を集めているのがみなし残業制というわけです。

3)みなし残業制、メリットは

みなし残業制を採用している会社であれば社員は労働時間内に効率的に成果を上げ、定時に業務を終える事が出来れば予め設定されている残業代の分は有り難い余禄となります。これが大きなモチベーションの増加に繋がるのは容易に理解出来る点です。

また企業にとっては、予め残業代込みで賃金が計算されるため給与計算の手間も大いに省けるというメリットもあります。

4)みなし残業制を運用する際に注意すべきポイント

1. みなし残業時間を超えた分の残業代は支給

みなし残業制を運用する際に、注意しないと労働基準法違反に抵触してしまう可能性がある点があります。例えば「月に20時間のみなし残業」の場合は、もし月の残業時間が20時間を超えた場合にはその超えた時間に応じた残業代は別途支払う必要があります

よく「みなし残業制」=「残業代を一定額に固定してそれ以上は支払わない制度」=「ブラック企業」という理解をしている方がいますが、従業員が決まった時間分以上働いた場合、企業はその分の残業代を追加で支払う義務があります。

上記で残業代計算の手間が省けるメリットがあると解説しましたが、実はみなし残業制を採用したとしても経理は完全に残業時間を計算する必要が無くなるというわけではありません。

2. 労働基準法の最低賃金を下回らない

一番注意したいのが、みなし残業代込みの賃金が労働基準法で指定されている最低賃金を下回らないようにする事です。

例えば東京都の最低賃金は888円です(2015年7月現在)。みなし残業制を採用し、30時間のみなし残業と設定したとします。労働基準法に定められている一ヶ月の所定労働日数は23日、一日の所定労働時間は8時間です。

1. 正味の基本給は 888円 × 8時間 × 23日 = 163,392円 となります。
2. みなし残業代は 888円 × 1.25 × 30時間 = 33,300円
3. 1.と2.の合計は 196,692円 となります。これが最低賃金の額です。

つまり東京都の会社で30時間のみなし残業制を導入した場合は賃金が196,692円を下回ると労働基準法違反に抵触してしまう可能性が非常に高いというわけです。この点は後々のトラブルとなる可能性が高く、その場合は会社にとっては致命的なダメージとなり得る要素です。経営者は特にこの点に注意してみなし残業制の導入を検討されてみてはいかがでしょうか。

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目次

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  2. 職業規則や給与規定は、給与計算のルール
  3. 入社手続きに必要なものまとめ
  4. 給与明細を見れば給与計算がわかる
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